ウィキペディアでなんとなしに競馬関係のページを見ていたら、マークオブディスティンクションというちょっと懐かしい馬のページにぶつかった。
90年代後半に走ってたホッカイルソーという馬の父馬で、現役見てたから懐かしいな―と思ってたんだけれども。
競走馬の名前は、日本ではカタカナ2~9文字制限で、マチカネタンホイザやらカツラノハイセイコやらと、無理に押し込んだような名前になってることがある。
で、海外でも同じように18字制限があって、無理に押し込んだような名前になってることがある。
マークオブディスティンクションがそれで、Mark of Distinctionと書くと19字ある。
なので、Markofdistinctionとスペースを削って1語にしてしまっている。
そういうのもあるのか、と、マークオブディスティンクションの父Known Factのページを見ると、その子にブリーダーズカップ・ジュヴェナイル2着の馬がいて、名前が「Itsalilknownfact」という。
は? と思うが、It's a Little Known Factだろう。「それはあんまり有名なことじゃない」みたいな意味だけど、一体ここまでしてこの名前をねじ込むコダワリはどこから来たんだろうか。
そういえば海外の珍名馬って全然知らないから、せっかくだから少し探してみた。
目次
面白い海外馬を紹介している記事
そもそも私が取ってつけたように探すより、海外競馬に詳しい人が探した記事のほうが面白かろう。日本語記事がひとつあった。
The Most Ridiculous Racehorse Names in History - Sabotage Times
紹介されてる珍名馬デッドヒートは、こちらに映像があった。
で、私が軽く検索しただけでは、日本語では日本の珍名馬の話ばかりヒットして、あんまり海外ネタは見つからぬ。仕方ないので、あんまり読めない英語情報の検索にチャレンジだ。
かのブリタニカが選出した歴史的珍名馬7選。無断翻訳するのもアレなので、名前とちょっとしたヒントだけ。何が面白いかは記事の方で。
- Potoooooooo(ポテト、なのだが)
- Waikikamukau(Why kick a moo cowはこれ)
- Ghostzapper(Ghostbusters!)
- Hoof Hearted(早口で読むとWho fartedと聞こえてしまう)
- ARRRRR(あああああ)
- Odor in the Court(下に書く)
- Clyde Van Dusen(調教師が自分の名前を管理馬につけちゃった)
Odor in the Courtは、こういうジョークがある。(ここの#2から)
裁判官がよくいう「静粛に!」というやつ、英語では "Order in the Court!" というので、それを踏まえて。
What did the judge say when a skunk entered the courtroom?
(スカンクが法廷に入ってきてしまった。裁判官はなんといった?)Answer: Odor, Odor in the court!!!
(臭い、法廷が臭いぞ!)
ニューヨーク・タイムズの記事。たくさん挙げられている。
Great British Racingの記事。
- Two in the Pink(英国でやっちゃいけない指サイン)
- DoReMiFaSaLaTiDo
- Maythehorsebewithu(ホースとともにあらんことを)
- Ha Ha Ha
- Big Tits(男どもには説明不要の)
- Hoof Hearted
- Passing Wind(Pass windで英辞郎れ)
- Whykickamoocow
- Geespot(桑田佳祐かよ)
- Wear The Fox Hat(性的な隠語)
- Mary Hinge(けつだいらまん的なことをしちゃうとえらいことになる)
- AARRRRRRR
American Pharoahという、Pharaoh(ファラオ)としたかったのにスペルミスしてファロアになっちゃった馬が、2015年のアメリカクラシック三冠馬になってるんだけど、それに触れながら他の珍名馬について触れている。
かの名馬Secretariatの名付けエピソードが紹介されていたり、アメリカの歴史的名馬Man O' Warが生涯一度だけUpsetという馬に負けたせいで起きた出来事の話とかも。
オーストラリア競馬の珍名。日本人にはわかりにくいのも多いが、「馬と呼ばれた男」とか「キャベツ」とか「汚い」とか「ハードディスク」とか「彼はピザを食べない人」とか「お母さんが欲しい」とか「とても長い昼食」とかわけわからんの多数。
では、ここから私がざっとウィキペとか探したもの。
誤字・ミス型
American Pharoah
上の記事に出ているが、日本でも、間違えられたままGI級競争の勝ち馬になっちゃった例はいくつかあるのでちょっと触れておく。
ラフオンテーヌとするはずがラフオンテースとやらかしちゃったら、そのまま阪神3歳ステークスを後の菊花賞馬やダービー馬を相手に快勝しちゃった。
あとは、女優の高峰三枝子が持っていたスウヰイスーは、スウヰトスー(Sweet Sue?)にしたかったのが口頭で間違えて伝わった、との話も有名。牝馬二冠を取った名牝。
Misspelled
誤記という名前の馬もいたようだが、あまり有名そうじゃない。「Misspelled Racehorse」とかで検索してもAmerican Pharoahが邪魔して上手く探せないな。
Man O' War
アメリカの大名馬で、マンノウォー系といわれるほど種牡馬としても栄えたこの馬も、第一次大戦に出兵した夫のために「My Man O' War」と名付けたはずなのに、Myが抜けて登録されちゃって誰のことかわからなくなったエピソードが。
スペース切詰め型
Markofdistinctionのように、スペースを詰めて無理矢理18字に収めたタイプ。スペースだけならそこまで極端な珍名にはならないので、単に見つけたのをリストアップする程度で。
- Pioneerof the Nile
大した切り詰めではないんだけれど、これAmerican Pharoahの父。親子二代の苦しい馬名に。 - Songandaprayer
スペース空けても17字なのに詰めている。なにか意味があるのかな。
Unbridled's Songの産駒で、G1を勝って種牡馬入り。でもって産駒にSinganothersong(ミスタープロスペクターステークスG3勝ち)がいて、親子二代の「入るのに詰めてる馬名」を達成。 - Stopchargingmaria
BCディスタフの2015年の勝ち馬。マリアさん何をしたんだろう。 - Silverbulletday
スペース詰めなくても18字に収まる。G1を5勝、生涯23戦15勝の名牝。 - Newspaperofrecord
2018年BCジュヴェナイルフィリーズターフの勝ち馬。せっかく詰め込んだ名前だけど、勝ちタイム1:39.00とレース史上2番目に遅かった。レースレコードは、2014年のLady Eliが出した1:33.41。 - Footstepsinthesand
2005年の英2000ギニー勝ち。名前の割に、別にダートで活躍していない。おそらくレースで走ってもいないと思う。 - Pennycomequick
1929年英オークス勝ち馬。スペースを詰めることで、忙しない感じの名前を演出したのかな。
ネタ・新語・読めないなど
Pas de Nom
世界的大種牡馬Danzigの母馬なんだけれど、「名無し」という名前。
ちなみに歴史を遡ると、競馬黎明期には名前を登録しないまま競争に出てた馬とかもいる。1797年のダービーステークス勝ち馬は名前がない。
Blankもいる。
Squartle Squirt
ポケモンのゼニガメの英名がSquartleなので、そこからとった。カシノピカチュウとかテイエムプリキュアの同類かな。
しかしおもしろネームながら、BCスプリントとキングスビショップステークスのふたつG1を勝っている強豪スプリンター。
Amazombie
2011年のBCスプリント勝ち馬。
Urban Dictionaryによると、「Amazonと同じように無料で二日以内に配送するサービスを他のあらゆる通販業者がやるべきだ」と何も考えずに言い張る、アマゾンに洗脳されて自我を失った通販ゾンビに成り果てた連中、というような意味らしい。
Pebbles
何の因果か「小石」なんて名付けられたが、1000ギニー、エクリプスステークス、チャンピオンステークス、BCターフとG1を4勝した世界最強クラスの牝馬。小石だけど。
Is It True
まじで? という名前。
同い年にサンデーサイレンスとイージーゴアがいたという不運な生まれの世代で、当人も「まじで?」と思ってただろう。でもBCジュヴェナイルで、単勝1.3倍のイージーゴアを破ってしまって、多くの人たちを「まじで?」と思わせた。当人も「まじで?」と思ってたと思う。
Stevie Wonderboy
よく通ったなこんなの。2005年のBCジュヴェナイル勝ち馬。
ちなみに日本でもスピーデーワンダーという馬がいたが、これがスティーヴィー・ワンダー由来かはいまいちわからない。タイミングとか、名付け時点での日本での知名度とか、色々微妙で。
Nownownow
父Whywhywhy、母Here and Now。
BCジュヴェナイルターフを勝って、種牡馬入りまでしたので、NonnonnonとかYesyesyesとかネーミングラインを繋げていって欲しいところ。
Bee Bee Beeという馬が72年のプリークネスステークスを勝っているが、これはスペースが空いている。
日本だとナイスナイスナイスがいる。
Mucho Macho Man
父Macho Uno(BCジュヴェナイルを勝ってる)にちなんだネーミングだけど、暑苦しい。
生まれたときには心停止してて死にかけていたらしいが、その後やたら巨大に育ち、この暑苦しい名前をもらって2013年のBCクラシックを勝った。
Cloud Computing
17年のプリークネスステークスを勝っているのだが、流行語をまるごと取り入れる感じがなんとも。日本のソンナノカンケーネと同類ではないか。
しかも2016年あたりの名付けだったら、種々の科学技術計算クラウドコンピューティングプロジェクトが、ビットコインの採掘が流行ったせいで軒並み盛り下がってた頃じゃなかったかな。
Cwrw
1812年に第4回2000ギニーを勝った馬だが、読めん。ウェールズ語でビールのことらしいが、発音までわからん。
1981年にはTo-Agori-Mouという馬が勝っているが、これはギリシャ語で「My Boy」くらいの意味らしい。