堺風の頭部

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FA J75-300mmF4.5-5.8ALと天王寺動物園

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 さて、先日安く手に入れてある望遠レンズ、実写してきた。

 しかしこのFA Jというシリーズについて少しぐぐってたら、色々思うことが出てきたので、メモ書き的に書き記しておく。いいからはよ写真見せろという場合はすっ飛ばしてほしい。

 

FA Jシリーズ

 FA Jというシリーズは、PENTAXのフィルム一眼レフ最終モデル *ist 向けに作られたものだった。
 しかし当の*istがデジタル化の波に流されて一代で終わってしまったから、FA Jもわずか3本のズームが出ただけに終わった。

  特徴として、レンズに絞り環がない。
 これ以前のPENTAXはレンズは絞り環で絞りを操作していたが、*istからそれはボディ側で操作するようになったため、レンズ側は省略された。
 よって、FA Jレンズを*istより前のボディで使うと、絞りの手動操作ができない。PやTvは使えるが、AvとMができない。
 *istの絞りボディ側操作設計は、デジタル一眼の方にも引き継がれたから、FA Jレンズをデジタルで使う分には問題はない。

 3本出たレンズのうち、超広角ズームのFA J18-35mmF4-5.6ALは、APS-Cセンサーの*ist Dでも28-50mmくらいで使えるから、標準ズームとしてしばらく売られていた覚えがある。
 FA J75-300mmも、デジタル専用望遠ズームであるDA50-200mmが出たのが3世代目の*ist DS2の頃まで遅れたので、それまでは最新望遠ズームとして売られ続けた。
 FA Jの中では、FA J28-80mmF3.5-5.6ALが一番不遇だったかもしれないな。そういえば、これの中古はあまり見かけない気がする。あっても要らないからスルーしてたかもだけど。

 

ペンタックスAF300mmズーム

 PENTAXのAFレンズで、300mm級の廉価クラスの望遠ズームは、以下のような製品がある。(中村文夫「使うペンタックス」とリコーイメージング公式サイトより)

  • '91 FA100-300mmF4.5-5.6 - 8群12枚 最短1.5m 605g
  • '95 F100-300mmF4.5-5.6 - 8群12枚 最短1.5m 605g
  • '97 FA80-320mmF4.5-5.6 - 10群13枚 最短1.5m 550g
  • '00 FA100-300mmF4.7-5.8 - 9群11枚 最短1.5m 390g
  • '03 FAJ75-300mmF4.5-5.8 - 10群12枚 最短1.3m 385g
  • '08 DA55-300mmF4-5.6 - 8群12枚 最短1.4m 446g
  • '16 DA55-300mmF4.5-6.3 - 11群14枚 0.95m 442g

 前の記事では、ミノルタの75-300mmが94年から同じ光学系で12年まで売られ続けたことを知ったのだが、逆にPENTAXのこのクラスはやけにモデルチェンジが多い。

 ちなみに200mm級望遠ズームも多数ある。

  • '87 F70-210mmF4-5.6 - 9群13枚 最短1.1m 555g
  • '89 F70-200mmF4-5.6 - 8群10枚 最短1.1m 540g
  • '93 F80-200mmF4.7-5.6 - 7群11枚 最短1.1m 295g
  • '99 FA80-200mmF4.7-5.6 - 7群11枚 最短1.1m 270g
  • '05 DA50-200mmF4-5.6 - 10群11枚 最短1.1m 285g

 PENTAXのAFボディは、当初大きめのSFXシリーズから始まって、次のZシリーズからローエンド機を中心に小型軽量ボディが出てきて、MZシリーズでまるごと軽量路線になる。
 MZシリーズ開始が95年だから、その頃にレンズも軽量化する要請があったっぽい。その結果が、このとりとめなきズームレンズ乱発かな。

 

 今回のFA J75-300mmは、300mm級望遠ズームとしては最軽量のものだった。
 ただ、DA50-200mmが持った感じも非常に軽快なのと比べると、FA J75-300mmは結構長さがあって重心もボディから遠くなる。よって、それほど軽快感はなかった。

 どちらかというと、最短撮影距離がちょっと短いから、近すぎて写せないことが少ないことを期待していた。それは実際そうだった。

 

FA J75-300mm実写 

 さて、前フリが長かったが、天王寺動物園に持ち出してみた。

 FA Jなら一応デジタル世代に近いレンズだから、レンズ補正用のデータくらい持ってるかな……と思ったけど、意外と持っていなかった。
 以下、JPEG撮って出しで、いずれも周辺光量・歪曲ともに補正はされていない。

 それから今回はフードなし。PH-RBF58が品番だが、何分マイナーレンズの専用品、なかなか見つけるのは難しいか。

 

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 広角端、開放で。おや意外とソツがない写り。周辺減光も感じない。
 非球面レンズがこういう廉価レンズにも使えるようになってる世代だから、その効果かもしれないなあ。

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 しかし残念ながら、中央近くのこの位置でもこの程度の解像力だった。

 もちろん15年くらい前のレンズで、2400万画素のAPS-Cセンサーで開放からカリカリに写れというのは無茶な話。

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 F8まで絞ったらこんなによく写ってる。1500円で買った15年前の廉価レンズに、この写りで文句いっちゃいけないや。

 

 ではテレ端はというと。まず開放から。

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 やっぱり縮小して見る分には問題ない……といいたいけど、1024x683まで縮小しても、ちょっとあらが見えるな。

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 う、うーん、これはかなり甘い……

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 F8でもまだまだ収差が残る。
 いやまあ、2400万画素のピクセル等倍に耐えろという要求が間違ってはいるんだけど。

 8月の晴れた日でも、300mmでF8まで絞ると、シャッタースピード維持のために感度が上げられがち。これ以上絞るのもちょっと嫌だな。どうしたもんか。

 

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 近めの距離だとある程度写りはマシになるのが常だけど、正直テレ端は近めでもイマイチかなあ。
 また、どう見てもボケのきれいなレンズではない。

 それから、レンズ自体は軽量とはいえ、かなり鏡筒が長く、重心もかなり前に寄ってしまう。
 私は左手をボディ下あたりに添えてしまう(絞り環がレンズ付け根にあった頃からの癖っぽい)が、このレンズならしっかりズームリングを掴むようにしたほうがブレが抑えられる。

 

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 F9.0で撮って、どうも眠い。もしかして手ブレしてるかな、1/400秒だけどマレーグマがずっと歩いてるし、と思い、開放にすると。

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 ほとんど変わらんか、もっと甘くなってしまった。
 2400万画素どころか、600万画素でもアラが見えそうな……

 

 しかしまあ、文句ばっかりいってもしかたない。

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 ライカ判換算450mm、今まで使っていたDA50-200mmよりさらに1.5倍も望遠になる。
 かなり遠いと思った被写体も、ぐっと引き寄せられる。

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 このカットは200mm(換算300mm)。200mmなら、縮小するとアラが見えない程度にはなるかな。等倍だとまだ甘いところ多いけど。

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 これも200mm。まあまあ問題ない。

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 広角端でF6.3。よく写ってるといえるレベル。
 さすがにこうもクソ暑い日には、いろんな動物が日陰か水につかってぐったりしていることが多かった。

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 テレ端F6.3。

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 アシカなんかもう泳ぐのもめんどくさいわといわんばかりの。
 これもテレ端F6.3。どうも毛がある動物はいっぺんに悪さを感じる写りになっちゃうな。

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 なぜかずっとこの角度で硬直していたアシカ。

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 チンパンジーは日陰で仲良さそうだった。

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 爬虫類館アイファーに入って、ホウシャガメの食事。
 室内展示になると撮影距離が近くなって、望遠の長さと最短撮影距離の短さを活かせばかなりアップが撮れる。
 やっぱり近接のほうが描写も良くなる感じで、こういうのが向いた使い方かも。

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 ヨウスコウワニ。120mmでF4.5。爬虫類は羽毛がないからアラが目立ちにくい。

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 また、暗いところでISO20000にもなっちゃうと、増感で荒れるからレンズの甘さは気になりにくい。

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 このミズオオトカゲは、なぜかこっちを見てずんずん歩み寄ってきて、木に後ろ足だけ引っ掛けてガラスに飛びついて手をつき、ガラスをぐいぐい押しまくった末に滑って落下した。そんなに私が気に食わなかったのだろうか。(もちろんフラッシュとかAF補助光とかは切ってある)

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 ピントリングの可動幅がかなり大きく、当然レンズ内モーターでもないから、AFが速いレンズではない。
 けれどまあ、ボディがK-70ほど新しくなると、モーターが強力だから力技でぎゅんぎゅん合わせに行ってくれるので、水中の意外と速いカメもなんとか追いきれる。
 ただ動作音はギュアーギュアーと盛大。ちょっと気が引けるレベルでうるさい。

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 カバに魚が群がっていた。表面の虫でも食べてるんだろうか。

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 レッサーパンダのやる気ないこと。
 コアラが収束に向かい、さほどペンギンに力をいれてない天王寺動物園において、これからアイドルの座を担う立場なのだが。

 

まとめ

 300mmズームとしては軽量で持ち出しやすい、とはいえ、300mmでの描写がかなり厳しいことがわかってしまった。
 やっぱりフィルム用の廉価レンズだと、サービス版に同時プリントして十分な写りをしていればよし、くらいで作ってそうだし。それくらいのものかもしれない。
 デジタル補正なしでこれくらい写ってるならよしとしないと。

 今回は歪曲収差が気になるような被写体はなかった。
 広角~標準だと、お寺や神社のお堂とかスナップすることがよくあるから目立つけど、望遠レンズだと私は花とか動物中心になるからな。問題があってもうちでは目立つ機会もないかも。

 

 愛用のDA50-200mmに対し、テレ端300mmの効果はというと。
 天王寺動物園では、200mmだと動物の上半身くらいが精一杯なことが多いけど、300mmだと顔アップが撮れる、というような違いはあった。
 しかし、絶対に300mmの方が面白い、と感じるほどではなかったかな。

 ましてこのテレ端の写りの悪さを考えると、「写りが悪かろうがなんだろうがとにかく少しでも長い望遠がほしい」という局面でしか、DA50-200mmに対して利点がでてこないな。そんなシーンあるだろうか……

 

 まあ、1500円だから文句もないし、何かのときのためにしばらくレンズ庫に眠っていてもらおう。