堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

世界八大危険料理

www.youtube.com

 よく見てる野食ハンターのYoutubeチャンネルで、「世界八大危険料理」なる魅惑のフレーズが現れたので、それはなんだと検索してみた。

 そして「○大」の例に漏れず、諸説あるようだった。

 

諸説

大衆紙ザ・サン」の説

 とりあえずサンナクチのうぃきぺを見てみたところ、幼いテナガダコを活造りにしてごま油と塩とか酢入りのコチュジャンで食べるものらしい。
 タコなので切っても脚が動き続け、飲み込んだらが食道とかに吸盤が貼り付いて詰まり、そのまま窒息死する事故があるとのこと。

 で、そのうぃきぺのページでは、THE Sun紙が2012年に「世界の危険な食べ物8つ」という表題でサンナクチを紹介したらしい。それを紹介したKRNewsというサイトがあったらしいがリンク切れ。今はおそらく個人の韓流ファンサイトになっていて、かつてのKRNewsというのがどんなサイトかもわからなくなっている。
 さらにこの記述は、うぃきぺの他言語版(英韓中を見た)にも見当たらない。
 THE Sun紙のサイトを検索しても、2016年より前の記事は無いか、検索に出ない。

 もはや典拠不明になっちゃってるが、THE Sun紙の記事にあった世界八大危険料理は以下であるらしい。

 とのこと。

 

Canadian Institute of Food Safetyの説

 THE Sunに載ったらしい元ネタを探してみた過程で、他の記事が色々出てきた。日本では聞いたことがないけど、海外ではたまに出る与太話らしい。

www.foodsafety.ca

 カナダ食品安全研究所、というなにか大層な雰囲気の組織による記事があった。公的機関なんだろうか……?

 こちらによると、以下の8食品。

 けっこう違う。

 

KRISHI JAGRAN誌の場合

 インドの雑誌らしいKRISHI JAGRANというところのサイトに英語版があり、そこで世界八大危険料理が紹介されていた。

  • フグ
  • カース・マルツゥ
  • サンナクチ
  • アキーの実
  • キャッサバ
  • イグナック(コパルヒンともいうセイウチの発酵食品)
  • ハイガイ
  • センニンフグ

 

THE ECONOMIC TIMESの場合

 またインドだけれど、エコノミック・タイムズなる経済紙の暇つぶし記事として、「世界の命に関わるディナー:あなたの体を数分で破壊できる食材」なるネタがあった。これは八大ではなく十大。

 

カラパイアの紹介する説

 カラパイアがTHE RICHESTという海外サイトから翻訳して紹介した記事(元記事リンク切れ)によると、以下の説。これも10大。

 

ナゾロジーの紹介する説

 ナゾロジーがBRIGHT SIDEという海外サイトから翻訳して紹介する記事(元記事リンク切れ)。これも10大。

 

米国ニュースサイト「INSIDER」の説

 これは13大だった。多い。

  • さくらんぼの種を長く噛んでいてはいけない
  • フグ料理はアメリカでは禁止
  • カース・マルツゥ(蛆虫チーズ)は気の弱い人には向かない。胃の弱い人にも。
  • 信じられないかもしれないが、ホットドッグでも人は死ぬ
  • アルファルファの芽が育つのに適切な高湿度は、細菌が繁殖するにもぴったり。
  • サンナクチは食われた後に反撃する
  • 貝は海の危険なバクテリアを吸収している
  • 未殺菌チーズはアメリカでは禁止
  • あなたが思うよりベーグルというのはヤバいものだ
  • 緑色になったじゃがいもはたくさん食べると危険
  • 未熟なアキーの実を食べてしまうと、吐くか、最悪死ぬ
  • 生のアーモンドやカシューナッツはだめだめ
  • 生のインゲン豆は有毒物質を含む

 

集計

  1. 7票:アキー、サンナクチ、フグ
  2. 5票:キャッサバ
  3. 4票:赤貝(ハイガイ・サルボウガイ)
  4. 3票:カース・マルツゥ、ルバーブウシガエル
  5. 2票:ホットドッグ、ハカール、赤インゲン豆、センニンフグ
  6. 1票:その他

 今回の7つの記事すべてで挙げられてたのが、フグ・サンナクチ・アキー。
 世界8大、なんて数を増やすからブレてぼやけるのだ。日本・韓国・ジャマイカが世界三大危険食国、としよう。

 

それ何?

 フグとサンナクチは略。

アキー

 フルーツだけど甘くないので、タラと塩炒めにしたのがジャマイカで大人気の国民食らしい。
 原産は西アフリカだけど、現地では食べない。それどころか漁業用の毒薬に使ってるくらいに有毒だと知れ渡っているそう。

 未熟な実はヒポグリシンという有毒物質を含み、脂肪酸の分解が阻害されて低血糖になるとか。重症だと12~48時間で死亡する。これが風土病的にジャマイカ嘔吐病と呼ばれているとのこと。

 日本人のフグ、韓国人のサンナクチはあくまでたまに食べるものだけど、ジャマイカでは国民食。しかもよく中毒してるというのだから、世界一危険な食事をするのはジャマイカ人かもしれない。

 

キャッサバ

 タピオカの原料なので、周期的にタピオカが爆発的に流行る日本では、有毒植物だというのもわりと有名だろうと思う。

 リナマリンという青酸配糖体が含まれていて青酸中毒になる……かと思えば、別にちょっと食べたら即死というほどでもないみたい。中毒するまえに尿に出るから、急性の中毒で即死するとかではない。
 しかし、きちんと毒抜きされるまで調理できない環境でキャッサバ芋を食べ続けると神経に悪影響があるそうで、アフリカでコンゾとかマンタカッサと呼ばれる神経性の障害の原因になっている。

 

赤貝(Blood Clam、ハイガイ・サルボウガイなど)

 「赤貝」票とは別に、INSIDERの記事では貝類全般を挙げていたが、説明からすると特にハイガイのような貝の話っぽかった。

 ハイガイとサルボウガイは別の貝ではある。
 英語記事ではBlood Clamという名前で挙げられていて、これはヘモグロビンを含む体液を持ち、貝を割ったら赤い汁が出ることが由来。その特徴はハイガイもサルボウガイも同じなので、特にカラパイアだけ日本語でサルボウガイを挙げていたのはたまたまかと思う。
 でもって、他の二枚貝が避けるような、干潟の泥の中に埋もれて生活する。これが泥と一緒に肝炎やチフス赤痢などのウィルス・細菌を取り込んでしまう。加熱不十分だとあたる。

 

カース・マルツゥ

 こちらは3票。好事家に知られる、蛆を湧かせたチーズ。イタリアのサルデーニャ地方でつくられる。現地でもEUの規制で販売禁止のはずだけど、闇カース・マルツゥもあるとか。
 蛆を使うことで発酵と脂肪の分解が進むらしい。他にも蛆を使うチーズはたくさんあるとのことで、気候とかの事情でそれがよいところもあるんだろな。

 ただ、生きた蛆ごと食べてしまうので、その蛆が胃酸で死なずに人体に寄生した状態になっちゃったり、筋委縮症を起こした事例もあるとか。
 しかしなんか、それもそれで盛った話な気もする。傷口に蛆が入って、ならわかるんだけど、胃腸からそうなるかなあ。

 

ルバーブ

 これも3記事で挙げられている。

 西洋ではありふれた野菜で、普通は茎を食べる。ただ葉の方にはシュウ酸が多量に含まれるので、食べると痛い。まあ5kgくらい葉を食べたら死ぬらしいから、なかなかルバーブの葉で急性中毒するのは難しそうだけど。
 シュウ酸が多いと口に入れただけで痛くて腫れるとからしいけど、そういうレベルなのかな。それを5kg?

 とはいえ腎毒性などもあるそうで、昔からよく健康被害を起こすものらしい。
 また、シュウ酸を多く含む植物はけっこうよくあるんだけど、ルバーブの場合は見慣れた野菜で、それでいて茎はいいけど葉はNGというのが珍しくて、こういう記事に挙がるんだと思う。

 

ウシガエル

 日本でいうウシガエルは、戦後にアメリカへ輸出するつもりで持ち込んだアメリウシガエル。危険料理記事では、ウシガエルだけというのと、アフリカウシガエル(Giant Bullfrog)と明記してるのがあった。

 カラパイアの記事では、実際にアフリカウシガエルを食べる習慣があるナミビアで、腎不全を伴う食中毒があることと、その除毒法が紹介されている。
 しかしなんだかおまじないじみた話で、具体的にどういう毒があるのかとかは、私には調べきれなかった。

 

ホットドッグ

 ザ・サンとINSIDERの2誌で挙がった。

 早食い選手権とかやってるから喉に詰まって事故るのかな、と思ったけど、INSIDERの記事によると、3歳未満の子供が喉につまらせる事故が多いらしい。

 窒息なら日本にはモチがあるが、こちらはまだ世界の目が届いていないようだ。

 

ベーグル

 これもINSIDERの一票だけど、ホットドッグと同じようなネタかな、と思ったら、ベーグルを切ろうとして失敗して怪我をすることが多いと。なるほど……。
 でも、2011年にはベーグル切り損ね事故で救急救命室送りになった人が2000人いたと推定される、って、流石にそんなにあるかなあ。

 

ハカール

 アイスランドの発酵食品で、オンデンザメを発酵させて干して作る。

 韓国のホンオフェと近いところがあるみたい。
 サメやエイなどの軟骨魚類を使う発酵食品で、軟骨魚類は体に尿素などを浸透圧調整のために溜め込むから、それがアンモニアになってニオイや刺激が出てくる、と。
 アンモニア由来の刺激で粘膜がただれるとか、単純ににおいがきついとかはありそうだけど、よっぽど山ほど食わなきゃ死ぬものでもない気がする。

 

赤インゲン豆

 チリコンカーンとかで使うありふれた豆なんだけれど、フィトヘマグルチニンを特に多く含む。タンパク質だからしっかり加熱すれば毒性がなくなるんだけど、低温調理器とかで80度以下の加熱をしちゃうと逆に毒性が強まる。100℃で30分の加熱が推奨。
 生の豆だと4粒も食べてしまうとあたるとか。吐いて下して、4時間位で回復するとのこと。脱水とかで危なくなることはあるだろうから、大したことないとはいわないが、神経毒とか窒息とかのレベルではなさそう。

 特に赤インゲン豆が危ないけど、他のインゲン豆にも危ないのが多くて、日本では白いんげん豆食中毒事件というテレビの事故が起きている。

 

センニンフグ

 フグは大体危ない、というか日本人がトラフグとか食ってるのをやべえやべえといじってるのが今回の「世界○大危険料理」ネタだと思うのだけど、ジャパニーズ・フグとは別枠でことさらセンニンフグが挙げられている。

 日本では、サバフグ類ではシロサバフグがフグだけど無毒ということで食べられているんだけど、同じサバフグ類でもドクサバフグという身にまで毒があるやつもいるとのこと。
 センニンフグも同様に、身にまで毒がある。ただ日本ではあんまり揚がらなくて、まあ見た目も背中に斑点あるから間違えにくい感じ。毒は普通のテトロドトキシン

 インド洋や太平洋の熱帯地域に多くて、スエズ運河を経て地中海あたりにまで広まってるそう。今回これを挙げていたメディアがインドの2誌だったので、インドでは有名なやばい魚なんだろうと思う。

 

ティエットカン

 ベトナム料理で、どうも豚やカモ、アヒルなどの生の動物血液を使うらしい。

 英語版うぃきぺによると、新鮮な動物血液を魚醤と混ぜて固まらないようにしておき、鴨肉やナッツ、香辛料を煮る。肉を出して、煮汁に血液を入れると固まってくるので、それを素早く煮た鴨肉にかける。そして固まってプディングになったら完成、と。
 やはりこれだと加熱不足で、豚血液にいたレンサ球菌の感染で死亡例があるとのこと。危険性も現地ではわかってきて、今はあまり食べないとか

 

パンギューム

 プラナカン料理のAyam buak keluakというものでパンギュームの実を使うそう。

 このパンギュームの果肉や種子には青酸を含むので、一度茹でてから灰をかけてバナナの皮でくるんで土の中に40日埋める、という下準備をして毒抜きをするらしい。
 Ayam buak keluakにかぎらず他の料理にも使うものだそう。

 

 

わりと有名な有毒食品

 じゃがいもの緑のところはソラニンを含むので、特に小児は危険。

 アーモンドとかさくらんぼ等、サクラの近縁植物はアミグダリンを種子に含むので青酸中毒になりうる。日本だとビワやアンズ、ウメなども。

 ジンガサドクフウセンタケについてはヨーロッパでは有名な毒キノコらしいんだけど、そもそも食品なんだろうか。なんかよく食べるキノコと似てるのかな。

 脳みそ系はプリオンによるクロイツフェルト・ヤコブ病が怖いという話かと思う。