夏アニメの「異世界食堂」見ててふっと気付いたんだけど、なんか、ボケ表現が妙に細かった。
正直私も単にカメラ好きな程度で、ちゃんとした光学の知識があるわけじゃないので変なこと書くかもしれないけれど。
(アニメ「異世界食堂」 OP冒頭 右上部)
ランタンを持った手にカメラのピントが合っていて、背景の森がボケている。そして、木漏れ日の小さな光の点が、丸いボケになっている。
単なるガウスぼかしなどの処理じゃなくて、カメラのレンズを通したような表現だ。
それどころか、そのボケの丸の、フチが明るくて中心がちょっと暗い、縁取りしたような、あるいは輪っか状になったボケがある。
これは、レンズの球面収差の補正が過剰な場合に後ボケに現れる、という理屈は置いとくけど、とりあえず「ほんとにカメラで撮影したらよくこんな感じになる」というのは確かだ。
別に、アニメの表現としては単に一様な白丸でも文句ないと思うし、それ以前に、背景画に単なるガウスぼかしをかけた程度でもいいように思う。
それが、現実にありそうな収差まで再現したボケをかけてるというのは、なんとも細かい。そこまでやるとは。
http://www.oldlens.com/lens%20kyoushitsu04%20hyou.html
収差の理屈はこのページにある程度わかりやすく書かれていた。あとうぃきぺと。
アニメ「おそ松さん 第2期」 ED
でもって、こっちもまた実際のレンズっぽい表現をしている。
シチュエーションとしては、電飾の施されたアーチトンネルの中に立って、奥の方に見えるビルらしいやつにピントを合わせる。それで、近くにある電飾が大きくボケている。
それで、木漏れ日から漏れた小さな光と同様に、電飾が丸く大きなボケになっている。
そしてそれが、レモン型に歪んでいる。これは口径食が出ている表現だろう。
口径食っていうのは早い話が、レンズの筒とかが影になって光の一部が遮られてる状態。それによって、本来丸くボケるはずのものが、別の円形のものの影になって欠けている、というのは形見た通りで。
画面中心のものほど欠けが小さくて、画面端に行くほど大きく欠けてるのも細かい。
「おそ松さん」は表現の方向性がポップで、あんまりリアリズムを追っている感じではない。
この口径食表現も、表現として取り入れただけだろうとは思う。
多分、こういう収差をつけたボケ表現を再現できる画像処理ソフトができてるんだと思う。
ゴーストイメージの再現、というか描き足すようなのは昔からあったし、ソフトウェアを作ってるところはありそうだ。
また、「おそ松さん」みたいに、要らない収差は出さずに欲しい口径食だけ使うというのも、かえって実際のレンズじゃ無理だ。任意の収差などを発生させてボカせるというのは、そういうソフトウェアがあることを想像させる。
しかし、いつからこんな細かいことやるようになったのかなあ。私が気付いたのはほんとに最近だ。
私はアニメをぼーっと見てるし、絵的な感受性にも自信がないので、おそらく他のアニメにも多数こういう細かいボケ表現があるのを見落としてるんだと思う。
ソフトウェアがやってる処理も、どんな感じだろう。
リアルにやるなら、例えば「異世界食堂」のやつなら、手とランタンのレイヤーと背景レイヤーを分けて、それぞれのカメラからの距離を設定し、レンズの焦点距離やら口径、収差の量を設定して実際に計算する、とかだろうか。もっと簡便にそれっぽく見える手があるんだろうか。
レンズ収差の再現って、やったところで「肉眼で見たようなリアルさ」に近づくわけじゃなくて、「レンズを通して撮影した写真やビデオ」に近づくのだから、果たしてこれはリアリズムなのか。哲学的命題だ。
テレビを通して見る映像なんだから写るものはカメラ越しが正しいと言われるとそうかもしれない。哲学的命題だ。
ボケ表現をリアルにやってることに気付いて、それに何らかの評価を与えるのも、比較的理屈っぽい部類のカメラファンだけ。そこに大した意味はあるのか。哲学的命題だ。
そういえばカメラといえば、今期は「Just Because!」だ。
キヤノンが協力してリアルなカメラ描写を追求してるというのだけど、高校の写真部の分際でEOS 7D MarkIIにEF100-400mmF4.5-5.6L IS II USMをつけている。
安いとこで買っても、12万円のボディに23万円くらいのレンズで35万円というところでしょうかね。
まあ私学の有力写真部で部費がたくさん出るとかなら出ない額でもないだろうけど、1話でいきなり「廃部寸前の写真部」というのだからこのやろう。なにがリアルだ。あの春高光画部の部費は、10倍増額を勝ち取って5万円だぞ。
それはともかく、こっちはさぞかしリアルなカメラ表現がされると思うから、鵜の目鷹の目であら捜し……じゃなくて、期待していようかと思う。