堺風の頭部

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丸山穂高の弁明書について

 私は、丸山穂高が初当選したときから直近の選挙まで、ずっと大阪19区に選挙権があった。だから、どうにも動向はチェックしておきたくなる。
 他所の議員さんだったら、どんなに酷くてもちょっと他人事になっちゃうんだけど。(国会議員なんだから、直接に投票したしないに関わらずしっかり動向を見つめるのが主権者としての責任だ、と正論をいわれると返す言葉もございません)

 

 丸山穂高衆議院に出した弁明書の全文を読んでみた(無料かつ記事が消えない産経で)のだけど、これ相当酷いよなあ。
 理がある反論とは思えなくて、むしろこんなもん寄越されたら衆議院の方は怒るだろう。

 

 

 あらかじめ私のバイアスを示しておくと、私は丸山穂高が問題のある議員だとも認識しているし、こんなの選出した選挙民であるのが恥ずかしいとも思う。
 辞めるというなら、そうすべきだと思うから一切止めない。不当に辞めさせられてるとも思えない。

 けれどもまあ、前に私が調べてみた限りだと、懲罰でもって除名し、国会議員の職を強制的に失わせるのは、ちょっとむずかしいと思えた。
 国会議員の除名なんていうのは、本当によほどのことがなければやるべきことではない、簡単に議員が除名される国会なんかそれこそ民主主義の危機だ、とも思う。

 

 しかしそれにしても、タチ悪い弁明書だと思うよ。ひどい。

 

 「これまでの議員辞職勧告決議案などの先例と比べてもそれ相当の刑事事件や違法行為があったわけではありません」なんていってる。
 確かに前例では、辞職勧告決議は、議員が刑事事件で逮捕・起訴された場合に提出されてはいる。
 けれど、刑事事件で有罪が確定しても、辞職勧告決議案が否決されることの方が多いくらいだ。刑事事件かどうかは辞職勧告決議の提出や成否と関係ない。

 弁明書の前半くらいは、あれこれいってるけど「これくらいの発言で辞職勧告決議をされた前例はない」という主張が主なものに見える。

 それをいっちゃ、まさに日本とロシアの国家間の領土問題がある土地へ、ビザなし交流団の一員という形で、国会議員の職にある者が行ってきて、交流団の団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成か」などと絡んで、「戦争はすべきでない」と返されたのを否定するように「戦争しないとどうしようもなくないですか」と言ってのけるような奴が空前だよ。
 これを憲法9条に反しないとしようと思ったら、「戦争しないとどうしようもないけど、戦争はできないから北方領土は諦めよう」という話にしかならん。勝手に問題解決手段を戦争に限定してるんだから。

 なんか「要件を満たさぬ本件」とまで書いてあって、なんで裁かれる側が勝手に要件を決めてるのか首をかしげる

 

 前半で、前例を元に自分は懲罰される要件を満たしていないと主張してるもんだから、後半なんかもう、衆議院に喧嘩売ってるような文言になってる。

 「国会自体がいわゆる「空気感」をもって、これまでの基準や先例を逸脱した曖昧さで有権者の付託を受けた議員の身分などに関する何かしらの処分や決議がなされる」って、国会側が「空気感」で「曖昧さで」処分や決議をしようとしてると勝手に決めてるんだからすごいわ。

 その後にも「国会は裁判所ではありませんし、ましてや人民法廷でもないはずです」なんて言ってるのもすごい。
 国会に裁判所を関わらせたら三権分立に反するんだから、国会が裁判所ではないのは当たり前だ。国会議員のことは国会で決めるために、議院に懲罰権があって最悪の場合は除名できるようになってるんだよ。

 人民法廷、つまり法に拠らない一方的な吊し上げだといいたいんだろうけど、そういうなってると思うなら、議院運営委員会に出てきて弁論して自分の正当性を主張すればいいことだよ。正当な主張ができれば同調する人もあるでしょうよ。


 まあ状況的にメンタルの調子を崩すのは無理もないとは思うから、適応障害で委員会に出られないというのが嘘だとはいわない。
 ただ、この弁明書は、落ち着いた判断ができる状態で書かれたものなのかな。
 国会は裁判所ではない、なんて、官僚から政治家になった人の発言とは思えない。その言い分は異常だということぐらい自分でわかると思う。
 精神状態が悪いままで書いたものなら、撤回して落ち着いてから書き直したほうがいいんじゃなかろうか。

 

 ただなあ。悪く考えることもできる。

 もう丸山穂高には国会に味方なんかいない。維新からもパージされた。野党からは当然袋叩き。
 自民党はまあ、自分とこに飛び火するのを恐れて渋ってたっぽいけど、「女を買いたいんだ」と暴れた件もバレたあたりで態度が変わった。
 最終的に、およそ辞職勧告決議案のような内容で、名前だけ糾弾決議案になって与野党共同提出になっちゃった。まー、もう否決されようもないよね。

 丸山穂高が今更国会に対して弁明しても、あんまり意味がない。
 じゃあ、この弁明書の目的は、国会の面々を説得するためではないのかもしれない。

 

 この決議案が可決されたところで、別に辞職させる強制力はないから、丸山穂高は議員の座に居座るわけでしょ。
 衆議院解散がありそうな気もするけど、なくても2021年には任期満了でまた選挙だ。

 それまでの間、次の選挙で当選できる可能性を少しでも上げるために、あらゆる手を尽くすでしょうよ。
 この弁明書も、国会を侮辱するような酷い内容だけれど、「衆議院の464人の議員を相手にたった独りで立ち向かってる」というイメージを選挙民に持たせるのが目的だとしたらどうだろう。
 無茶苦茶な内容でも強気強気でゴリ押ししてたら、その無茶苦茶さを批判する側が「あいつらは批判ばっかりしてる」とレッテル貼りを受けて、無茶苦茶が押し通されてしまうこともままある。というか維新の会がよくやる手口だわな。

 それに維新の会という政党は、あれだけ問題が知れ渡った後の長谷川豊にさえ公認出すような政党だ。
 次の選挙までに、なんとなく問題が忘れられてるような雰囲気、あるいは続けて問題視してる側が「いつまでもしつこい」といわれてるような雰囲気になってたらどうだろうね。
 また丸山穂高を擁立するってのも、十分ありえる。維新以外ならありえないけど維新ならある。選挙区には別の人を立てるみたいだけど、悪名も知名度と比例に出してくる線がありそう。

 

 どうもこの、丸山穂高の弁明書について報じるニュースの見出しが、「人民裁判的な決定と反発」とか「空気感で決定、憲法上の疑義」とかそういう抜き出しをしているのも気になる。
 ちゃんと読んだら、その抜き出した部分がまさに無茶苦茶いってる部分だとわかるけれど、見出ししか読まないと、あたかもその部分が一理ある反論かのように受け取られかねないぞ。
 こういう小さな積み重ねが、着々と丸山穂高復権の道を舗装していくのでしょう。私はそれはやらんほうがええと思うんやけどな。