最近、このチャンネルで、昔やってた格闘ゲームの動画を懐かしく流している。
私はあんまり上手い方ではなかったから、やってなかったタイトルのほうが多いんだけれど。
中でも、キングオブファイターズは初代の'94からぜんぜんやらないゲームだった。
しかしそれでも、みんながやってるからBGMが未だに耳に残っていた。
KOF95の日本ステージで流れてるあのメロディ、あれ何度も何度もゲーセンで聞こえてたの、動画見て思い出しちゃったよ。
やらないゲームでも聞こえてて覚えてる、って、やはりそれだけ印象的な音だったんだろう。
そういうのいくつかあるよね。ダライアス外伝のステージ1とか。みんなで遊び倒したストIIだって、ストIIといえばケンステージのあのヒロイックなメロディだろうし(諸説あります)。
NEOGEO随一だったティンクルスタースプライツ
90年代当時はゲームのサントラ集めるのが好きで、今でも掘り返すと色々出てくる。
まあ検索するとYoutubeでも色々見つかるんだけど。
「ティンクルスタースプライツ」なんか私が高校時代に最もやり込んだゲームで、対戦シューティングゲームなんて新しいものをいきなり最高の面白さで出してきた大傑作であった。大袈裟に言うと20世紀最高のゲームのひとつ。大袈裟でもないか。
しかも、メーカーのADKが音楽の上手いところで、その末期の、最も技術がこなれきった時期のBGMだった。
96年リリースだけど、ハードは当時としても古いNEOGEOだったから、音源チップも古い。
今はいろんな情報があるもので、NEOGEOの音源チップもぐぐったらすぐわかる。ヤマハのYM2610だった。タイトーの要望で作ってF2システムに採用されたのが1989年だから、96年当時からすれば非力だったろう。
しかしもうADKのサウンドチームが長年叩き続けて、カリカリに使いこなし尽くして音を出してるもんで、他のどのNEOGEOのゲームと聴き比べても、私が知る限り最高のもの。
本当にすごいのだけど、今YoutubeでティンクルスタースプライツのBGMを検索して出てくるのは、NEOGEO CD版だった。
NEOGEO CDはCD-DAでBGM鳴らせちゃうから、サントラに入ってるアレンジ版のほうが使われていた。これは多分独立したシンセやMIDIとかでやってるだろうから、音楽としての質は上がってるけど、YM2610を知り尽くして絞り出したような音とはまた違う。
ああ、みんなこの魔術的にYM2610を使いこなした音楽を聞けないなんて……(と聴きながら書いてる。羨め)。
アレンジ版とグルーヴコースターのこと
当時のゲーム音楽ファンは、そういう音源チップを徹底的に使いこなす技術を含めて評価する人も多い。
「アレンジ版」といって、他のシンセや生楽器を持ち出したバージョンをCDに入れたりするのを、全然評価しないという人もある。
私は幸い、音源チップを絞り尽くすのも好きだし、狭い音源チップの枠を飛び越えて自由気ままにやるのも好き。どっちもいける。
また、アレンジ版といっても、ほとんど同じ音楽だけどシンセが違うから音が厚くてクリア、っていうくらいのものから、全く別物というのもある。
これも私はどっちもいけて、音がきれいなだけなら「これが本当にやりたかったことなのね」と思うし、全く別物なら「面白い」と思えるし。
しかし私も別に物わかりの良いファンというわけじゃなくて、ちゃんとめんどくさい野郎なのであった。
私は当時からTAITOのサウンドチーム・ZUNTATAが好きだったんだけど、90年代終わりにはビートマニアの大流行が来た。
そうすると当然、ZUNTATAのファンは「タイトーの音ゲーやりたい」と思った。
コナミがジャレコを訴えたりして、他社に音ゲーをやらせないように動いてたものだから、当時は実現しなかったんだけど。
待望だったタイトーの音ゲー『グルーヴコースター』が出たのは、2013年だった。
私も30過ぎてたけど、機会を作ってちょくちょく遊んでいた。
オールドファンへのサービスのように、懐かしい曲も入れてくれていた。
レイストームの「Geometric City」やらダライアスの「Captain NEO」、ニンジャウォーリアーズの「DADDY MULK」といったオールドファンには定番のものから、各所に展開していたスペースインベーダーシリーズを大胆にアレンジしたやつとか。サイキックフォースや奇々怪々もあった。
当時新作だったダライアスバーストから持ってきた曲もあったりして、これが今の新しいZUNTATAなんだなあと思わせてもくれた。
しかし10年以上の月日は残酷なもので、おっさん連中はやはりゲーセンに帰ってきたりはしなかったらしい。
レトロZUNTATA楽曲が、人気ランキングに上がってくることはなかった。
それでもなおタイトーは、2015年にはレトロZUNTATAリバイバル楽曲を次々追加してテコ入れしてくれた。
ここで私がめんどくさい奴だというところに戻るんだけど、15年に追加されたZUNTATAリバイバル曲が、その、ダサいアレンジで原曲ぶち壊してる、と私には思えるようなやつだった。前はそんなことしてなかったのに。
Geometric Cityはオリジナルがこれで、グルーヴコースターがこれ。これは違いはあっても、今の音ゲーに入れるために変えなきゃいけないところはあるだろうし、これはこれで、とも思う。
でも、Ceramic Heartはオリジナルがこれで、間にアレンジアルバムで歌入りになったのがあって、それでグルーヴコースターでこんなんになったの。
ねえ。レイストームのエンディング曲だよ。ゲームクリアしてすべてが終わったところに流れる、静かで美しいピアノの曲だよ。アレンジアルバムではフレンチポップ調になってた曲よ。それがこんな、バブルの頃の車のキンコンみたいなアレンジに……
ダライアス外伝の「FAKE」も、メタルブラックの「BORN TO BE FREE」も、ナイトストライカーの「URBAN TRAIL 」も、こんな方向性でアレンジしてしまっていた。
どうにも耐え難かったし、結局私は、この時期のこれらの楽曲を聞いてから、グルーヴコースターに100円玉を入れなくなってしまった。
でもまあ、当初オリジナルテイストを残してアレンジした楽曲は不人気に終わっていたから、こういう方針転換になったんだろう。
タイトーも商売なんだから、大して遊びもしないおっさんが喜ぶ古臭さを残しても売上にならん、と判断されたのは仕方ない。
もう、そんなおっさんはゲーセンにいなかった。あまりにも遅かった。
2002年とかにタイトーの音ゲーが出てればね。何もかも違ったのかもしれないなあ。
ストIIとYM2151
なんかウィキペディアにやたらと古いFM音源チップの記事が充実してるのに今気づいて色々眺めてたけど、ストリートファイターIIに使われていたサウンドチップは、YM2151だったらしい。
83年のチップだから、91年のストIIに使ってたのは、かなりレトロだった。
もちろん私も散々遊んだけれど、BGMの音源チップの古さまではわからなかった。
スーパーファミコンは90年発売で、音源チップもソニーが専用に作ったSPC700っていうものだから、機能的にはアーケードの基盤よりずっと上だったはず。
Youtubeで聴き比べてみると、たしかにスーパーファミコンのほうがリッチな音に聞こえるなあ。
カプコンのサウンドチームも、ファミコンでさえ「天地を喰らうII 諸葛孔明伝」のBGMなんかすごく評価が高くて、サウンドチップの使いこなしが甘いなんてこともなさそう。
やはり91年にしては、YM2151は古すぎたんだろうな。
同じ音源のゲームだと、私はキャプテンコマンドーのサントラを持ってたけど、あれも曲はいいけど音がいいものではなかったように思う。何の楽器ともいえないようなビンビンした独特の音を、うまくまとめ上げてる感じのBGMだった。
ストIIはCPシステムっていうシステムボードで動いてたんだけど、やはりサウンドの古さが意識されてたのか、92年に「天地を喰らうII 赤壁の戦い」を出した時にサウンドチップをQサウンドなるものに入れ替えた。
93年にスーパーストリートファイターIIから採用するCPシステムIIも、サウンドはQサウンドだった。
Qサウンドのゲームだと、私がサントラ買ったのはマッスルボマーとか、ヴァンパイアとか。
このあたりは確かに大幅に音がクリアで分厚いBGMになってるから、Qサウンドはパワーのあるチップだったらしい。そういえば、確かにスーパーストIIはBGMが前と全然違ってたな。
この後カプコンは、96年にCPシステムIIIをリリースして、ストリートファイターIIIなどに使ったんだけど、ここからはもうサウンドはPCM音源になるみたい。
PCM音源になっちゃうと、どんな音でも録音すれば使えてしまうから、音源チップを叩いて鳴らしてた時代とは違うものになっていく。
90年代半ばだと、家庭用ゲーム機もCD-ROMが主流になっちゃって、容量が許せばCDのオーディオトラックをそのまま鳴らせた。
PCゲームもやっぱり、WindowsではFM音源チップはほとんど触れなくなっちゃったから、PCM音源とCD-DAに移っていってしまった。
音源チップを駆使して鳴らす音にあった何かは、まあ私にもうまく言葉にできないんだけど、なにか当時のプレイヤーを惹きつけるものがあったんだと思う。
私くらいのアラフォーだったら、ファミコンでMOTHERやメタルマックスの音楽に、スーパーファミコンでアクトレイザーやファイナルファンタジーIVの音楽に、そういう何かを感じてたと思う。