ついったーでこんなタグがトレンドに上がっていた。
ちらほら懐かしいネタも見えて面白い。初代スト2の真空投げとか。
まあ、私が格闘ゲームから脱落したのが96年くらいだし、90年代でもNEOGEO系のゲームはどうも手に合わないからあまりやらなかったんで、わからんのが大半だけれど。
私が好きな調整ミスは、なんだろう。
90年代の格闘ゲームって、黎明期でもあるから、今の視点だと「ミスがある」というより「全体的に無茶苦茶」という感じだろうとは思う。
でもその頃は、そういうのがあれば、禁じ手になった。
初代スト2の投げハメ以来、あからさまに一方的な結果に簡単に持っていけるやり方は、ゲームに存在しても対戦で使わない。暗黙のルールが成立していたように思う。
90年代の対戦模様
今の格闘ゲームは、ネット対戦で日本中の誰と当たるともわからないような仕様だったりする。昔そういうのを夢見たもんだけど、実現しちゃって。
だから、システムとしてきっちり調整され、安易な手口の繰り返しで勝てるようなものは対戦ツールとして不公正だから、非難されるんだろう。
しかし90年代だと、あくまで同じ店の、向かい側の台に座った客としか対戦できない。
その上、ゲームセンターが今とは比べ物にならないくらい多かった。
大阪市から南に30キロ以上離れた、各駅停車しか止まらない駅の前にゲームセンターが平気であるくらい。なかったら作られた。
スーパーマーケットのゲームコーナーなども、今みたいにプリクラとUFOキャッチャーで埋まっていなくて、ぎっしりと格闘ゲームのアップライト筐体が並べられていた。
駄菓子屋の店先にまで、NEOGEOの台が置かれている。
近くに住む10代20代と、近くにある小中高校の生徒がこぞって集まっていたから、そんなに多数の、個人経営の小さなゲーセンが十分成り立っていた。
そうすると、店にいるのは大体同じ顔ぶれ。
だからローカルルールが成立する。
別に店側から明文化して掲示されるなんてこともなく、誰が言い出すというほどでもなく、暗黙の了解として「スト2の投げハメは禁止」と共有されていた。
だって近所の子とか同級生がみんないるんだから、ゲーセンで嫌われたらダイレクトに人間関係に響くんだもん。
まあ、お互い数百円の小遣いを大事に遊んでる身で、小足払いと投げを繰り返すだけで何もせずに終わらせる、というのは酷いかなー、という感覚もあった。
ムラ社会の倫理といったらそうなんだけど。
あくまで人間関係依存のローカルルールだったから、もっと都心の、そこらじゅうからいろいろな人がくるゲーセンで対戦するなら、また違ったのかもしれない。
しかし私は田舎の中高生、都心に出るための交通費で10回以上遊べるんだから、ゲームのために遠征するような感覚はなかった。
消えていったローカルルール
でもこの牧歌的な、あるいはムラ社会の秩序がある感じ、いつごろから崩れていったのかな。
全国を相手に通信対戦ができるようになるより前だった気がするんだけれど。
高校の時、私が「ストリートファイターZERO(95年)」をダンでやってたら、同級生に乱入された。
ちょっとゲーム内容の話になるけど、初代ZEROのダンって、断空脚だけは強かった。飛距離も長いし判定も強い、足払い飛び越えるし、ガード後は五分だから暴れると晃龍拳(初代ZEROでは無敵があった)で潰せた。
ただまあ、ガード後に投げで反撃が確定するから、知ってればそれだけのことだった。
しかしその同級生が投げで返すことを思いつかないもんで、通常技で割り込もうとして晃龍拳を喰らい、無敵技で割り込むのを読まれてガードされ、ガードし続けたらさらに断空脚が飛んでくるか投げられる、と、一方的になった。
実際、断空脚を確定の投げ返し以外で対応するのは難しい。
それでちょっとケンカになった。
妙に具体的に覚えてるのは、私は格闘ゲーム弱かったから、勝って文句いわれたのってそれが最初で最後だったの。
ともあれこれって、「投げで返せる」と知っているか知らないか、そういう情報格差ができてたケースかな、と思う。
私は弱いけど情報収集は好きだったから、ゲーメストは読むし、やるゲームを扱う増刊号があればそれも買う。ネットはほとんど普及してなかったけど、私はもう見てたっけな。
しかしその同級生はそういうタイプじゃなかったと思うし、あのゲームをわざわざ弱キャラであるダンでやってる奴はめったにいないから、実地で知る機会もなかった。
それで、私は「確反の投げもやらずにボケっと固まってるから悪い。ダンで他に何しろっていうんだ」と思うし、同級生は「強い技ばっかり振り回すだけで汚い」と思ったんだろう。
何を禁じ手にするかの線引きが、かつてはみんな同じくらいになってたのに、だんだん情報格差ができてズレてきた。
これは私が高校生になっていて、雑誌や攻略本など、小さい頃より情報を集める手段も増え、それを買う余裕もできたりとかで、やる気の多寡がそのまま情報格差へと反映されやすくなったのかもしれない。ゲーム内容も少しずつ複雑になっていったから、情報の価値も膨らんだ。
また、初代スト2を囲んでいた小学校高学年の頃は腕に大差がなくても、そこから5年以上、小差も大差になっただろう。格ゲー慣れというか、そういう感覚的な差が広がっていた。
色々理由はあるだろうけど、みんなが自然と禁じ手を共有する、という状態は、ほころびはじめていたのかと思う。
ストZEROでは勝った側になっちゃった私だけど、翌年の「X-MEN VS. STREET FIGHTER」では負ける側だった。
あんまり酷かったから、このゲームをきっかけに2D格闘ゲームやらなくなっちゃって。
リュウが前中キック→中足払い→前中キック……のループではめ殺せる、という酷い永久パターンがあったからなあ。対戦で勝ってもすぐリュウが出てきて酷いパターンで負けにされる。
初代スト2の投げハメは自然と禁じ手になってたけど、X-MEN vs SFのこの酷い永パは、なぜかそうならなかった。
負けた腹いせに平然と出してくるのが当たり前。あまりにも乱用されてケンカにもなり、雰囲気が悪くなってこのゲームを誰もやらなくなる、という感じになった。
なぜこのゲームだけあんなにひどくなったのか、ちょっとよくわからない。
強すぎるキャラは禁じ手になる、というのが、それ以前の通常のパターンだったと思う。
それにこの頃の格闘ゲームって、特殊なコマンドを入力すると隠しキャラが使えて、そのキャラはかなり強い設定にされている、というのがよくあった。スーパーストリートファイターIIX以来、豪鬼なんていつも居た。
豪鬼はまだ抵抗のしようもあったけど、「私立ジャスティス学園」の隠しキャラなんて、「刀を使うから通常技がガード不能」なんて心底ふざけた性能で、出されるとほんとにどうにもならない。
だから、極端に強いキャラが混じってるのは当たり前だった。しかし自然と禁じ手にされ、それでも使うなら、同じゲーセンに通う同じ学校の連中からのムラハチを受けることになった。
なぜ、X-MEN vs. SFだけ「リュウは禁止、卑怯」という話にならなかったのか。よくわからない。
まああのゲームは全面的に杜撰だったから、リュウだけ禁止したところで別の問題が出ただろうし、やる方もハメ殺し合うゲームだと思ってやってた気はするけど。
紳士協定が機能してない、悪意を叩きつけ合うような状況に遭遇しちゃって、私は格闘ゲームやるのが嫌になっちゃったのよね。
まあ、スト2が91年に出てから、ブームも何年も続いている。
私は95年ごろでもまだ、格闘ゲーマーの側に居続けた。友人らより腕は落ちるけど、それでも、平均的なカジュアルプレイヤーよりは熱心な側にいたんだと思う。
しかし、格闘ゲーマーはより強く、勝ちを追う方に向かう。紳士協定なんてヌルいものは否定されていく。競技のようなものだから当たり前かもしれない。
そして、カジュアルゲーマーはそのガチな空気に気圧されて離れていく。そういう純化は少しずつ進んでいたはず。
95年のストZEROとか「ヴァンパイアハンター」あたりまではなんとか格闘ゲーマーの一番下くらいに引っかかっていた私が、96年のX-MEN VS. SFでは脱落した、という話かもしれない。
結局は、「ハメ禁止!」といいながら、身近な相手とヌルく遊ぶ程度のプレイヤーでしかなかったわけだ。別にそれが悪いとも思わんけど。
これより後の格闘ゲームは、私はよく知らない。あんまりやってない。
今の格闘ゲーマーは、調整ミスがあるというのは「対戦ツールとしての欠陥」だと捉えるんだろうけど、私の頃は、「そういう調整ミスを乱用するやつに人間として欠陥がある」くらいの扱いだった。
だから、私が格ゲーの欠陥について一番印象に残ってるのは、ストII系なら必ず豪鬼、ジャスティス学園でも平気で雹を出す、プチカラットでさえわざわざ乱入してきてパーズしか使わない、という身内で卑しく勝ちを拾いにくる同級生のことになっちゃうな。あいつゲーム以外でも性格腐ってて、結局絶縁してしまった。
記憶にある昔のゲームの調整ミス
覚えてるまま書き出してみよう。
- ストリートファイターII
投げハメ(技をガードさせた後に一方的に投げられるタイミングがある)
リュウ・ケンの小足払い、ガイルの立ち小パンチだけで即死コンボ(ピヨり→ピヨりで終わる)
波動拳で飛ばせて昇龍拳で落とすリュウ・ケンを止めるのが困難(当時の子供は昇龍拳を失敗するからなんとかなった)
真空投げ(バグ技。ゲーム自体がフリーズしたりするらしい。ただし私はいまだにやり方を知らない) - 餓狼伝説
起き上がる瞬間にガードできない(あまり対戦は遊ばれないゲームだったので、もっぱらCOMを残影拳でハメ殺すのに利用された) - ストリートファイターII'
サイコ投げ(ベガでサイコクラッシャーをガードさせた後に投げる連携が脱出困難)
ダブルニーハメ(ベガでダブルニープレス→しゃがみ中パンチ→立ち中キック→ダブルニープレスのループが脱出困難)
バイソンがサガットに勝てない(上タイガーショットがバイソンのみしゃがんでいてもガードさせられるため、動けなくなる) - 餓狼伝説スペシャル
クラウザーに対するライン移動逃げ(クラウザーのライン移動攻撃がしゃがんでいる相手に当たらず、容易に潰せる) - スーパーファミコン版餓狼伝説スペシャル
Aボタンを長押しして離すと必殺技が出る、という初心者救済システムらしいやつ(山田十兵衛で大イズナ落としが間合い・状態を問わず出る) - バーチャファイター
パイがしゃがんでいる相手への有効な攻撃手段を持たない(↘Kのミドルキックはあるが、当てた後に反撃が確定する戻りの遅さだった)
雑だな昔のゲーム。
「まともな対戦が成立するとはいい難いからもっぱらCOM戦が遊ばれていた」というゲームも結構あった。ワールドヒーローズとか龍虎の拳とか。
でも、それはそれで楽しく遊んでたからな。ワーヒー今でも好きだよ。