先日、偶然にもダイヤスカーレットなる非常に紛らわしい、しかしダイワスカーレットよりずっと前に宮内庁御料牧場で生まれた馬を発見してしまった。
さらに今年の2歳馬には、キンシャチノキセキとセトノダイヤモンドという、やはり非常に紛らわしい名前の馬がデビューすることも見つけてしまった。
かつて、マックスビューティ産駒の超良血馬で、セリ市で1億100万円という高額落札で知られたチョウカイライジンという馬は、チョウカイテイオーという馬名で登録しようとして却下されたことがある。これは「馬なり1ハロン劇場」にも記されている有名な話だ。
そりゃトウカイテイオーと紛らわしいからダメなのは明白だけれど、じゃあセトノダイヤモンドがアリだというのは不思議だ。
トウカイテイオーが88年生まれ、チョウカイライジンが93年生まれ。テイオーのあの有馬記念が93年で、ライジンのでデビューできる年は95年(実際は遅れて96年デビュー)。サトノの引退レースが18年有馬記念、セトノの生まれたのが19年。先行馬の引退後に生まれてるからOK? まさか……。
こういうギリギリネーミング、どういう事例があるか、見つかる範囲で探してみた。
無制限に探すのは大変すぎるので、とりあえずウマ娘になってるのを中心に。
馬名登録実施基準&同名馬
さて、馬名の審査がどういう基準で行われてるかは、ジャパンスタッドブックインターナショナルが公表している。
ざっくりいえば、現役馬や繁殖馬と同じ名前や紛らわしい名前はダメ。そしてGIを勝つような強い馬は特にダメ、くらい。
そりゃ血統表で同じ名前の別の馬がうじゃうじゃ現れてしまったら、管理上困ってしまう。逆に、引退していて繁殖に大きく残るわけでもない馬まで一切重複禁止にしてしまうと、新しい馬の名前をつけるのが難しくなっていく。
基準をよく見ると、1991年以前の2歳GI(朝日杯三歳S・阪神三歳S)の勝馬は再使用禁止ではなかったりする。他の大レースを勝っていないとか繁殖で顕著な成績を残していないとか、他の条件もクリアしていれば、再使用できる。
で、実際ゴールドシチーは2代目がいる。
ウマ娘にもなったほうのゴールドシチーは、86年阪神三歳Sを勝ち、皐月賞と菊花賞を2着。引退後は種牡馬入りもせず。だからギリギリで審査基準から外れる。
二代目は、あいにく中央未勝利で岩手競馬に流れて2勝して終わった。
有名な再使用馬名といえば、ヒシマサル。3代目まである。
初代は55年生まれ、安田記念や札幌記念、毎日王冠、セントライト記念、日経賞など次々と勝った。一方、妙な不運が多くて、レース前に硫酸かけられたとか、種牡馬3年目で有刺鉄線に絡まったことで大怪我して死んでしまった。
それでも僅かな産駒から、また安田記念を勝ったヒシマサヒデなどを出した。
で、二代目のヒシマサル、馬主さんが「この名前また使いたい」といって、生まれたアメリカでHishi Masaruと名付けてから輸入するという裏技を使った。これもG3を3つ勝ってジャパンカップでも5着。種牡馬入りもした。
三代目ヒシマサルは2014年生まれで、これまた審査基準だと絶妙にすり抜けている(初代が勝った頃の安田記念はGI格の扱いではないなど)らしく、登録できた。
他には、三冠馬ミスターシービーは二代目。初代は戦前の馬で、特に血統表などにも残らなかったのか、NetkeibaやJBISではヒットしない。
それからウオッカも二代目で、93年生まれの馬がいる。先代が活躍してないし時期も離れてるから特に問題ないけど、ウォッカじゃなくてウオッカなのまで一致。しかも姪に面白いのもいて……。
紛らわしく……ない!
ではここからは、有名馬との類似馬名で、審査に通ったやつを挙げていこう。
全く同じなら却下というのはわかるけど、「紛らわしい」というのは曖昧さのある基準。チョウカイテイオーやモルフェーヴルは却下されたけど、通っちゃうケースも多々ある。
ご存知スペシャルウィーク。天皇賞春秋連覇、ジャパンカップ、ダービーを勝った日本の総大将と、紛らわしい名前は許されない。
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スペシャルウィーン | 競走馬データ - netkeiba.com
2004年生まれ。WeekとWienは紛らわしく……ない!
叔母にウオッカがいる。ダービー馬の方じゃなくてその前の。
グラスワンダーは95年生まれの、皆さんご存知グランプリ三連覇、種牡馬としても5頭ものGI級勝馬を輩出した名馬。紛らわしい馬名は許されない。
- グラスハンター | 競走馬データ - netkeiba.com
2001年生まれ。WonderとHunterは紛らわしく……ない! - グラスサンダー | 競走馬データ - netkeiba.com
2003年生まれ。Hunter現役中にデビューしてるけど、WonderとHunterとThunderは紛らわしく……ない! - グラスダンサー | 競走馬データ - netkeiba.com
2006年生まれ。Thunder現役中にデビューしてるけど、WonderともThunderとも紛らわしく……ない! 89年生まれの同名馬もあり。 - グラスサンデー | 競走馬データ - netkeiba.com
これは93年生まれなので、別になんの問題もない。ついでにサンデーサイレンス産駒でもない……。 - グラスワン | 競走馬データ - netkeiba.com
これも85年生まれ。福島で一勝してるけど、そのときに「勝ったのはグラスワンだー!」といった実況はされたのかもしれない。
ライスシャワーはみんなが泣いた悲劇の名馬。血統表に名が残ることはありえないとはいえ、天皇賞馬と紛らわしい名前は許されない。
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タイムシャワー | 競走馬データ - netkeiba.com
紛らわしいというほどでもないけど、いわゆる「踏める」馬名。中央じゃ勝てなくて、地方競馬で5勝。一年以上出走がないみたいだけど、現役なのかどうか。 -
ライトシャワー | 競走馬データ - netkeiba.com
一字違い。地方で3連勝して、昨夏のひまわり賞でヨカヨカの3着に入った。流石に中央は厳しいにしても、地方ならかなり行けそうにも見えるけど、なぜかその後出走がない。どうなったのかな……。
サンデーサイレンス初年度産駒の初GI馬にして、最も早く無念の引退、種牡馬として大活躍したフジキセキ。血統表にも無数に名前があるこの名馬と紛らわしい名前は許されない。
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フジノキセキ | 競走馬データ - netkeiba.com
89年生まれで、92年生まれのフジキセキとは特に関係なし。フジノもよくある冠号。単なる偶然。母がブリイーブミイーっていう謎の名前してるほうが気になる。Believe Meを異様なカナ転記したんだろうか……?
94年に生まれ、外国産馬として、そして短距離馬として初めてJRA賞年度代表馬に選ばれたタイキシャトル。種牡馬としてもGI馬を出し、母の父としても活躍しているこの名馬と紛らわしい名前は許されない。
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タイシャトル | 競走馬データ - netkeiba.com
これはまあ、86年生まれなので偶然。タイは名鯛興業の伝統ある冠号。 -
ナイキシャトル | 競走馬データ - netkeiba.com
父ミスターシービー・母の父グランディというレトロな血統だから古い馬かと思ったら、97年生まれ。タイキシャトルの大活躍を見てから名付けられたっぽい。しかも佐賀競馬ではかなりの強豪で、パチモンネームでは屈指の活躍。
怪我に泣き、遅れに遅れて春の天皇賞に桜を咲かせたサクラローレル。ウマ娘化はまだかと期待されるこの名馬と紛らわしい名前は許されない。
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クラローレル | 競走馬データ - netkeiba.com
サクラローレルが天皇賞を勝って大活躍したのが96年、クラローレルは95年生まれで97年デビュー。なんでOK出たのかわからない……。クラは冠号だから、馬主さんはわかっててやってると思うけれど。
北海道の地方競馬所属だったけど、東京競馬場で500万条件戦を勝っちゃっている。134戦も走った無事之名馬でもある。
本人も実は二代目だった、史上3頭目の三冠馬ミスターシービー。もちろん三冠馬と紛らわしい名前は許されない。
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スターシービー | 競走馬データ - netkeiba.com
どうも馬名規則を読む限り、父母と紛らわしい名前は特にダメとされてるように見えるんだけど、これも通っちゃう。そういえば母の父ノーザンアンサーも際どいネーミング。血統表ではNorthern Dancerをカナ表記しないからいいけど。
川崎競馬でなかなかの活躍で、重賞まで勝っている。繁殖に上がったけど、早くに死んでしまって1頭しか産駒がなかった。
史上最大の入場者数だったダービーを制し、中野コールを巻き起こしたアイネスフウジン。87年生まれ。もちろんダービー馬と紛らわしい名前は許されない。
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アグネスフウジン | 競走馬データ - netkeiba.com
08年生まれ。血統的にはお金かかってそうな感じだけど、中央競馬で2桁着順しかないというもの悲しい成績に。
大井から来た英雄イナリワン。84年生まれ。笠松のオグリキャップ、そしてスーパークリークとともに平成三強の一角と呼ばれ、そんなライバルたちと争ってなおグランプリ連覇と天皇賞を取った名馬と紛らわしい名前は許されない。
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ヒラリワン | 競走馬データ - netkeiba.com
なんともかわいらしいパチモンネーム。実名を避けた競馬ゲームだったらこの名前にしたいな。91年生まれのアングロアラブで、もう中央競馬からアラブ競走が消えていく頃の馬だった。
97年生まれの二冠馬エアシャカール。ダービーも7cm差の2着と、三冠に最も近づいて届かなかった名馬と紛らわしい名前は許されない。たとえ馬主が同じであろうとも。
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エアシャキーラ | 競走馬データ - netkeiba.com
シャカールがクラシックを走っていた2000年生まれ。由来はシャキーラ。この頃のエアは海外シンガーネタ。 -
エアシャトゥーシュ | 競走馬データ - netkeiba.com
シャカールが若くして死んでしまった記憶も新しい2005年生まれ。由来はチベットアンテロープの毛で作った織物。現在はワシントン条約で保護されてる。 -
エアシャマール | 競走馬データ - netkeiba.com
シャカールも記憶の中の名馬になった2014年生まれ。由来はペルシャ湾の砂嵐。
ウマ娘がああなる前から変態と呼ばれていた、ダートで活躍して、芝未勝利でマイルチャンピオンシップをいきなりレコード勝ち、クロフネが出たがってたマル外出走枠を奪い取って2000m未勝利なのに天皇賞秋を勝利、香港行っても勝ってきて、地方の深いダートも平気の平左、万能すぎて意味がわからないアグネスデジタルとも、紛らわしい名前は許されない。
- タフネスデジタル | 競走馬データ - netkeiba.com
アグネスデジタル産駒。踏める馬名。母がタフネススターという名前なので、父と母の合成馬名ではあるけど。
まあアグネスとタフネスを見間違えるとは思わないけど、踏めるだけに発音すると意外と似た響き。