堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

テクテクテクテクは悪くないゲームだったのに

 私は結構位置ゲーが好きな口なので、珍しくビッグタイトルっぽいのが現れたと注目していた「テクテクテクテク」。

www.teku4.jp

 私はスマホの都合で出遅れた(メイン機がまだAndroid 5.1で、このゲームは6.0からだった)ので、2月中旬ごろから遊んでいた。

news.teku4.jp

 そして3月13日、サービス終了が発表された。ええ……。まだ私一ヶ月しか……。

 

 プレイ記事を書こうとあれこれ書き溜めていたら、公開前に終了が発表された。
 捨てるのもなんなので、整理して公開しようと思う。

 

目次 

 

何が悪かったのか

www.itmedia.co.jp

 売上900万円に対して費用8億600万ですって。

 確かに、課金の動線がないゲームだったなあ……。

 

ゲームとしてどうだったのか

 以下、このゲームをプレイして思ったことを記していく。

 おまえ一ヶ月しかプレイしてない新参だろ、といわれるとそうだけど、位置ゲーム全体に関しては、かなり古手のプレイヤーなのだ。一家言ある。
 ガラケーで「アイドルマスターモバイル」や「ケータイ国盗り合戦」をやっていたし、「Ingress」も早期にやっててポータル申請をしたこともある。
 「ステーションメモリーズ」も、Androidアプリ版リリースからのプレイヤーで、これは今でもやっている。

 それから、この記事では「レキシトコネクト」という終了してしまった位置ゲームを引き合いに出しているんだけど、これはテクテクテクテクと似た面があって比較しやすかった。
 あのゲームの長所に触れずに短所ばかりとりあげてしまっているけど、今回は勘弁して欲しい。私もプレイヤーだったし、ある程度の愛着もある。

 

 全体として、かなり素性の良い位置ゲームで、出来が悪いから不人気で打ち切られたというようなものではないと思う。
 「どこに課金するかわからない」ということを含めて、いろいろ詰めの甘さがあってそれが致命傷になったけど、一ヶ月ほどオープンβテストをやったりすれば解消できていた気もして、かなりもったいないタイトルだと思う。

 以下、詳しく。

 

位置ゲーとしての大目標

 位置ゲームもいろいろ存在はするんだけど、ポケモンGOがお化けタイトルなだけで、ヒット作は多くないように思う。
 ガラケー時代からの老舗の「コロニーな生活」とか「発見!ニッポン城巡り」、わりと新しいのでは「ステーションメモリーズ」など、著名タイトルはいくつかはあるんだけれど。

 城とか駅とか、それを巡ること自体が趣味として存在するものに、ゲームとしてのシステムをかぶせたものが、安定してヒットしている印象がある。
 そうでない位置ゲームもあるんだけど、なんだか散漫になってしまう。ただ日本地図渡されて「埋めて」っていわれてる感じになるというか。

 まあ、ヒット作の代表たるポケモンGOIngressが、城巡りや駅巡りといった既存趣味とは離れたシステムではあるんだけれど、Ingressの成り立ち、ポケモンGOへの発展、どちらも極めて特異なパターンだ。
 最大のヒット作がごく例外的な作品だ、というのが、位置ゲーム業界を惑わせてる気もする。

 

 で、テクテクテクテクは、既存の趣味に乗っからないスタイルを取った。
 まあ、既存の趣味に合わせると、その趣味がある人以外にはなかなか訴求しないから、ビッグタイトルにしようと狙うならば、それが正解ではあったかもしれない。

 その結果は、やっぱり散漫になってしまったのは否めないな。
 最終的な大目標が、「日本中を完全に踏破する」になっちゃって、あまりにも遠すぎて途方に暮れる。「一生遊べる」というけど、「一生かけても終われない」だけでは、という。
 全城踏破や全駅踏破なら、まだしも「やった人がいる」というレベルだから、可能な目標と思える。

 

 実はこの「目標設定がずさん」という理由で失敗してる前例に、「レキシトコネクト」があった。2017年3月から18年9月まで、一年半で終了している。

 これは「コロニーな生活」や「ステーションメモリーズ」をヒットさせていたコロプラが、経験を活かして力も入れて仕掛けたゲームだった。
 駅メモでウケていた要素やシステム、課金制度などはほぼそのままだったんだけど、位置を扱うのシステムだけが違った。
 日本中を1辺500mの正六角形に区切って、その領域を取っていく、という、実に散漫なシステム。

 私もプレイはしていたんだけど、まあ途方に暮れたよね。目標が立てられない。

 

では中小目標は?

 まあ、最終目標が遠い・ないこと自体は、それだけでアウトでもない。
 ポケGOとかIngressなんか、位置ゲームとしての最終目標は存在しない。

 ただ、短期的な小目標を立てて、それを大きくしていける構造は必要に思う。
 例えばステーションメモリーズだと、まず駅を取り、その駅の属する鉄道路線の踏破があり、さらにその県に属する全駅の踏破があり……と、順次目標を大きくしていける。

 レキシトコネクトはここに失敗していて、「〇〇市のヘックスを全て踏破する」といった制度がない。また、道すらない山奥や原野、海上までヘックスがあるので、そもそも不可能だった。始まった途端に、目標は日本全土。

 

 この点に関しては、テクテクテクテクは「〇〇市〇〇町を踏破」「〇〇市全体を踏破」「〇〇県を踏破」と、順次目標を広げていけるようになっていて、上手くやっていたと思う。

 

細部の詰めの甘さ

 ただ、詰めの甘い点もある。
 テクテクテクテクは、位置をチェックする区画の単位が「街区」だ。「住居表示に関する法律」で出てくる用語だけれど、道や鉄道、川などで区切られた土地区画のこと。

 そうすると、道のない山林が広がる地域には、巨大な街区ができてしまう。
 逆に入り組んだ都市部だと、ごく小さな空き地まで街区になってしまう。「〇〇町はこれで塗りつぶした」と思ったら芥子粒みたいな街区が残っていて、何十分も地図を睨んで探し回るなんてことになる。
 それと、定期航路のない無人島なども街区になっているから、普通の人には塗れない離島もかなりありそう。

 「〇〇町を踏破」が事実上達成不能とか、達成のために甚だ不毛な作業を長時間強いられるとか、そういう難点が生じている。
 単に地図データを機械処理しただけだから、こうなってるのかなあと思う。コストが大変なのもわかるけど、地図は位置ゲームの生命線でもあり、もう少し丁寧にチェックしてほしかった。
 特に芥子粒みたいな街区を探す作業は本当に酷いから、「一定以下の大きさの街区は破棄」としてるだけでもだいぶ違ったと思う。

 

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 上のスクリーンショットは、奈良県高市郡高取町の、上子島という町。
 100%にならなくてどこが塗り漏らしか探しに探した末、芥子粒みたいな街区がゲーム内の別の案内表示の下に隠れていた、という例。これはあかんやん……
 

想定される移動手段

 テクテクテクテクは、名前通りにはっきりと「徒歩でやる位置ゲーム」と設計されている。これは好ましい。
 塗る単位が街区だから、かなり細かい。自動車などではそこまで綿密に動きにくい。ルートの決まっている公共交通機関ではごく一部しか塗れない。
 鉄道や自動車での移動に有利なシステムもあるけれど、きっちり塗り切るにはやはり歩くのが良い、という作り。

 ポケモンGOは、徒歩以外での高速移動にペナルティをかける形を取っているけれど、テクテクテクテクはペナルティを使わずに「歩け」という設計側の意図を上手く表示している。
 やはりこのあたりも、位置ゲームとしての設計の良さも感じる。

 位置ゲームは、取る対象となる地点や地域の距離・大きさと、それに対する適当な移動手段が想定されてるべき。

 

 これで大失敗してたのもまたレキシトコネクトで、どういう移動手段で遊べばいいかわからないゲームだった。
 1辺500m・対角1kmのヘックス単位なんて、徒歩には大きすぎて一日いくつも回れない。かといって車やバイクだと、一旦停車するのが頻繁になりすぎる。鉄道だと線路沿いしか取れない。
 度々悪い例として引き合いに出して申し訳ないけど、どう遊ばせるつもりかわからんゲームになってしまった実例だったな……。

 

「予約ぬり」システムの良好さ

 これもポケモンGOIngressが例外になってしまうんだけど、位置ゲームはあまり、移動中の操作を煩雑にすべきではない。歩きスマホや、変な場所へのプレイヤーの滞留を誘発する。
 ステーションメモリーズなどは、「駅を取る」という行為に必要なアクションは1タップだけだ。

 テクテクテクテクはさらに発展させて、「移動中に通った街区は、24時間以内ならあとからまとめて塗ることができる」という、「予約ぬり」システムを採用している。
 これは素晴らしい。移動中の操作が不要だから、歩きスマホをする必要がなくなる。なんなら運転しながらプレイしても何の問題もない。

 どんなルールの位置ゲームにも採用できるシステムじゃないけれど、採用できるゲームなら採用してほしい。

 

「となりぬり」システムの功罪

 テクテクテクテクの独特のシステムに「となりぬり」がある。
 今まで行ったことがある街区に隣接する街区を、ゲーム内のTTP(移動した距離などに基づいて取得できる)を消費して、行ったことがなくても塗ることができる。

 このゲームは「街区」という、かなり小さくなりがちな単位が使われているので、普通に道を歩いただけでは、奥まったところが塗れないことなどがよくある。
 いちいち塗り残しを回収するためだけに路地まで侵入するのは、労力がかかりすぎるしトラブルも生みかねない。

 また、立ち入り禁止区域に街区があっても、となりぬりで解決する。
 位置ゲーで時々不法侵入などが問題になるが、テクテクテクテクなら誘発しない。

 プレイの快適性維持のために、これが必要なのはわかる。

 

 一方で、となりぬりは強力過ぎる。
 必要なTTPは、「〇〇町を全て塗りつぶした」ということへのボーナスとして、毎日支給される。
 それを消費して、新たな町を塗りつぶしてログインボーナスを増やす。繰り返していくと、どんどんとなりぬりだけで地図を塗り広げていける。動く必要がない。

 小さな町でも大きな町でも、もらえるログインボーナスTTPの量は変わらない。だから、京都市の細かい町を大量に塗りまくり、ごっそりログインボーナスをゲットしてしまうのがセオリー化している。
 私は堺と天満橋あたりである程度ログボを稼ぎ、それで京都までとなりぬりで到達、一ヶ月も経たずに毎日100万TTPを受け取れる状態になってしまっている。これだけあると2日で大和高田市を全て塗りつぶせた。

 

 「となりぬりは、実際に行って塗った街区がある町内に限る」とか、制限はあってもよかったと思う。

 実のところ、地図を端から塗りつぶしていくという行為に一定の気持ちよさがあるとも思うんだけど、それはもはや位置ゲーではないよな。

 

繰り返しプレイへの想定が甘い

 すでに塗ってしまった街区へ、もう一度行くメリットが何もないことも気になった。
 当然ながら、家の近所はすぐに塗りつぶしてしまう。でも二度以上塗るメリットがないから、近所に出かける程度だとテクテクテクテクを起動する気にならない。

 ステーションメモリーズは、駅へのその月のはじめてのアクセスに対してボーナスがあるとか、「メモリールート」という、他の人が設定した複数の駅を巡るスタンプラリーシステムがあったりとか、一度行ったことのあるところでも繰り返し行く意味をもたせている。
 そういう工夫がなにかほしかった。

 

戦闘システムが鬱陶しい

 地図を塗る以外に、地図上にモンスターが出現して、それを討伐するというRPG風ゲームシステムもある。
 ただ、これがさっぱり面白くない。

 作業的に同じことの繰り返しでしかないのに、操作が忙しいし、少しミスると負けるから手抜きできずに神経を使う。しかも、しばしば運が悪いだけで負けたりもするから不快だ。

 ポケモンGOが、あのめんどくさいポケモン捕獲をやって成功してるのは、ポケモンという強力コンテンツのキャラクターを集めること自体を目的にできるからだ。
 テクテクテクテクの、別にどうでもいいモンスター(デザインは悪くないけど愛着持つ要素もないし、すぐに色変えバリエーションの繰り返しになる)を何百回と見せられても困る。

 せっかく素性の良い位置ゲームなのに、面白くもないRPG風ゲームを重ねるのはよくない。位置ゲーム部とRPG部の連携もあんまり強くない。RPGをほとんど無視してても位置ゲームとしては遊べてしまう。
 どうしても二重のゲームにするなら、単体で遊び続けられるほど面白いゲーム性がほしい。

 

課金要素

 現状のテクテクテクテクに、課金したいと思わせる動線が存在しないのは確かだ。そりゃ赤字にもなるだろう。

 基本無料が当たり前の時代になっちゃってるけど、位置ゲームって、あまり「課金をすると有利になる」といった要素をもたせづらいと思う。
 ステーションメモリーズは、実質的に月額500円の有料プレイだ。他の有料アイテムは、「うっかり取り逃して通過した駅を取る」とか、「あまり本数のない盲腸線の駅を取る」といった補助的なことで、必須ではない。

 今のテクテクテクテクなら、例えばどんなのがよかったかな。
 月額300~500円程度の実質課金。無課金だと一日に塗りつぶせる街区が30箇所程度に制限されて、課金すれば1ヶ月は無制限に塗りつぶせる、と。
 あとはとなりぬりに必要なポイントを有料化、無料入手分を大幅に削減する……といった制度で、ステーションメモリーズに近いものになるかなあ。
(もちろん、私が「これなら利益を出せる」とか考えられる立場にはないから、プレイヤー目線で言ってるだけだけど)

 

PRについて

 位置ゲームとしては珍しく、かなり大々的に宣伝されているゲームだったけれど、なんというか、ちょっとセンス悪くないかな。
 巨大高須克弥を登場させてしまうようなセンス、ニコニコ動画的な悪ノリっぽいというか。まあ私がニコ動苦手だというのもあるけど、私以外に向けても、もう今となってはニコ動ノリって古くないか?

 バーチャルユーチューバーをどんどん巻き込んでいく宣伝策も、なんだろう、私はVtuber好きだけど、このゲームを大ヒットさせるために有効な手なのかな。あんまり位置ゲー好きな層と、Vtuberファンとが噛み合う気がしない。
 それに、Vtuberにはこのゲームのプレイ実況は困難でしょ。頼んで宣伝動画を作ってもらうことはできても、継続的にプレイ動画上げたりしてもらえるとは思えない。

 田中ヒメ・鈴木ヒナがゲーム中に巨大キャラとして登場してもいたけど、視聴者じゃない私には、ただ出てきてるだけとしか感じられない。
 見た目と、なぜか高速でコマネチする謎の動きくらいしかわからないから、彼女らに興味も持ち難い。

 Vtuberファンはスパチャを投げるとか慣れてるから、わりと課金してくれることが見込める気はするけど、それにしてもVtuberの使い方が今ひとつな印象。

 

 福岡の天神に行ったら巨大舞鶴よかとが立ってて、いつもの調子でうるさく喋りまくってるのをARで撮影(できれば音声つき動画で)できる、とかだったら、そのために天神に行くよかともは少なくないと思うんだけど。
 そこでスパチャ的な投げ銭ができて、何割かはVtuberに支払われる、とかだったら結構喜んで投げ銭するのがVtuberファンじゃないかしら。私はやりかねない。

 

まとめ

 ここまであれこれ並べたけれど、やはり、徒歩で遊ぶ位置ゲームとして、かなり素性のよいシステムではあると思う。

 度々引き合いに出して悪いけど、レキシトコネクトがダメだと思えた要素(想定移動手段不明・短期目標設定不能)は、テクテクテクテクには生じていない。
 そのレキシトコネクトを失敗させたのが、自らコロニーな生活やステーションメモリーズを成功させていた、位置ゲームの経験値が高いはずのコロプラだった。コロプラでも失敗する。
 新規参入でこれだけ素性良いシステムを作ったのは、かなりいい仕事のはず。

 現状で大問題になった、課金する動線がないこととか、となりぬりが強力すぎることとかは、一ヶ月もオープンβテストでもやれる期間があれば、気付けてた気もする。私が1ヶ月も経たずに気付けてるんだから。

 

 なんというか、派手にヒットしなくちゃいけないKADOKAWAのゲームとしてじゃなくて、もっと手堅く運営されるゲームとして生まれていたらよかったなあ。