6日の新馬戦に、こんな馬が出ていた。
2019年5月1日生まれから名付けられたみたいだけど、たしかに令和に改元された初日ではある。それ元旦とはいわんような気もするが。
まあそれはいいとして、やっぱり新馬戦といえば血統表を見たい。
もちろん「父がディープインパクトだ、こいつが強い」とか確認したいわけじゃなくて、「4代母の父までカタカナか、こりゃ古い日本血統の末裔やなあ」というような愛国心に満ち溢れたとこを見るわけですよ。日本の馬産の歴史が刻まれてるわけですからね。続いていること、記録されていること、捏造も改ざんもされていないこと、そして記録を失くしていたらサラ系と扱われる厳しさ、これこそ歴史というものです。
まあ木曽馬とか野間馬の末裔がサラブレッドやってるわけじゃないから、遡ると小岩井農場の基礎輸入牝馬に行き着くのが多い。
小岩井輸入牝馬の末裔も、フロリースカップやアストニシメントだったら今でも結構見かけるもので、レイワガンタンと同じ中京6レース新馬戦にはアストニシメントの末裔アクアビート、フロリースカップの末裔テイエムヒロインがいる。
しかしレイワガンタンを遡ると、フエアペギーにたどり着いた。
まあニシケンモノノフとかも出てる健在の牝系だけれど、わりと珍しいんじゃなかろうか。
フエアペギー Fair Peggyは、1902年生まれの栗毛の英国馬。
父はSt. Grisという馬だった。あまりよくわからない種牡馬だけれど、大種牡馬Galopinの子でSt. Simonではない方。セントサイモンの悲劇に巻き込まれて消えていった血なんだろうな。
netkeiba.comの掲示板に、フエアペギーの産駒とその子孫が書き込まれていたけれど、ここまで古いとnetkeiba.comにもJBISにも登録されてないみたい。今となっては新たに生まれる競走馬の血統表に現れることもない馬なんだろうな。
最初の子だった第二フエアペギー(競走はフエアペギーという名前で走っちゃって、繁殖に上がって第二がついた)と、3番子の第三フエアペギーは、末裔が現在も残っている。
第二フエアペギーの末裔はもう滅亡寸前みたいで、最新の活躍馬はTCK女王盃を勝ったトミケンクインかなあ。というか唯一の活躍馬っぽい。
現役は、グレイスムーンだけかと思う。目視で探してるから見落としはあるかもだけど。
フエアペギーと、戦前の大種牡馬インタグリオ―の間に1913年にできた第三フエアペギーは、これは競走に出てないのかな。
第三フエアペギーの子では、第十一チヤペルブラムプトンという子が種牡馬になってて、それが1933年のリーディング9位に入ってるそう。
ダイヤモンドウエツデイングとの間に、フワーンという気の抜けた競走名の子ができて、競走には出ず繁殖に上がって種家という血統名になった。
種家は、現在も子孫が残る子を出していた。
トウルヌソルとの子・朝桜の末裔に、門別のエトワール賞を勝ったクラフィンライデンがいて今も母として子を出している。これ以外の子孫はもう途絶えたらしい。
同じくトウルヌソルとの子・月家の末には、64年京都記念・65年日経新春杯を勝ったオーヒメ、初代ヒシマサル、南関東の英雄ステートジャガー、皐月賞3着のネーハイジェット、フェブラリーハンデ2着のワンダーテイオー、中日新聞杯3着のヤシマプリンス、オープン特別勝ちのフェイマスケイがいた。
ニシケンモノノフも月家の末で、姉のミスコマチの子が現役で走っている。妹のシリカの子もこれから出てくる。
フエアペギーの末裔ではここが最も栄えてるかな。
種家とこれまたトウルヌソルとの子・岩梅は、イワウメの名で中央で1勝。
牝馬の子では、プリメロとの子・年梅は子は残せなかったらしい。月友との子・マリヤからの子孫ももう絶えてるみたい。
岩梅と月友の子・峰梅は。書くこと思いつかないな。
グレーロードという今となっては全然聞かない種牡馬(戦後に始めて農林省が輸入した種牡馬らしい)との間にグレーモードという子があって、ある程度子孫を広げたけど今はもう断絶。
かつてはレースの名前にも冠された名馬カブトヤマと峰梅の間に、シウンザンという子ができて中央で4勝。
ユアハイネスとシウンザンの間にナラシノクインという子がいて、この末裔はアイファーラブラブ・アイファーヒロイン姉妹が繁殖現役で子を出している。
シマタカという地味だけどダイニコトブキや菊花賞馬コマヒカリを出した種牡馬とシウンザンの間に、イヨフジという子ができた。平地未勝利、障害5勝。
牝馬の子は複数いたけど、あまり広がらなかった。
60年代後半から活躍した種牡馬ハロウェーとイヨフジの間に、ヤクモヒサコという子ができて、中央4勝。
これも牝馬の子が複数いたけどいずれも広がらず。
ラッキールーラなどを出したステューペンダスとヤクモヒサコの間に、ヤクモペンダスができる。未勝利馬みたい。
繁殖に上がれたのは、ロイヤルスキーとの初子・ダイナフォーカスだけ。後の子はそもそもあんまり良い種牡馬つけてもらってない感じ。
ダイナフォーカスは、名前からして社台に買われたみたい。玉の輿か。4勝した。
そしてスプレンディドモーメント(あまり当たった種牡馬ではないんだけど、チェリーコウマンを出した)との間に出したフォーカルプレーンが、函館3歳Sに3着、エルフィンSに2着。
フォーカルプレーンが、エンドスウィープとの間に京成杯を勝ったフォーカルポイントを出した。
それから、ステイゴールドとの間からは、札幌日経オープンを勝ったビエンナーレが出る。
そのビエンナーレの子がようやく、今回のレイワガンタンとなる。
小岩井基礎牝馬の中でも、強豪馬が少なめのフェアペギーの末裔の中で、最も活躍している月家の系統とは60年くらい前に分かれた岩梅の子孫で、その時は天皇賞馬トヨウメを出したものの、その後は牝系としては活躍馬をさして出せず、しかし何とか滅びずに母系を存続させて重賞馬・オープン馬を21世紀になって輩出できた、と。
いくら歴史ある牝系といっても滅ぶものは滅ぶのが競馬の世界だけれど、120年日本で生き延びてきた馬の名前がレイワガンタン。味わい深い。