選挙シーズンだけれど、赤松健が出ている。
けっこう反応に困っている。
私だってオタクだからな。赤松健といわれると、ちょっと無視し難い人ではある。
ただでも、私自身がその類だと思っている「オタク」と、「オタクなら赤松先生に投票しよう!」という言葉の中で指してる「オタク」と、多分だいぶ違う。
「いい年して結婚もせずに趣味ばかり」といわれようとも気にせず、「年齢なりの普通の趣味」といって押し付けられるものでも興味なければ突っぱねて生きてる者をオタクと呼ぶなら、私はそうなんだけどな。
「男性なら・女性なら」「10代なら、40代なら」「日本人なら」「○○好きなら」などの「知らんがな」と蹴っ飛ばしてる数々のアタリマエのひとつに、「オタクなら」も入ってる。
自分は男性だと思っていても、「男ならこうしろ」と言われて気に食わないこともあるでしょ。それとおんなじ。
とはいえ、世のオタクが私みたいなタイプのオタクばっかりであれば、山田太郎が54万票も取ったりせんだろうと思うから、私みたいなのはオタクではないのかもしれん。
赤松健も、漫画家ロビイストとしての活動や、漫画村対応とかは、大した仕事をしてきたと思う。
しかし、山田太郎に引っ張り上げられて自民からの出馬で、出馬を決めてからのレドマツ漫画やら諸々の有様を見ると、称賛できるところがかなり減殺されてしまう。
後ろについてる山田太郎について
山田太郎は、以前は自分が唱えるワン・イシューを実現するために良い仕事をしてる議員だったんだけどな。
自民党に入ってからは、なんとも評価し難くなってしまった。
まあ、新党改革からの出馬になってしまって、29万票取っても議席は貰えなかったという経験は、議員バッジに固執するトラウマを持ったとしても、わかる気はする。自民党の比例でそれだけ取れれば、議員の身分は安泰だろう。
自民党の中での動きって、国会での討論なんかと違って、表に出ないことでしょ。
例えばスクリーンショット違法化のときに口挟んで止めさせた、という話もあるけど、肝心なところは内々の話。
あのときに何らかの行動をしたこと自体は嘘ではないと思うけれど、表に出ない話だから、彼が「こうやった」というアピールの裏が取りにくい。どれだけのことをして、どれほどの効果が出たのか情報がわからない。
かつて著書の『「表現の自由」の守り方』を読んだとき、野党議員(当時みんなの党)としてよく仕事してるなあと感心させられたものだった。よい野党議員の仕事ぶりを書いた本だと思う。
なんだけど、あの本で「山田太郎独自のゲリラ戦術」と他に誰もやってないかのように語っていたやり方は、ちゃんと仕事する野党議員はみんなやってることだと後に知っちゃったのよね。
やったことについて嘘はいわないだろうと思う程度には信用してるけど、やったことの効果については過大に言ってるんじゃないか、という疑いもまた持ってる。
スクリーンショット違法化あたりは、もともとコンテンツ産業の違法コピー対策の法整備の中での話で、自民党がそんなに強くこだわる話でもないだろうから、まあ、山田太郎が言えば動かせたというのも、わからんではない。
ただまあ、自民党の上層部が絶対に譲らんような話ってあるでしょ。
あの次期総理候補とまでいわれた稲田朋美が、選択的夫婦別姓に賛意を示した途端に党内の立場が転落したみたいなやつ。
山田太郎が最終的にやりたいことのはず、主張どおりならそこにいくはずの刑法175条(わいせつ物頒布等罪)撤廃なんか、議論に上ったときには、自民党上層部が「日本の美風に反する」とか言い出して反対するやつ蹴落とすようになるでしょ。
インボイス制度も、もう自民党が意地でも譲らない態度になってる。
大勢の漫画家やアニメーターが大変なことになって、産業と文化の危機だってかなり前から言われて、山田太郎が触れないことも批判的に指摘されてたのに、彼がやっと「現行の」と留保をつけてインボイスに反対と自分のサイトに書いたの、参院選2週間前の6月22日。
このへん、インボイスがまずいと気づくのが遅かったなら本当に漫画やアニメの味方をする気があるのか疑わしくなるし、気付いて黙ってたなら、それで自民党の中から問題を修正していく議員であれているのか、となっちゃう。
山田太郎を見てると、議員になったとしても山田太郎と同じようにするであろう赤松健が、山田太郎を超える仕事ができるのか、という不安は出る。
自民党がなにしようが自力で通る石破茂みたいな人でも、今や閑職の飼い殺し。党にいさせておけば、地元で他党に議席を取られることもなく、集めてくる比例票は党の利益になる。何もさせず、何も報いない。
自民党の上の方が喜ばないことをやろうという自民党議員って、どれだけ成功しても、行き着く先はそこなんじゃないの。
ネギま!政治
私も赤松健の作品にハマった経験があり、それが初期の「魔法先生ネギま!」だった。
連載始めていきなり生徒名簿の形で、見開きにキャラの顔と名前を31人並べて、読者の反応を見ながらウケてるキャラを活躍させるようにしていく、というキャラ萌え漫画の作り方は、当時でもあれこれ論じられるような尖った手法だった。
たくさん並べる手法自体はシスター・プリンセスとかの前例はあったけれど、あれはキャラクターとしては最初から十分完成させて並べてる。
ネギま!の場合は、その異常にキャラが多いといわれたシスプリを遥かに超える人数を、いきなりカタログのように出してきた。
もちろん、コマひとつの顔と名前だけ、ごく薄い情報しか提示されてない、未知数のものが大量に並ぶだけだ。
しかし、薄い情報からでも勝手に想像膨らませて萌えられるオタクもいるし、時はインターネット隆盛期、そういう人たちの口コミがパワーを持つ環境もできつつあった。
そりゃストーリーを回すために最初から用意されてたキャラも一部にいたけれど、モブに近いようなキャラが想定外の人気を博したりもした。
すると、突然主役回がねじ込まれ、あからさまに設定足して主要キャラっぽい位置に引っ張り上げられる。
他のキャラクター作品が、「こういうのがいいと思うだろ」と入魂のヒロインで一本釣りをやってるところに、赤松だけ餌ばらまいてサビキ釣りし始めたような異様さがあって、面白かったな。
あれから20年近く過ぎた。
さすがに漫画で同じことをやるのは難しい。
あの時代に、赤松健という異才のパワーがあってこそ成立したものだと思う。
しかし、「カタログ的に薄い情報のキャラを多数並べて、反応があったら引き上げる」方式は、後にソシャゲの世界で大当たり。
ガチャを引かせるには、多数のキャラが要る。引き尽くされないように、継続的に追加もしていく。
ガチャで引き当てる前に客に与える情報は、イラスト1枚の見た目と(あれば)声と、ごくわずかなフレーバーテキストくらいのもの。
そして人気が出たキャラは、ゲーム中のイベントやスピンオフ作品で出番をもらったり、ゲーム内の新衣装とかの課金要素に追加があるといった、特別待遇を受けられる。アイドルマスターシンデレラガールズなんか、声優さんがつくかどうかが人気で決まるくらいだ。
ソシャゲでやってるようなことは「ネギま!」が10年以上先取りしてたのだなあ。赤松健の先見性恐るべしだ。
……。
秋田駅での街宣を聞いて頂きありがとうございます!🙇♂️
— 赤松 健 ⋈ 参議院議員(全国比例)候補者 (@KenAkamatsu) 2022年5月13日
フリーランスの待遇改善、特にアニメーターさんに注目した施策を色々考えています。ご意見をお聞かせ下さい! https://t.co/hbZWJljg8o pic.twitter.com/jFj5iSfIYz
このボロクソに批判されてた政策、まさに「成功したところを引き上げる」という「ネギま!」と同じ発想……つまりネギま!政治……!
まあ、ずっと自民党が大学とかにやってる「選択と集中」というのも、「ネギま!」とかわらんな。恐るべし赤松健。自民党政治すら先取りしていた。
まあ、いちいち付記せんでもいいとは思うけれど、別に大河内アキラを人気出ないからってそのまま見捨てても、キャラが忘れられていくだけだ。
けれど、人間は見捨てても消えはしないし、大学は全体的に沈下していっている。