堺風の頭部

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タクマー200mmF3.5

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 たまに安く売ってるのを見かけると拾っていたタクマーレンズも、4本目になった。

 テレタクマー200mmF5,6スーパータクマー35mmF3.5スーパータクマー135mmF3.5に続いて、今度はタクマー200mmF3.5。
 写真の上がタクマー200mmF3.5、下がテレタクマー200mmF5.6。

 タクマー200mmF3.5は、レンズ構成4群4枚。最大径75mmに全長156mm。フィルター径φ67で重量900g。
 テレタクマー200mmF3.5は、レンズ構成5群5枚、最大径55mmで全長113mm、フィルター径49mmで重量370g。
 どちらも自動絞りに対応しない、M42マウントの第一世代タクマー。発売年ははっきりしないが、早ければ50年代後半、遅くとも60年代のうちだろう。

 

 

タクマー200mmF3.5について

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 さて、M42マウント初期のタクマーレンズは、大望遠が充実している。
 他社はまだまだレンジファインダーカメラを主力にしていた頃で、一眼レフだからこそのメリットを出して差別化するためにも、望遠レンズには訴求力あったんだろな。レンジファインダーでは大望遠レンズは難しい。

 そんな中でも、やっぱり200mmは売れ筋なんだろうか、F3.5とF5.6の二種類がある。
 もう一目でわかるくらいサイズ感が違う。重量なんか倍以上違う。
 多分まあ、高級・普及のクラス分けがあったのかな。

 200mmF5.6も絞り羽根が10枚あって円形絞りに近かったが、F3.5のほうは見ての通りで18枚もある。肉眼で見る限りは、どの絞り値でもほぼ円形を保つ。ぜいたく気分だ。

 

 タクマーレンズの200mmというと、後のスーパー/SMCタクマー200mmF4が断然ポピュラーに思う。かなりよく見かけるレンズだ。
 こちらは1/3段程度暗くしただけで550gまで軽量化し、ぐっと扱いやすくなった。

 しかし、ネットで見られる噂レベルでは、200mmF4は写りが若干悪くて、F3.5のほうが画質の評価は高かったとも。

 

 200mmF3.5をK-70につけてみると、さすが900g級でかなり重たい。
 たった4枚しかレンズ玉は入ってないはずなんだけど、テレフォト構成なら前玉は巨大になるだろうし、それが長く伸びた先にあるからすごい持ち重り。
 私はいつもリストストラップを使うけど、このレンズではネックストラップにすべきだなあ。

 

実写

 まあ、タクマーの場合は「なんで60年前のレンズがこんなによく写るんだ」という話になっちゃうのがいつものパターンだけど。

 

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 寄って撮影。絞り開放。
 最短撮影距離は2.5mもあるので、あまりマクロ撮影はできない。あじさいくらいならまあ、というところ。
 とはいえ200mmF3.5の明るさなら、開放近くではかなり大きくボケる。それに円形絞りだから多少絞っても光芒が六角形になったりもしない。

 

 例によって、今使っても十分、というレベルで写るなあ。

 初代タクマーレンズは、多くて6枚くらいしかレンズ玉がないシンプルな構成のものばかりだ。
 レンズコーティングの技術が低くて、構成枚数を増やすほどレンズ面での反射が増えて画質に悪影響を及ぼす。だからシンプルな構成にしかできない。
 その分、光はシンプルに通って素直に結像して、案外キリっと写る。抜けが良い、というらしいが、実のところ私はどういう写りが「抜けが良い」なのかわかってないのでその言葉は避ける。

 4群4枚は、タクマーの中でも少ない方。5枚のものが多くて、6枚もいくつか。3枚は2本(100mmF3.5、1000mmF8)だけ、2枚が1本(500mmF5)ある。

 

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 K-70でのピント合わせは、F8くらいまでならフォーカスエイドが働く。
 まあ、純正でDA55-300mmF4.5-6.3なんて暗いレンズが発売されてるんだし、F6.3で余裕でAFできるセンサーでなきゃ使えないわな。

 

 タクマーレンズの常で、実絞り測光の絞り優先AEで使用できる。
 ややアンダーに撮影されるとか、絞り開放だと大きくアンダーになりやすいとか、そのへんも他のタクマーレンズと同じように思えた。

 それから、なんとなくシャッターフィールが変わる気がする。
 K-70は、まあ普及期だから仕方ないけど、わりと作動音はガサツというか、ミラーがパコンと動きつつシャッターやら絞りやらがガシュっと賑やかに動く感じ。
 それが、200mmF3.5の重さと、あと絞りを作動させないせいか、音が上品になっていた。

 

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 飛行機が交錯するところに、さっとカメラを向けてみた。写したものを等倍切り出し。
 F8まで絞っていると、60年前のレンズとは思えないレベルで解像感がある。ちょっと像が波打ってるのは空気の揺らぎのせいだろうけど、それがわかるくらい写る。

 

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 遠くの吊り橋を撮影したカット。
 これは絞り開放だけど、若干周辺光量が落ちているのが見える。フルサイズのK-1で使うともっとはっきり落ちるだろうな。

 この中央部分の切り出しで、絞りごとの写りの差を見てみよう。

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 開放F3.5。2400万画素の等倍には若干足りないが、それでも古さを思えばかなり写ってるのでは。

 相手が直線的な無機物だから甘いのが目立つけれど、花とかならあまり目立たないと思う。
 ただし古いレンズの常で、オフフォーカスの部分に色ズレは出がち。多分軸上色収差はあるのかなと。

 また、開放でも周辺部の流れも少なく、かなり均一な写りをしているようだ。

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 ちょい絞ってF4。ほとんど変わらず。

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 一段絞ってF5.6。
 ファインシャープネスがかかってるせいはあるけど、一気にキリっとしたな。

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 F8で、柱を繋いでいる梁の上についてる手すりの骨まで解像している。
 ちょっとファインシャープネスが効き過ぎてる感じもあるが、まあ60年前のレンズにこれだけ解像感出せる画像処理も面白いものだ。

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 F11。まあF8と大差ないか。

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 F16。ちょっと小絞りボケが出てるかな。

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 F22。小絞りボケでまた手すりがぼやけてしまった。

 

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 四隅でもあまり画質低下はないが、開放の右下がこれくらい。
 やや甘いっちゃ甘いけど、問題になるレベルには見えない。開放だと中央でもこれくらいだ。

 

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 中央がシャープになるF8だと、隅っこまで空気の揺らぎが写るレベルになる。

 

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 強いていえば、多分軸上色収差と思うけど、ピントが外れたところの色ズレは出やすいみたい。ここまでは仕方ないだろう。

 

 まあ、タクマー使うたびに同じこといってるけど、60年後の2400万画素デジカメで使用に耐えるような写りしてたら、当時文句出るわけもなかろうと思う。

 しかし900gもある鈍器みたいなレンズを抱えていくのも大変だなあ。
 大型のグリップがついたK-70ならともかく、フィルム時代のボディはもっと小さかったから、ホールディングも辛かったはず。

 ネットで検索したところ、当時はレンズに三脚座がついてたようだ。
 今なら当たり前の200mmも、当時は堂々たる大望遠だったんだろうな。

 

 後継のスーパータクマー200mmF4は、このタクマー200mmF3.5に比べて、重量が900gから550gまで大幅に軽量になり、寸法も一回り小さくなる。
 しかし、画質に関しては一枚落ちるものだった、という話もある。
 普通に考えれば、似たような焦点距離と開放F値で小型化すれば、画質は厳しくなるはずで、それが気にする人には気になるくらいの差があったのかもしれないなあ。

 私がスーパータクマー200mmF4を入手して比べればわかるんだけど、200mmの3本目をまだ増やしてしまうのか……?
 まあ安く売ってたら考える。