堺風の頭部

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国会議員の辞職勧告決議や除名について

 前にちょっと書いてたけど、丸山穂高は、当時私が選挙権のあった大阪19区選出であった。

 でまあ、辞職勧告決議案が出るかもしれず、ひょっとすると可決になるかなー、という事態になってるので、ちょっと「議員の資格を失わせる」といったことについて、行政書士試験の勉強を兼ねて調べていってみる。
 自分用だから話のまとまりとかないけど。

 なお彼については、当時の選挙区民として、彼の不祥事や暴言は今に始まったことでもないのに選出しちゃったのがあかんのやろな、とは。

 

議員を辞めさせること

 国会議員は、国会の独立性を保つために、行政や司法からも分離されている。

 有名なのは不逮捕特権というやつで、憲法50条に定められている。
 国会の会期中は議員は逮捕されないし、会期前に逮捕されていても会期中は釈放するように議院が要求できる。
 このへんは、立法を行政から妨害できなくしてるものかと思う。

 ただし、国会法に定める例外があって、会期中に院外で現行犯逮捕された場合と、議院が許諾した場合は逮捕される。

 

 また、国会議員の議席を失わせる資格争訟は、裁判所でやらずに議院でやる。憲法55条に定められている。
 公職選挙法とか国会法であっても、司法が一般裁判所で行う裁判で立法府の議員を直接失職させることはない(と思ってるけど合ってるよな)。

 資格争訟になるのは、被選挙権を喪った人がまだ議員をやってる場合。身体に問題を生じて成年被後見人(物事の弁識能力をほぼ失ってしまっている)になってしまったとか、禁錮以上の刑に処されたとか。
 それから、兼職の規定に反する場合も。国会議員が公務員を兼ねる(国会法39条・大臣などは除く)とか、衆議院参議院両方の議員になってしまってる(108条)場合。

 資格争訟は、憲法で定められた特別裁判所(普通の裁判所以外でやる裁判)のひとつではあるけど、実際に開かれたことはないらしい。問題がある状態になって、さらに議員として居座り続けてる場合になら開かれるんだろうけど、そういうのはないらしい。
 もし開かれて、議員の議席を失わせる場合には、出席議員の2/3以上の多数による議決が必要。

 今回の丸山穂高には関係のない定め。

 

 それとは別に、国会からの懲罰がある。
 憲法58条2項に「両議院は、(略)院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる」とある。

 具体的な懲罰事犯には、国会法で「正当な理由なく召集に応じない」「正当な理由なく会議や委員会を欠席した」、衆院参院規則で「議長の制止や取消の命に従わない」などと定められているけど、別にこれに限るものではない。
 松浪健四郎の水ぶっかけ事件とか、永田寿康の偽メール事件とかも懲罰になっている。

 なお「院内」というのは国会議事堂の中のことじゃなくて、集団としての衆議院参議院のことだから、議員として仕事をしているときの行動は対象になる。

 

 懲罰の内容には、「公開議場における戒告」「公開議場における陳謝」「一定期間の当院停止」「除名」の四つ。
 一番重い除名については、国会議員の職を失わせるという重大事なので、憲法58条2項にも「議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。」とある。

 丸山穂高の今回の行為は、懲罰事犯とはいえるかもしれない。
 私の勝手な見立てだから意味はないけれど、松浪の水かけよりずっと悪質には思うし。

 

除名の実例

 除名なんてそうそうあることではないんだけど、1950年と1951年に1例ずつある。

 1950年は、小川友三参議院議員が、予算案への反対討論に立ったのになぜか表決では賛成した、という行為が問題になって懲罰動議が起きて、除名とされた。
(なおこの行為単発じゃなくて、以前から議員会館を自分の会社のために使ったりとか、議員の立場で統制下にあった砂糖を横領したりとか、いろいろ問題があったらしい)

 1951年は、共産党川上貫一衆議院議員が、朝鮮戦争絡みでGHQや内閣を非難し、議会政治を否認するような発言をしたとして、公開議場による陳謝となった。しかしその陳謝を拒絶したので、除名とされた。この頃ってGHQレッドパージが盛んに行われてた頃だ。
 ちなみに除名されても、その後の選挙で当選して改めて議員になることは妨げられず、川上貫一は53年の選挙で当選している。

 

 その後70年近く、除名までされた例はない。
 懲罰の審議って、50年代のうちは何度もあって、60年代に急減して1件だけ、70年代2件、80年代はゼロで90年代に1件。
 しかし00年代に急に増えて、松浪健四郎の水ぶっかけ(25日間登院停止)、津村啓介衆院議員の参院議会闖入(戒告)、永田寿康偽メール事件(議員辞職で廃案)、内山晃桜田義孝を羽交い締めにした件(30日間登院停止)と4件。
 10年代は、アントニオ猪木が無断で北朝鮮に訪問した件(30日間登院停止)、山本太郎森裕子糸数慶子カジノ法案反対の垂れ幕を壇上で掲げ続けた件(審議未了廃案)がある。

 

 「院内の秩序」というのは、別に国会議事堂の中に限らないとはいうものの(国会法121条の3に閉会中の懲罰事犯についての定めがある)、過去の例を見る感じでは、議会の中で何かあってから動議に至ってるように見えるな。議会の外でのことで懲罰食らってるのは、挙げた中じゃ猪木だけでは。
 北方領土での丸山穂高のあの暴言では、懲罰動議には持って行きづらいのかな。関係ないかな?

 それに、物事の悪質さがどれくらい重く判断されるかわからないけれど、除名までいくとは思いづらいかな。
 酒飲んで暴行事件起こした前例あり、議論を打ち切って議長に採決を求めるなんていう議会制民主主義を否定するような行為をしたこともある上で今度の事態だから、議員になるべき人物ではないとは私は思うけれど。

 しかしそれでも、簡単に懲罰動議起こしてすぐに議員をパージするような国会になったら、それこそヤバいようにも思う。1951年に川上貫一が除名されてるのは今の目じゃ異様に見えるし、異様に見えてるのが正常と思いたい。

 

辞職勧告決議について

 今回丸山穂高に出されようとしている辞職勧告決議は、これは別に何らかの強制力があるものではない。
 過去に可決された4例が4例とも、辞職拒否して居座った。
 しかも4例とも、犯罪で起訴・逮捕されてもなお辞職を拒否して、衆院解散までとか有罪が確定するまで議員として居座った。

 日本維新の会から放り出され、問題があると知れ渡った無所属の議員である丸山穂高にこれから何ができるか知らないし、果たして歳費を支払い続ける価値があるかわからないけれど、まあ、居座るつもりらしいし実際居座るんだと思う。

 しかしまあ実効性はないとはいえ、衆議院として、彼は日本で国会議員をやるにはふさわしくない、と突きつけておくのも必要なんかもしれないな。
 辞職勧告決議だけで事実上確実に辞職に追い込める、というのはそれはそれで憲法に触れるように思うし、やはり議会制民主主義としてやばい。
 けれども、何も言わんのも放置と同じことだから、次の選挙のためにも国会としてこんな奴はいらんと示してくれれば、選挙民としては汲む。