前のスーパータクマー35mmF3.5の随分な写りに触発されて、また古いタクマーレンズを買ってきた。
今回はスーパータクマー135mmF3.5。900円なり。大阪駅前第二ビルのレンタルボックスCabinにて。
写真じゃよくわからないが、前玉の周辺部にカビが見える。裏側っぽくて手が出ない。まあ、こんなもんだと別に写りにはほとんど影響なかろう。
タクマー135mmF3.5のバリエーション
中村文夫「使うペンタックス」によると、タクマーの135mmF3.5はいくつか種類があるようだ。
- 最初期のM37マウント: 4群5枚、50×87mm(最大径×全長)、400g、最短1.8m、最小絞りF16、プリセット絞り
- M42マウント初代: 4群5枚、56×86mm、300g、最短1.8m、最小絞りF22、プリセット絞り
- オートタクマー: 4群5枚、57×86mm、310g、最短2m、最小絞りF22、半自動絞り
- スーパー/SMCタクマー前期: 4群5枚、58×86mm、343g、最短1.5m、最小絞りF22、自動絞り
- スーパー/SMCタクマー後期: 4群4枚、最小絞りF16 (その他不詳)
M37時代から、M42になって急に100gも軽くなっているから、これはレンズ構成が違いそうに思う。
それから前期スーパータクマーまでは、重量から見ると同じようなものに見えるが、最短撮影距離がいちいち異なる。
後期スーパータクマーになると、4群4枚とのことなので、別構成のレンズなんだろう。
手元のやつはF22まで絞れるから、前期スーパータクマーのになる。一番寄れるやつだからちょっと使いやすいかな。
こちらのサイトに後期型4群4枚の構成図がある。
多分前期型も、これの後玉が貼り合わせになった程度の違いの、エルノスター型じゃないかな。
「使うペンタックス」の記述だと、4群5枚の前期型・4群4枚の後期型それぞれにスーパータクマーとSMCタクマーがあるように見える。
135mmF3.5は、今でいうダブルズームキットの望遠側みたいな感じで、60年代に標準レンズ(55mmF1.8)の次の一本というポジションで安く売られたものらしい。
そういう値段が重要なレンズだとすれば、SMCタクマーが出た後にも安くスーパータクマーがキットレンズ的に売られていたとか、後期型で4群4枚になるのは貼り合わせを避けてコストを下げたのでは、とか、いくつか想像が膨らむ。想像だけど。
実写
さて、外に持ち出してみた。
一応気休めに、前回も35mmにつけたフードを付けておいた。50mmF1.4・55mmF1.8/2用のねじ込み円筒フード。
ボディがK-70なので、135mmなら換算200mm相当くらいになる。
この画角が好きになれそうなら、DA☆50-135mmを買うことを考えてみようかな。
まず35mmのときと同様に、絞りによってどれくらい写りが変わるかを見て見るべく、まず観覧車を撮影して同じようなところを等倍に切り出してみた。
F3.5開放。少しほわっとしてはいるが、でもこういう固い被写体でなければ十分行けるレベルじゃないかな。ポートレートなんかこの程度にソフトさある方がいいかも。
画角がぜんぜん違うものを単純比較しても仕方ないが、開放の画質だとスーパータクマー35mmF3.5よりこちらのほうがずっといいようだ。
F4.0。まあ1/3段絞るだけじゃ大差ないが、ややしゃきっとした?
F5.6。ほぼバッチリ。
F8.0。実にしゃきっとした。
これ以上絞ると小絞りボケが出てくるが、F22でも十分いける画質だった。
35mmF3.5も、「F5.6に絞ればAPS-C 2400万画素センサーで等倍で見られる」と驚いてたけど、この135mmF3.5なんか開放でもいけるくらいだぞ。
昔はペンタックスがよく売れたというけど、ニコンよりずっと安いから数が売れた、というだけではなかったんだろうな。
以下、特にことわりがなければF5.6で撮影している。
APS-Cなので周辺切れているから目立たない面もあるが、歪曲収差もほとんど見られない。
等倍で見ると、ビルと空の境目にちょっとブルーフリンジが見えるかな。
フリンジはテレタクマー200mmF5.6でも見られたから、望遠レンズは出やすいのだろうか。
ちょっとミスって、ベンチにピント合わせたつもりが手前になっちゃっていた。4本目のライトあたりに合ってるかな。
ブルーフリンジはこっちのほうがはっきりわかるな。アウトフォーカスのところで出てる。
しかし最短撮影距離が1.5mというのが半端なもんで、ちょうど足元がギリギリ撮れない。
もうちょっとだけ寄れると嬉しいが、これでもAPS-Cで使ってるから倍率は1.5倍くらいになってんのよね。
大きく表示するとわかりにくくなるが、サムネイルサイズに小さくすると、開放なら周辺光量落ちがあるのがわかる。特に気になるほどのもんではないように思うが。
わりとすぐ逃げるスズメには、これくらいの距離が精一杯。200mmならこの1.5倍、300mmなら2倍強ほど寄れるか。
35mmでは極端にホワイトバランスが転ぶカットが時々あったが、135mmでは特にそれはなかった。しかし全体的にちょっと青っぽくなる気はする。(コーティングの反射は青いんだけど、反射が青いなら写りは黄色いはずだよな)
自動露出任せだと、わりとアンダーめになりがちかな。
開放でボケみのチェック。
強いコントラスト差があるとブルーフリンジが出ちゃう難はあるけれど、ボケ自体は実にスムーズな感じだ。
これはF4.0と思う。わずかに絞った。
絞り羽根は6枚と少ないけど、上手く羽根にアールをつけてあって、F6.3くらいまではかなり丸みを保った絞りになっている。
(逆に絞りが浅いとかなりややこしい形の絞りになっちゃうので、写りに影響するかと思ったんだけど、特に心配ないようだ)
F8に絞ったカット。
一応六角形なのはわかるけど、光芒に縁取りが出ないので、悪目立ちしてこない。
ただ、近接撮影するとちょっと写りが悪化するようにも見えるな。
単にMFが下手だとか、風の強い日だったから被写体ブレしてるとか、その辺が原因かもしれないが。
実写はこれくらい。
50年も前の廉価モデルのレンズだけれど、いい条件にピタっとハマったら、今日日の廉価ズームレンズよりよく写るなあ。
しかし合わない条件になると、ブルーフリンジやら弱点が目立ったりもする。現代のデジタル用レンズの方が、弱点が出てだめになっちゃう条件は少なそうに思う。
このレンズで撮るべきベストなシチュエーションをしっかり捉えられれば、これを使いこなしてると言えるようになるんだろな。