堺風の頭部

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競馬「華麗なる一族」について調べ直してみる

 先週になったけれど、10月21日の競馬はご覧になっただろうか。
 名牝グランアレグリアが最終戦だと宣言して臨むマイルチャンピオンシップ……の20分ほど前にあった福島民友カップ

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 このレースの出走馬を眺めてたら、血統が激アツなのが一頭おるんです。

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 アイオライト。3代母がイットー。なんということだ。華麗なる一族の末裔じゃないか。

 これは馬券を買うしかない、と久しぶりにPATに入って、アイオライト軸に流したら見事2着に入ってくれた。馬券は外したけれども……。

 

 華麗なる一族は、90年代を最後に今や没落し果てた一族だという噂は聞いていたんだけど、だったらアイオライトには一旗揚げて、GIは難しくても重賞のひとつは取って名族ここにありと示してほしくもある。

 で、私が20年競馬見てない間に華麗なる一族がどれだけ衰退しているのか、改めて確認してみた。

 

華麗なる一族とは

 最近の競走馬の名族といったら、ローザネイを牝祖とし、重賞馬を続出させる(のにGIがなかなか勝てない)薔薇一族とか、スカーレットインクを祖とする一族とか、そのへんが知られるところ。

 このへんを一般名詞というか一般形容詞として『華麗なる一族』と呼んでたりもするんだけど、しかし20年以上前に競馬ファンだった私には「華麗なる一族」といったらハギノトップレディダイイチルビーの、荻伏牧場のマイリー牝系のことだ。
 いや94年から競馬観てた私にとっては、観始めるより前に最盛期を迎えてた一族ではあるんだけれど。生で見たのはダイイチシガーの惜敗だった。

 

牝祖マイリー

 華麗なる一族の牝祖は、1953年に英国で生まれたマイリー(Mairie)という馬。
 英国で3戦未勝利だったけれど、近親には英仏の重賞馬が多数いるなかなかの良家の出であったらしい。

 父はSupreme CourtというキングジョージVI&クイーンエリザベスステークスの勝ち馬。父系をたどればHurry OnからMatchemを経てGodolphin Arabianに至る。今となってはマイナーだけれど、1950年代だったらまだまだ活躍中だった。
 ただ、ハリーオン系というとステイヤー種牡馬のはずで、後に激烈な気性で短距離路線を突き抜けていく華麗なる一族のスピードとはちょっと印象が違う。
 とはいえ、なぜか日本で活躍したハリーオン系の競走馬はスプリンターが多い(カネツセーキとか)けれど。なんでそうなるんだろう……?

 ともあれそれを、荻伏牧場創設者の斎藤卯助氏が購入。名門牧場の根幹牝馬の一頭となった。

 

マイリーの子孫

 マイリーは子出しが悪くて、全部で4頭しか産めなかった。
 後に「華麗なる一族」と呼ばれて栄えるのは初仔のキューピットの子孫。これは後述。

 キューピットが1957年に生まれて、次が1965年にやっと生まれたアイテーホープ。父は日本の大種牡馬シンザンの父ヒンドスタン……なんだけど、あいにく3勝止まり。

 

 次に1968年にテツノアークが生まれる。父はアークティックヴェイルというあまり成功しなかった種牡馬
 しかしテツノアークの子孫はその後もしぶとく伸びている。
 子のアキノマイリーから生まれた孫のアキノサンシーがオープン入りして大阪城ステークスを勝った。
 テツノアーク→アキノマイリー→シルバーカップ→マックスゲニーと経て、1996年に生まれたスピーディドゥという馬が、中央3勝から北関東にいって重賞をふたつ取った。ダイタクヘリオスの産駒ダイタクヤマトの次に活躍した馬。
 テツノアーク→ツジノダイアナ→トウカイステラときて、2009年のフラワーカップ勝ち馬ヴィーヴァヴォドカが出て、テツノアークの子孫じゃ唯一の中央重賞馬。
 トウカイステラがヴィーヴァヴォドカの他にも繁殖に上がる子を複数出していて、トウカイファインとその子クルイザキアドマイヤオンリーとその子のオピニオンが繁殖に上がっている。

 オピニオンの子オンリーオピニオンが今年新馬勝ち・札幌2歳S4着で、もう少し活躍の目を期待したい。牝馬だからさらに繋いでいける。
 アドマイヤオンリーの子スマイルアップも、先日中央の未勝利を勝ち上がった。4戦かかってるとはいえ年内に上がれたし、これも牝馬

 

 マイリー最後の子は1972年のマイポーラで、父はフジオンワードエリザベス女王杯リードスワローを出した種牡馬)。

 こちらの子孫も、華麗なる一族の活躍を受けてか、活躍馬は出ないながらもほそぼそ続いて、マイポーラのひ孫ロイヤルシーホークが2000年に生まれるまで続いたみたい。川崎競馬で2勝した。
 一番活躍したのは、ロイヤルシーホークの兄のライスポーラあたりかな。金沢競馬で8勝。

 

キューピット

 で、マイリー系の主軸たるキューピットに戻る。

 マイリーは英国でNearulaという種牡馬と交配してから輸入されていて、日本に到着するなり検疫所で出産しちゃった子がキューピット。おかげでハマっ子の競走馬という珍しいものになっちゃった。
 父Nearulaは英2000ギニーなどマイルから中距離のレースを7勝。その父はNasrullahなんだけれど、ナスルーラの子にはGrey SovereignNever Say DiePrincely GiftBold RulerRed GodNever Bendなど凄まじい大物種牡馬が並ぶ中では、Nearulaはあんまり当たらなかった。それでも愛2000ギニー馬Kythnosを出してはいる。

 キューピットはマイルの阪神牝馬特別などを勝ったスピード馬だった。
 9勝してかなりの強豪ではあったけど、繁殖でライバルになるスターロッチと同い年。オークス有馬記念を勝つスターロッチには競走成績では流石に負けるか。

 

 引退後は荻伏牧場に戻って繁殖に上がったものの、マイリーに似てしまったか子出しが悪くて、育ったのがヤマピットミスマルミチの二頭だけ。

 

 キューピットが繁殖に上がって、最初に産んだ子は夭折、次がヤマピット。父はソロナウェーで、60年代日本でダービー馬・オークス馬を複数出した名種牡馬だった。

 これが強豪馬で、京都1100m 1分5秒5という不滅のレコード(もう1100mやってないから更新されようがないんだけど)で逃げ切って新馬勝ち。そしてぶっちぎりのレコードを乱発しながら4連勝。
 しかし阪神三歳ステークスに行ったら、内枠スタートでハナに立てず、初の敗戦で3着。それでも最優秀三歳牝馬に。

 四歳になっても、桜花賞がストで延期になって仕上げが狂ったのか大敗。なんかちょっとついてない。
 オークスは最初から最後まで先頭で走り切る勝利で、やっと最強牝馬に栄冠が与えられた。
 その後は、牡馬と混じって苦戦しつつも、大阪杯鳴尾記念など重賞を取った。

 これだけの名牝だから繁殖でも期待されたけど、一頭だけ、ボージェストという牡馬を出して、すぐに腸捻転で死んでしまった。
 ボージェストは、名古屋四歳特別を勝ってクラシックに挑戦するも大敗、その後は条件馬止まり。

 

ミスマルミチ

 キューピットは、ヤマピットの次にミスマルミチという牝馬を産んでいた。
 8勝してるから弱い馬ではないんだけど、重賞だと手が届かないくらいのミスマルミチは、ヤマピットの急死を受けて引退、繁殖に上げられた。

 ミスマルミチの父はネヴァービート。競走馬としてはいまいちだけど良血だからと日本に来た、というわりとよくあるパターンだけど、これが当たって70年代に3回もリーディングサイアーになるほど。
 ちなみに荻伏牧場の斎藤卯助氏は、ネヴァービートを輸入して成功させた人物でもある。

 ただ、ネヴァービートNearco3x3Blandfordの5x4x5というきついインブリードを持ってるのに、さらにそれをキューピットと配合すると、Nasrullah3x3Nearcoの(4x4)x4とますますどぎついインブリードになる。
 けっこう怖い配合にも思えるけど、この強いクロスが良く出たのか、ミスマルミチは強豪馬を次々に産むビッグマザーになった。

 と、中央重賞馬3頭、種牡馬入り3頭。
 祖母・母が悩んだ子出しの悪さも克服して、1971~81年に11頭産んだ。1975年は双子を産んでしまったみたいで、片方のエトアールマーチスは3戦2勝・2着1回。

 しかし子は牡馬が多くて、牝系を継ぐのは初仔のイットーと、その次のカルカッタ、それから晩年に西山牧場で産んだニシノマルミチだけ。

 

 カルカッタとニシノマルミチは、西山牧場に行って繁殖に上がったらしい。

 でまあそうなると、西山牧場に自家繋養されてる種牡馬との配合が多くなり、そして西山牧場種牡馬は(結果論だけど)失敗したのが多かった。
 そして90年代後半には西山牧場のリストラがあって、繁殖馬が処分されたり、競走を走っている牝馬も多くが繁殖に戻れなくなり、それで大幅に先細ってしまった。

 ニシノマルミチの子孫は、2009年生まれのマルサンザクラが高知・福山で10勝とある程度の活躍を見せつつも、最後の馬になったみたい。

 カルカッタの子孫は、カルカッタ→プレストンシロー→アイラブユー(父マルゼンスキー)ときて、荒尾競馬で20勝したサチノブレイブが活躍した。
 幸いにもサチノブレイブがアイラブユーの長子だったのもあり、妹の評価も上がったらしく、大井で5勝したモエレプロポーズが繁殖入り。その子のグランエスポワールも大井で3勝ながら特別競走を勝っている。
 モエレプロポーズの子は現役で走っていて、まだ生まれている。2020年はホッコータルマエの子が生まれたみたいで、この兄弟がカルカッタの最後の子孫になる。

 

イットー

 で、華麗なる一族と呼ばれるようになるイットー

 父ヴェンチア(Venture)は、1969年にフランスから輸入されたばかりの種牡馬。フランスでも重賞馬を出してるけどG1級までは出てなかったところ、日本ではイットー、桜花賞タカエノカオリ、ダービー馬クライムカイザーなど多くの活躍馬を出した。

 

 イットーは、おばのヤマピット同様の快速逃げ切りで3歳シーズンを走り、阪神3歳ステークス(まだ牡牝混合)でキタノカチドキに及ばず2着という結果になるも、最優秀三歳牝馬になった。

 4歳になってクラシック挑戦……と思ったら、紅梅賞6馬身差ぶっちぎりの後に骨膜炎と怪我で休養。桜花賞オークスも棒に振った。
 そして秋に戻ってきて、函館のオープンをレコード勝ち。そして京都牝馬特別からビクトリアカップエリザベス女王杯の前身)へ……と思ったら、京都牝特のレース中にキシュウローレルの故障転倒に巻き込まれて負傷、大敗。

 それでも5歳になって、キタノカチドキタニノチカラといった強豪と戦って2着2回、それから持ち直して、ようやくスワンステークスを勝って重賞制覇。その後も高松宮杯サファイヤSを制覇した。

 

 繁殖に上がってからは子出しの悪さもなく、初仔からいきなりハギノトップレディを産んだ。

 牡馬の子たちをまとめて紹介すると、2番仔ニッポーハヤテ(父サンシー)も7勝して安田記念3着。

 3番仔のハギノカムイオーは、父テスコボーイという良血もあって、当時最高の落札価格1億8500万を記録。
 スプリングS神戸新聞杯京都新聞杯と勝っておきながら皐月賞菊花賞も大敗する。まあゲイルスポートのせいとか、菊は長すぎたとか色々あるだろうけど。
 それでも5歳になって宝塚記念をレコード勝ち。高松宮杯も親子&姉弟制覇。もちろん買値以上の賞金を稼ぎ出した。
 種牡馬としては地方重賞馬や障害オープン馬を出せる程度に終わってしまったけれど、34歳まで長生きした。

 その後の仔はそこまで活躍しなかったけど、ワッカオー・サクライットー・チュニカオーと種牡馬入りしている。種牡馬としても当たったとはいえないけれど、サクライットーは地方で活躍した馬くらいは出している。

 

アイランドオリーブの子孫

 イットーの子の牝馬では、7番仔のアイランドオリーブ(父サンプリンス)は、本人は未出走で繁殖に上がった。この子孫も現役。

 

 アイランドオリーブの初仔オギトゥインクルの初仔オギブルービーナスの初仔ブルーショットガン(父サクラバクシンオー)が、阪急杯を勝って松永幹夫に現役最後の重賞を取らせた。
 おかげで、妹のアフィニティが繁殖入りし、地方で多くの勝ち星を上げる仔を出している。現役馬もいるし、2020年はゼンノロブロイの仔を産んでいる。
 ブルーショットガンの全弟スリーバリアント佐賀競馬で14勝。

 

 オギトゥインクル→ヤエチグサ→ヤエツバキときて、アイアンハートが繁殖に上がって今後産駒が出てくる予定。初年度はフリオーソをつけられてる。

 オギトゥインクル→イイデトゥインクルミラクルフラワー(父プリサイスエンド)が16年みちのく大賞典と16・17年のフェアリーカップを勝った。繁殖入りしてるらしいが、子は再来年かな。

 イイデトゥインクル→エフケーアスコット→タケノスイセイ(父サムライハート)という線も現役で繁殖をやってるみたい。初年度はコパノリチャードをつけて不受胎。

 

カムイイットーの子孫

 カムイイットーはイットーの9番仔で、6戦2勝。シンザン記念を3着している。シャダイカグラの同期で、桜花賞前に脚部不安で引退してしまったそう。

 祖先の子出しの悪さはすっかり解消して、カムイイットーはもう素晴らしい子出しで、初年度から13頭続けて生んで、一年空いてさらに4年連続で産んだ。

 

 カムイイットー→タケイチオージョ→レッドグラス(父ブライアンズタイム)のラインでは、アギト(父トゥザグローリー)というのが南関東で6勝、まだ現役っぽい。
 姉のレッドデイム(父ディープスカイ)はどうなのかな、これも笠松で6勝してるけど、いい歳なのに引退じゃなくて金沢で走ってるみたいで、繁殖には上がらないのかな?
 この兄弟は、地方で安定して勝ち上がれるくらいの成績は残している。

 

 カムイイットー→ドリームクロスときて、エイムアットビップ(父アグネスデジタル)がファンタジーS2着・阪神JF3着。
 これも繁殖牝馬として現役。ディープインパクトとはいかないけど、ブラックタイドジャスタウェイスペシャルウィークディープブリランテあたりをつけられてて、それなりに見込みありとされてそう。まあ……結果が出てるかというと厳しいけど。

 エイムアットビップの仔ドリームノートチェリースピリッツクッカが繁殖入りしていて、母共々現役の繁殖馬らしいので、今後に期待。

 

 カムイイットー→ドリームクロス→プラチナアリュールときて、ゲンジモノガタリという仔がいるんだけど、これはかなりのヤバ配合
 プラチナアリュールって名前通りゴールドアリュールの産駒で、しかも母の父がトニービン。そこにエアグルーヴの子であるサムライハートを配合しちゃったら、サンデーの2x3・トニービン3x3

 まあ、ミスマルミチが際どい配合で成功した馬ではあるけど、それ以上にやばいのいったら未勝利で終わった。一戦で引退して繁殖にも上がってないあたり、なにか問題があったんじゃないのかな……

 

 カムイイットー→キスキスキスの子に、ミトノコウモンダ(父ストローズクリーク)という荒尾ダービーの勝ち馬が出てる。
 しかしこの系統はすでに終了。

 

 カムイイットー→サイキックガール→ヒミノプリンセス(父マンハッタンカフェ)は現役で繁殖をやっている。
 ヒミノプリンセスはこれまで5頭連続で牡馬を産んでるから、牝系はまだつながるかわからない。

 

 カムイイットー→ステラアクトレス(父オペラハウス)は、そろそろ繁殖も引退だと思うけれど、冒頭で出た福島民友カップ2着のアイオライト(父ローレルゲレイロ)を産んでいる。全日本2歳優駿の2着馬でもあるから、なんとか中央のGIIIくらいに手が届かないかな。

 

 カムイイットー→インプレッシヴ(父オンファイア)もまだ繁殖やってるみたい。
 カムイイットーが肌馬として息が長かったから、末っ子のインプレッシヴは2008年生まれだ。
 インプレッシヴの初年度産駒ポッドルイージは、大井で東京ダービートライアルを勝った。

 

ハギノトップレディ

 本線に戻って、イットーの初仔にして最高傑作ハギノトップレディ
 黒鹿毛の馬体に大流星のわかりやすく格好のいい見た目。

 函館1000mの新馬戦でデビューすると、57秒2の未だ破られないほどの日本レコードでぶっちぎり。
(このときの2着馬がヤクモサンダーというんだけど、59秒4で走り抜けてるから相手が良ければ十分勝てるようなタイムで、実際次に走って勝ったのは59秒9だった。この馬は、初戦でもサクラシンゲキと当たってる相手運が悪い馬だった)

 しかしその後に後脚を痛めて休養、桜花賞直前のオープン戦で3着に入って、中一週でなんとか桜花賞へ。これは抽選に勝って出られたのかな。
 そしてまたものすごいペースで逃げて、そのまま勝った。
 華麗なる一族の速さなら桜花賞は向いてそうなんだけど、怪我とか賞金不足で出られないことばかりで、ハギノトップレディが初にして唯一になった。

 オークスは大敗して距離が厳しいかな、と思われるも、秋にはマイルのオープン戦でまた1分34秒2という好タイムで快勝。
 同じくマイルの京都牝馬特別も勝って、それからエリザベス女王杯(当時は2400m)に挑戦。これはまた距離が合わないかと思われて3番人気に甘んじるも、逃げ切って勝利。

 古馬になってからは、宝塚記念でひと叩きしてアメリカ遠征じゃーい、と思ったら宝塚記念で負けてしまって遠征キャンセル。
 高松宮杯に目標を変えて、イットーも勝ったレースをぶっちぎって親子制覇。

 夏は休まず函館で、ひとつ年下の桜花賞ブロケードと巴賞で対決。
 どっちも逃げ馬で、ハギノトップレディが先行するもブロケードが3コーナーで前に出て、しかし直線で差し返して追い比べになり、頭差の決着でハギノトップレディが勝った。これは名レースだったと有名になった。

 最後に毎日王冠で逃げ潰れて敗戦。
 それで引退が決まった。

 

 繁殖に上がった初年度、欧州最強馬グランディと配合するため渡英。
 そして日英の大名馬同士の配合で期待された子馬は、デビュー前に事故死。

 その後日本で9頭の産駒を出して、8頭も牝馬だった。
 競走馬として成果を挙げた仔はダイイチルビーだけに終わってしまったけれど、牝系は広がった。

 

ドリームドリームの子孫

 ハギノトップレディの5番仔ドリームドリーム(父ロイヤルニジンスキー)は、自身は4勝の1500万条件まで。

 ドリームドリームの初仔ボストンタイム(父ブライアンズタイム)が、これまた4勝の1500万条件で終わったんだけれども、繁殖に上がってドリームサンデーを出した。
 ドリームサンデーは、オープン特別のオーストラリアトロフィーを勝って、先祖に縁のある巴賞2着、また中日新聞杯金鯱賞の2着もある。重賞こそ勝ちきれなかったけれど惜しかった。
 なお、いかにもサンデーサイレンスの仔のような名前だけど、全然関係なくてタイキシャトル産駒。なんでその名前にしたん……。

 ドリームドリーム→ボストンタイム→サイレンスドリーム(父ディープインパクト)の仔でガミラスジャクソン(父エイシンフラッシュ)という、笠松ゴールドジュニアを勝っている現役馬がいる。主に園田で走ってるよう。

 

ウメノアスコットの子孫・マイネルセレクト

 ハギノトップレディの6番仔ウメノアスコット(父ラッキーソブリン)は、競走馬としては1勝。

 8頭出した子の中に、マイネルセレクト (父フォーティナイナー)が出た。
 中央ダート路線で活躍して、シリウスSガーネットSを勝ち、JBCスプリントと東京杯も勝ったGI2勝馬
 種牡馬入りしてからは、兵庫大賞典姫山菊花賞など地方重賞を複数勝ったサウスウインドなど、地方重賞馬は複数出している。

 牝系として牝馬が注目されがちな華麗なる一族で、ハギノカムイオーと並んで成功した牡馬だった。

 

 ウメノアスコット→ウメノダンサーときて、サダムイダテン(父フォーティナイナー)がラジオNIKKEI杯に2着して、NHKマイルカップにも出た。

 ウメノアスコットの子では他に、ブルーベルベット(父フォーティナイナー)やラブアスコットー(父プリサイスエンド)が繁殖に上がっていて、ラブアスコットーの子供がまだ現役。

 

マキバノレディの子孫

 ハギノトップレディの7番仔マキバノレディ(父ラッキーソブリン)は、本人は未勝利。

 華麗なる一族では珍しいサンデーサイレンスとの配合があり、生まれたイシノナイトは大井や佐賀で17勝。
 そしてなんと種牡馬入りして、九州で供用された。7頭の子が生まれて4頭が競馬に出て、なんと全員勝ち上がり。そしてシャイニングウェイは佐賀・荒尾で10勝を挙げた。

 

 マキバノレディ→イシノハピネスから生まれたクニノユメオー(父タバスコキャット)は、中央→金沢→園田→高知と渡り歩き、地方3場では固め打ちで連勝する時期をそれぞれ作って通算29勝もした。12歳まで走り続けてたみたい。騸馬だからなあ。

 

フジノキャラットの子孫

 ハギノトップレディの9番仔フジノキャラット(父リズム)の子孫から、活躍馬がそこそこ出ている。

 フジノキャラットの子キャプテンシップ(父ノボジャック)は、中央で5勝したオープン馬。ノボジャック産駒としては上から3番目の獲得賞金。

 

 フジノキャラット→ゴッドエンジェルと経て、メイレディ(父ジェニュイン)が園田で兵庫若駒賞、ル・プランタン賞と兵庫ダービーを勝った。

 メイレディはもちろん繁殖入りして、子も何頭か現役。
 園田で今年デビューしたアンサン(父ビッグアーサー)なんて、5戦して3勝。園田プリンセスカップの3着もある期待馬。
 快速で鳴らした華麗なる一族の血に、ジェニュイン、ビッグアーサーと快速馬を重ねてきた配合、いいかもしれない。

 

 フジノキャラット→ゴッドエンジェル→ヒアルロンサン(父トワイニング)の産駒も現役でまだ生まれてきそう。
 初仔がシットリ、次がモッチリ、その次はウルオイ。ネーミングに一貫性があるなあ。次はツヤモチとかプルプルとかかな。

 

 フジノキャラットルスナイオブカラー(父ブライアンズタイム)の仔も、まだ生まれてきてデビューしていってる。
 勝ち上がり率がかなり良くて、大物は出てないものの割と悪くなさそう。シニスターミニスターとの子メイショウゴテツは中央で新馬勝ち。今も高知で現役みたい。

 

ダイヤモンドクインの子孫

 ハギノトップレディの末子ダイヤモンドクイン(父ラムタラ)の子孫も現役馬がある。

 ブリリン(父タイキシャトル船橋6勝)とダイヤモンドギフト(父ブライアンズタイム・未出走)が繁殖牝馬として現役。
 特にダイヤモンドギフトの方は、今のところ産駒勝ち上がり率100%。

 

ダイイチルビー

 1987年生まれ、ハギノトップレディの4番子のダイイチルビーは、父は天馬トウショウボーイ
 ハギノカムイオーもイットーにテスコボーイトウショウボーイの父)で成功してたから、相性がいいのかもしれない。

 

 生まれつき蹄の形がおかしいと不安視されていて、実際にデビューも4歳になってからになっちゃったけど、無事伊藤雄二厩舎からレースに出て、新馬戦をぶっちぎり。

 しかしどうも桜花賞に愛されない一族の血か、トライアルの報知杯四歳牝馬特別に行くも抽選負け除外。アネモネ賞に出て楽勝したけど、桜花賞はまた抽選負け。

 せめてオークスへ、と忘れな草賞に出るも、2000mだから逃げるより押さえて、と思ったら逃げ馬を捉えきれず。
 仕方なく無理してオークストライアルのサンスポ杯四歳牝馬特別に行くも、穴馬のキョウエイタップにやられて2着。

 オークスは出走できたものの、出遅れてそのまま5着に沈んだ。
 秋にもローズステークスを使ったけど負けて、エリザベス女王杯も回避してお休み。

 

 4歳の成績を見る感じ、やはり2000mでもちょっと長い、2400はダメそう……という感じがあって勝ちきれてなかった。
 で、5歳になってレース選択の自由度も広がり(1990年代初頭にはNHKマイルカップもなく、しかも牝馬となると、マイラーでも2000mなんとかいけそうならクラシック使おうってなっちゃうプログラムだった。今でもわりとそうだけど)、ダイイチルビーはマイル・スプリント路線へ。

 そうすると京都牝馬特別京王杯スプリングカップをずばっと勝って、安田記念
 ダイイチルビーって、基本的に先行馬っぽいんだけど時々後方から追い込み掛けてることもあるんだけど、これってのが出遅れがひどいせいで、安田記念でもやらかした。
 が、最後方から直線で飛んできて、ダイタクヘリオスバンブーメモリーをなで斬りにしてGI初制覇。

 この後、ダイタクヘリオスとは高松宮杯ヘリオス1着ルビー2着。鼻差で牝系3代制覇を逃した)、スワンステークス(ルビー2着ヘリオス9着)、マイルチャンピオンシップヘリオス1着ルビー2着)とやり合い続けたことから、よしだみほが「馬なり1ハロン劇場」でカップリング妄想を膨らませて、それが定着した。

 もう一頭、ケイエスミラクルという強烈な馬(なぜか間違えてましたが牡馬です)がいて、生まれつき日本脳炎に罹ってた(馬はウィルスに感染しやすいけど発症率は0.3%ほど)り、デビュー前にも故障したりという二重苦を乗り越えて4歳春にデビュー。
 マル外ゆえの出走制限もあって4歳秋には古馬と戦い、スワンステークスダイイチルビー相手に、日本レコードのタイムでクビ差出し抜いた。
 マイルチャンピオンシップでもヘリオス・ルビーに続く3着。
 そしてスプリンターズステークスに挑んだんだけど、第4コーナーで、ダイイチルビーの目の前で故障。ルビーはなんとか避けて、幸い巻き込まれずにそのまま優勝したけど、ケイエスミラクルはそのまま予後不良になってしまった。

 6歳のダイイチルビーは、そんな激闘につかれちゃったか、はよ繁殖に上がりたかったらしい。レースでは特に見るところなく、安田記念に出るだけ出て引退した。

 

 そういうわけで、ウマ娘にすでにダイタクヘリオスがいるんだけれど、ダイイチルビーケイエスミラクルもストーリー上、いないと寂しい。いないうちにプレイアブルになっちゃったりしたら、「ああ権利がアレか」と残念に思えちゃいそう。

 

ダイイチルビーの子孫

 繁殖に上がったダイイチルビーは、生まれた荻伏牧場じゃなく、馬主さんのダイイチ牧場に入った。

 7頭の子を産んで、6頭はデビューした。
 未勝利で終わった子はいないんだけど、トニービン2回・サンデーサイレンス2回・ブライアンズタイムクロフネ1回ずつと大種牡馬ばかりつけても、そこまで大きな結果にはならんかった。
 今更いっても仕方ないけど、クラシックディスタンスに強そうな大種牡馬よりか、さらにスピードを伸ばす方向だったら違ってたかもしれないなあ。サクラユタカオーテスコボーイの2x3になっちゃうけど、思い切ってバクシンオーとか、あるいはニホンピロウイナーとかタイキシャトルとか、選択肢はあったと思うんだけど。

 

 長子ダイイチシガーは後にして、次の1996年生まれのダイイチビビット(父トニービン)もダイイチ牧場で繁殖入り。2005年ごろからコスモヴューファームに移った。
 これも母同様、レースに出たら一勝はする子を出していたけど、大物もなかったみたい。さらに次の代でも未勝利馬が少なくて、実に手堅いけど、華麗なる一族というか堅実な一族みたいになってる。
 変わったところでは、長男のニホンピロコテツが競馬引退後、三重県のいなべで草競馬を走ってたとか。

 ルビーの孫世代では、2007年生まれのマイネアロマが繁殖入り。今は荻伏三好ファーム繋養。
 2017年生まれのマイネルソラス(父ゴールドシップ)は中央で2勝、セントライト記念にも出走はした。

 2009年生まれのコスモアンドロメダ(父ロージズインメイ)も繁殖に上がって、産駒は現役で走ってる。今はコスモヴューファームにいるみたい。
 ただ子の登録が2016年生まれで途絶えてるのはどうしたかな。種付けはされてるけど、子は馬名登録されてなかったりしてる。
 コスモアンドロメダの子では、佐賀競馬で4勝して、3歳秋に大井に移って2勝、その後長く低迷するもなぜか6歳にもなってまた勝ちはじめて今年は5勝してるコスモマギカという馬が、多分まだ走るんじゃないかな。重賞でも取れたら熱い。
 その妹のチェインドレディーも現役。

 

 ルビーの子、1997年生まれのアイアンビューティ(父ブライアンズタイム)は、ダイイチ牧場繋養。
 牧場的には期待してたのか、つけた種牡馬グラスワンダーキングカメハメハロージズインメイディープインパクトロージズインメイキングカメハメハディープインパクトディープインパクトエンパイアメーカーキングズベストと、一族でも抜群の贅沢さ。
 しかしこれがまた、そもそもレース出走にこぎつけたのが3頭しかいない。
 一番良くても、キンカメの子ブルースターキングが条件戦4勝して1500万条件に上がったら全く戦えなくなった程度。
 あとの2頭は未勝利で繁殖入り。どっちもディープインパクト産駒だった。

 繁殖に上がったイットーイチバンハシルヨアカルクは、大道牧場で現役で繁殖している。ネーハイシーザーシンホリスキーを生産したとこね。
 ただまあ……全然子の成績が上がらないな……。

 

ダイイチシガー

 94年生まれの、ダイイチルビーの長女・ダイイチシガー(父トニービン)。なんというか微妙に名前のセンスがよくないのよね、華麗なる一族
 ちなみにルビーが世に出る直前の95・96年、アメリカで年度代表馬を2年連続で取ったのがシガー(Cigar)という空前の16連勝を記録した名馬。そして30億円のシンジケートが組まれて種牡馬入りしたら、無精子症でどうやっても産駒ができず……。

 ネーミングが失敗だった気もするんだけど、96年にデビューしたときには、華麗なる一族、しかもダイイチルビーの長子ということでかなりの注目を集めていた。

 新馬戦こそ一度落としたものの、二戦目で勝ち上がって次の白菊賞も連勝。
 そして明けて4歳でクイーンカップに挑戦。武豊を背に1番人気。
 相手はすでにフェアリーSを勝ってきているヒシナイル、そのヒシナイルに条件戦で勝っていたタイフウジョオー、後にクイーンSを勝つプロモーションなど充実のメンバー。
 で、ダイイチシガーは3着敗退、勝ったのはオレンジピール。これも後にチューリップ賞とサンスポ賞4歳牝馬特別を勝つ。

 これじゃ桜花賞に賞金がたりないぞと、報知杯4歳牝馬特別(今のフィリーズレビュー)へ。
 ここの相手は、ファンタジーS勝ちのシーズプリンセスと、世代最強牝馬キョウエイマーチ
 で、2番人気に答えられず、ダイイチシガーは6着に沈んだ。というかキョウエイマーチにぶっちぎられた。

 桜花賞を諦めて、忘れな草賞へ。
 流石に相手も強いとはいえないし、ここなら行けそうに見えるけど、逃げたナイトクルーズにしてやられ、3馬身半もつけられて2着。

 また賞金を積めなかったから、サンスポ杯4歳牝馬特別(今のフローラステークス)に向かった。
 ここでは、桜花賞3着のホーネットピアスを凌いだものの、クイーンカップでやられたオレンジピールをクビ差で差しきれず2着。

 ようやく優先出走権をとってオークスに挑んだ。

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 オークスでは、あの強いキョウエイマーチがまさかの沈没(輸送が大の苦手だったらしい)、しかしもう一頭の強豪メジロドーベルが強かった。
 ダイイチシガーも最後方から追い上げてきていいところを見せたものの、もうちょっとだけスタミナが足りない感じで、穴馬のナナヨーウイングにもかわされて3着に終わった。

 その後は、別に怪我をしたとも聞いてなかったと思うけど、そのまま引退していってしまった。
 どうにか桜花賞、どうにかオークスとレースを使いすぎちゃった感があったなあ。

 

 繁殖に上がったダイイチシガーは、99年から産駒を出し始める。

 しかし初仔のギャンブルホースは、サンデーサイレンスまでつけたのに高知でデビュー、園田や盛岡で走って62戦6勝と、安馬みたいな使われ方で終わっていった。
 華麗なる一族はどうも地方に行く馬が多いんだけど、重賞勝てなかったとはいえクラシック有力馬の、サンデーとの子でさえそうなるというのは……。

 2002年生まれのホーマンファラオ(父オペラハウス)は、中央で4勝して1500万条件を勝ち上がったところで引退している。

 2006年生まれのマイネルプロートス(父ブライアンズタイム)は、中央で2勝止まりだったけど盛岡で重賞・岩鷲賞を勝った。

 2009年生まれのマイネルコランダム(父ロージズインメイ)は中央2勝・地方7勝。

 2013年生まれのウインシガーロ(父マツリダゴッホ)は中央未勝利で地方1勝。

 牡馬は種牡馬入りするような成績にはならなかった。

 

 牝馬の子は、マイネユミドール(父トウカイテイオー)は残念ながら4歳で怪我で死んでしまった。

 もう一頭、2010年生まれのマイネジュリエッタ(アドマイヤマックス)が、ビッグレッドファームで繁殖をやっている。
 タートルボウルとの間に生まれたエヴァンテュエルは、未出走で登録抹消されている。
 次のアイルハヴアナザーとの子マイネルホライゾンは、佐賀で2勝。もう引退してるっぽい。

 で、その次はジョーカプチーノとの子が生まれはしたみたいだけど、登録されず。その後はどうも種付けもされてないみたい。

 

 ダイイチシガー自身は2014年にスマートファルコンとで不受胎になって、もう種付けはしてないみたい。年齢的にももう繁殖は引退かな。

 マイネジュリエッタももう繁殖引退になってるなら、ダイイチシガーの子孫は広がらずに絶えてしまったことになる。

 

まとめ

 調べてみるとなかなか苦しい。GIのタイトルはマイネルセレクトが最後。ほかは中央重賞馬さえ最近は数えるほど。

 社台の天下という時代が来てしまって、名門・荻伏牧場もすでに倒産。荻伏由来の華麗なる一族も、おそらく末裔はみな中小牧場に流れているっぽい。

 

 今後活躍する可能性がありそうなのは、ダイイチルビーの子孫ではコスモアンドロメダが11勝のコスモマギカを出してる。
 ハギノトップレディの子孫は、サイレンスドリームゴールドジュニア勝ち馬ガミラスジャクソンを出してる。マイネルセレクトの妹ラブアスコットーも現役繁殖馬。
 イットーの子孫ではアイランドオリーブを経て阪急杯ブルーショットガンの妹アフィニティも繁殖現役、その近親ミラクルフラワーもみちのく大賞典など地方重賞を勝って繁殖入り。
 カムイイットーを経由して、阪神ジュヴェナイルフィリーズ3着のエイムアットビップとその子が揃って現役の繁殖馬。全日本2歳優駿福島民友カップ2着のアイオライトもこれから活躍の見込みあり、母のステラアクトレスも繁殖現役。東京ダービートライアル勝ち馬ポッドルイージの母インプレッシヴも繁殖現役。

 イットーの妹カルカッタの子孫で、20勝を挙げたサチノブレイブの妹モエレプロポーズも繁殖現役。

 キューピットの妹・マイリーの子テツノアークの子孫は、トウカイステラの一族が重賞馬ヴィーヴァヴォドカを出したこともあって近親が多く繁殖入りした。

 

 繁殖に上がっても、荻伏牧場の考えとか繋養先の牧場の懐事情などがあったのか、あんまり大種牡馬はつけられない一族っぽい。どうもノーザンテーストと配合された事例が一族に見当たらないくらいで。
 サンデーサイレンスダイイチルビー・シガー親子に数回、トニービンはまあルビーとの配合でシガーが出てるとしても、ブライアンズタイムも数回だけ。そして活躍したと言えるのはシガーだけ。

 アイアンビューティ(父ブライアンズタイム)だけ例外的に大種牡馬を配合されまくったけど結果が出ず。

 

 現役で中央競馬で注目できるのはアイオライトオンリーオピニオンあたりかな。地方も入れるとアンサン。お家復興成せるかなあ。