最近スマートニュースの「テクノロジー」チャンネルに、the360.lifeというサイトの、製品比較ランキング記事が上がってきてます。
この記事書いてる時点では、以下の記事が上がってました。
まあ、カメラ好きだから見出し見て開いちゃうんですけど、うーん。言葉は悪いけど、もうちょっと内容のある記事にならんもんだろうか……
私はキヤノン嫌いだから自分では使わないけど、この記事内容で「まさかの苦戦」なんて見出しで貶められてるのは、単純に不当だ。好き嫌い以前。
で、この記事は何が好ましくないのか。
失敗ではないものを失敗例としている
まずいきなり、最初の「失敗例:ピントが手前の網に合っています」という作例写真なんですけど、これは「オートフォーカスが誤って手前の金網に合焦した」という例ではありません。
ピントは確かにペンギンに合ってます。
それでも金網が線状に残るのは、十分にピントが外れていないからです。
十分に金網をピントから外すには、「ペンギンが金網から離れたところを写す」「カメラを金網に近づける」「絞りを開ける」などの対応がありますけれども、いずれもオートフォーカスとは関係がない。
むしろこの例は、オートフォーカスが上手く被写体を判断して、金網ではなくペンギンを選んでいる例です。
これをオートフォーカスのミスの例だと挙げるのは、間違っているし、果たしてピントに関する知識をちゃんと持っているのか疑わしく思う。
そもそも比較条件が不明
実に14台ものカメラを比較するというのは、なかなか素人にはやり難いことなので、こういう比較をしてくれること自体は興味深いんですけど、惜しむらくはこの記事は比較した条件がわからない。
レンズ交換式カメラって、取り付けてるレンズによってAF速度はかなり変わってきます。
なのにこの記事では、ボディだけ名前を挙げて、どのレンズを取り付けて比較したのかわからない。どこにも書いてない。
これらのペンギンの写真は以前の記事でも使われていて、そこでは「望遠レンズを使って」とあります。が、各社とも複数の望遠レンズを出しているから、やはりどれかわからない。
ボディとレンズの組み合わせで初めて使えるモノについて、レンズが何か不明では、ボディの比較にもなりません。
また、参考価格の表示にさえ、ボディのみ・標準レンズキット・ダブルズームキットで混在しているというのは、首を傾げるレベルの杜撰さといいますか。
これが比較の体を成さないことは、だれでもわかると思います。
まったく定量化されていない
各カメラに短評がついていますが、AF速度についても「スパッとピントを合わせてくれます」「構えるとすぐにピントをあわせてくれる」とか、曖昧な表現だけ。
本当に速いのか、記者が速いと思っただけなのか、記事からわかるのは後者でしかない。
しかも説明文だけ読んでると、何も悪く書かれていないEOS Kiss X8iが、難点を挙げられているE-M10 MarkIIとかE-M5より下にいる理由がわからない。感覚的な説明すらできていないのでは。
まあ、AF速度を定量化するというのは、難しいとは思います。
カメラ側で生じるばらつきも大きい。
同じカメラとレンズでも、すぐ手前のものを撮影した直後に、ずっと遠くの風景を写そうとしたら、ピントの移動距離が大きくなるから遅くなる。
素人レベルで、古典的なやり方でいえば、ストップウォッチを撮影するなんて手がありました。
ちょうど10秒になったと思ったところでシャッターを一気に押し込み、AFが作動して撮影されたその秒数とのズレを見る。
カメラとストップウォッチの場所は固定し、撮影前のピント位置はあらかじめ無限遠にしておく、シャッターを押すタイミングのばらつきは、例えば20回くらいやって平均と標準偏差を出しておく……といったことで、ある程度は誤差の対処もできるかな。
もちろん同一メーカーのボディには同じレンズ、違うメーカーなら競合する同等品を取り付けて比べる。
AF精度の定量化は、できるだけ撮影条件を揃えた上で、外したカットの割合とかでやるかな。
どれくらいまでをピンボケとするか決めたりとか、ペンギンなどの動物を被写体にするなら、ペンギンが動くことでの被写体ブレを抑えるために、シャッタースピードは高速に、かつ各カメラで揃えておくとか、いくつか考えることはありますが。
AFが迷う頻度は……結果の写真だけじゃわからないので、撮影中にカウントしておくしかないか。
オートフォーカス性能の定量化は簡単ではないし、私が思いついた方法でもぜんぜん万全ではないとは思うんですが。
それにしても、まったく定量化されてない基準でランキングというのは、あまりにも乱暴でしょう。下げられたキヤノンが浮かばれない。
14台を一度に比較できる?
2台のカメラの比較であれば、30分ずつ使って「こちらの方がAFが早かった、迷うことも少なかった」という感覚的な比較をしても、そんなに間違えないと思うんです。「ほぼ同等」という評価も認めれば、なおさら間違えにくい。
以前こういうのが流行りましたけど、2つずつの比較を繰り返していくことで、多数のものをランキング化することもできるわけです。
でも、そういうやり方してるだろうか。
定量化しての比較だったら、数が多かったり、試験が複数日にまたがったりしても、基準があるからちゃんと行えます。
けど、感覚的な比較を14台に対して、ランキングできるほど公平に行うというのは、ちょっと人間業と思えない。
何か公平性を保てるようなやり方をしてるなら、それを書いてほしいところです。
〆
上のような理由で、この記事は製品批評として内容が薄いと見ました。
せっかく個人では難しいコストかけて、14台も安からぬカメラを並べたんだから、いくらでも読み応えある記事書けるだろうに、もったいないなあ……。