バクシンバクシーン。
ところで、サクラバクシンオーを知る前から、驀進という単語を知っていただろうか。
私は……どうだろう。どこかで読んだ本で目にしていたかもしれないけど、辞書引いたりした覚えはないなあ。それに私はウマ娘じゃなくて馬の方ので知っちゃったし。30年近く前だよ。
驀進以外にも同音異義語は、爆心とか幕臣とかいくつかある。しかし爆心王だとすでに消し飛んでいそうだし、幕臣王だと臣下か王かどっちやねんという感じだ。ちなみに中国語でエンジンのノッキングを爆震というらしい。
まあ、サクラバクシンオーは驀進王で間違いないだろう。頭の中で爆進になってる人も多いだろうけど。あれは誤字というか当て字というか。
ま、大抵の人にとっては、サクラバクシンオーで驀進という言葉を知ったかと思う。
そしてそれはどうやら、馬主さんにとってもそうだったらしい。
名前に「バクシン」を含む馬を検索してみると、121頭いるらしい。
競馬ラボで見つかる最古のバクシンと名付けられた馬は、サクラバクシンらしい。名前通りさくらコマース、全演植氏の馬。1979年生まれだから、サクラバクシンオーより10年早い。
netkeibaだと1954年生まれのバクシンという馬が見つかったけど、前方一致検索しかできない。バクシン○○は見つかるけど○○バクシン○○はダメ。他にもいるかもしれない。
ともあれ、サクラバクシンの次は6年もあいて、7年後に生まれたのがヤマトバクシン。馬主は鈴木芳夫氏で、失礼ながらあまり有名馬主ではないと思うけど、クイーンカップを勝ってオークス3着のサクセスストレインのオーナー。
ビックリマン世代だとヤマト爆神を思い出すけど、この馬は86年生まれ。名付けられたのは87~88年あたり。うーん微妙な時期。ビックリマンからとったかもしれないし、違うかもしれない。
以後、バクシンターフ、シノバクシンと毎年バクシン馬が登場して、89年にサクラバクシンオーが生まれる。
バクシンオーの後、2年はバクシン不在の年。
そして92年生まれにラッキバクシンオが登場する。ラッキーバクシンオーにしたかったらしいけど字余り。
これはおそらくサクラバクシンオーにあやかって名付けられたのかな、とは思うものの、ずいぶん気が早い。バクシンオーフォロアー第一号にして、バクシンオ第一号を共にゲットしてるあたり、なかなかバクシン的。
血統的にはサクラバクシンオーと共通する部分は特にない。
父ムクターって懐かしいね。母方はコテコテの和式血統で、1930年頃に新冠の帝室御料牧場に輸入されてきたステファニアに至るファミリー。
血統が無関係なのにバクシンオを名乗ってるあたり、サクラバクシンオーによってバクシンミームが生まれていることがわかる。
そして93年、テイエムバクシンと有名冠号を載せたバクシンが登場。(バクシンターフの「ターフ」も有名冠号ではあるんだけど、有名なのってバローネターフとかまで遡るので)
これも母の父がノーザンテーストであることくらいしかバクシンオーと血統的共通点はない。バクシンミーム馬だ。
94年になると、バクシンサンデーというわかりやすい名前の馬が登場。父サンデーサイレンスで、あのサンエイサンキューの弟。悲しいくらい走らなかったけど。
やはり血統的共通点なしのバクシンミーム馬。
というかどうも、馬主の米山清一氏が、94年以来突然冠号をバクシンにしてしまったらしい。これから数年間、サクラバクシンオー産駒でもなんでもない馬に次々バクシンと名付け続ける、バクシンミームに冒された馬主さんとなる。
私が好きな米山清一氏のバクシンミーム馬は、なんといってもバクシンマリモ。マリモのバクシンとは。可愛い上に意味不明。
そんな米山氏の影響だろうか、他の馬主さんからも散発的にバクシンミーム馬が登場する。
あの日高の大馬喰中村和夫氏も、バクシンミームに冒されてモエレバクシンを出した。父はジェネラス、母の父はリズム、母系は華麗なる一族と、サクラバクシンオーとは無関係。
鶴丸観光の鶴田任男氏も、ツルマルバクシンを出した。祖母ミルレーサーだから、フジキセキとかシャイニンレーサーの甥にあたる。サクラバクシンオーとは関係ない。
いつもは「サンライト」の冠号を使っている酒井祐三氏も、冠号を崩してバクシンジャパンという馬を走らせていた。血統的にサクラバクシンオーとは関係ない。
中央でデビューしてから、主に東北の地方競馬で13勝を上げたバクシンタッチも、やはりサクラバクシンオーと無関係な血統。ロイヤルタッチとも全然関係ない。でも勝つときは逃げ切りで距離もせいぜいマイルまでと、走りはバクシンしていた。
サクラバクシンオーは2011年の4月に亡くなり、バクシンオーの子だからバクシンと名付けられるケースはなくなる。
けどまあ、母がバクシンオーの子でバクシンの名を持ってたりして、引き続きバクシンの名を受け継ぐ馬が現れている。
そしてバクシンミーム馬もまた途絶えない。
コウエイバクシンはもう日本にはほとんど持ってこられてないアメリカの血統で、もちろんバクシンオーの血統とはかすりもしない。
バクシンもまた、サクラバクシンオーと重なるところなし。カネヒキリの甥っ子ではあるんだけど。
そしてバクシンクインは、米山氏のバクシンミーム馬・バクシンオージョが繁殖に上がって産んだ子。バクシンミームの血統的継承という偉業がなされてしまった。
サクラバクシンオー誕生後、多くの馬が驀進という見慣れない単語をその名にとった。
大抵の馬はサクラバクシンオーの血と共に名を継いでいるのだけど、一部は血の裏付けがない、純然たるミームとして名乗った。そしてミームを血で継いだ馬までがいる。
いずれにしても、サクラバクシンオーがいなければ生まれることはなかった。バクシンオーは、偉大なるバクシンの父であった。