堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

一昔前のちょっとダサい競走馬の名前が落ち着く

 ついにリリースされたアプリ・ウマ娘プリティダービーは、なんか思った以上に爆発的に流行ってしまった。
 アニメ1期より前から脚を溜めていて、ついにアプリが出て第四コーナーを回った今、一気に末脚を爆発させてる人が思った以上に多かったらしい。

 私は相変わらずガチャ引けなくて、2万を超えたジュエルを抱えたままDMM版を待ってる状態。末脚不発! 後方ママ。

 

 でだ。

 ウマ娘の世界ってほら、社台グループの馬がいないでしょ。
 そうすると、なんというか、最近の社台がつける、むやみにカッコよすぎる名前の馬がいなくなるじゃないですか。なんだクロノジェネシスとかジェンティルドンナとかペールギュントとかそんな名前ばっかつけやがって。
 デルタブルースはありだけど。

 ウマ娘キャラクターリストに並ぶ、サクラバクシンオーとかエイシンフラッシュとか、冠号とナントカみたいなネーミングがなんと落ち着くことか。
 社台もなんとかシャダイとかダイナなんとかとかつけてるほうがよかったのにな……。

 

 

昔はカッコ良すぎる名前の馬はG2勝って終わってた

 これはもう私の偏見そのものなんだけど、昔はG1勝つ馬って、カッコよすぎず、ダサくもなく、ネタみたいにもなっておらず、肩に力が入りすぎておらず、そういう絶妙なラインのネーミングされてたように思う。

 日本ダービーの勝ち馬を順に眺めても、昔はいかにも日本の馬って名前に始まり、70年代くらいから長く、「冠号+なんとか」が多くて、「ダサいとはいわないけど」ってくらいのネーミングが並ぶ。
 冠号使うといい感じにカッコよすぎない名前になるのが良い。シンボリルドルフミホノブルボンもなんとも和洋混在な中途半端さ。かといって日本語だけでもサクラショウリとかサクラチヨノオーとか泥臭くなる。
 外国語でも、クライムカイザーじゃ英語とドイツ語だし犯罪皇帝じゃなにがなんだか。コーネルランサーもわかるようでわからない。ランサー大佐?

 こういうダサすぎない、かっこよすぎない、その程々さが大事。G1の出馬表を見てても、「こいつの名前はカッコよすぎるからG1は無理」あるいは「このダサい名前ではG1には足りない」という雰囲気が出ていた。

 

 名前がかっこよすぎてイマイチに終わってしまった馬といえば、なんたってサマーサスピションが思い出深い。
 英語使うのもスターとかスピードとかキングならいいけど、サスピションとくる。かっこいい。

 サンデーサイレンス初年度産駒で、母はダイナフェアリー。三冠牝馬メジロラモーヌと同世代で、牡馬とも互角に渡り合って複数の重賞を勝った名マイラー
 そんな良血馬で期待されたけど、しかし体調の不安で勝ち上がりが遅れ、皐月賞にも出られず、青葉賞に出走。そして後方一気の素晴らしい末脚で、同年のダービーでタヤスツヨシが出した時計より1.5秒も早いタイムで勝った。

 が、そこまでだった。
 これはもう全く私の決めつけでしかないんだけど、サマーサンデーとか微妙な名前だったらもっと勝ってたに違いない。

 というかその、タヤスツヨシという名前も、私には1500万条件の名前に見えていた。ダービーを勝つには物足りない。勝つならナリタキングオージェニュインかと思ってたのにな。まあジェニュインはカッコ良すぎる類かもだけど。

 

 そして、サマーサスピションのひとつ下の全弟がまた活躍したのだが、これがローゼンカバリーというあまりにもカッコよい名前をつけられた。
 こいつも確かに弱くはなかった。G2なら4つ勝った。でもどうにもG1には届かない。天皇賞春でメジロブライトの3着に入ったのが精一杯だった。
 薔薇の騎兵はやりすぎだった。そんな名前でなければ天皇賞のひとつくらい……。

 というか正直に言えば、むしろ、当時高校生だった私は、この兄弟の名前を気に入って応援していたがゆえに、こいつらが残念な結果に終わったことで、「かっこよすぎる名前の馬はG1を勝てん」という信仰を抱いてしまったのだ。

 

 サマーサスピションの同期に、サイレントハピネスって牝馬もおったね。サンデーサイレンス初年度産駒。これも高校の時に名前が好きだった。
 95年牝馬クラシックは、ワンダーパヒュームプライムステージダンスパートナーライデンリーダーサクラキャンドルと強豪が並ぶ(しかもみんな名前がカッコよすぎないという)強い世代だったんだけれど、そこに秋のエリザベス女王杯から挑んできたのがサイレントハピネス
 しかしやっぱり、トライアルのG2を勝っただけに終わってしまった。

 ハッピーサイレンスだったらカッコ良すぎなくなるとはいえ、色々やばい。どういう名前だったらよかったんだろう。

 

 そうだそうだ、この世代はブライトサンディーもいたな。これもサンデー産駒だ。
 春はクラシックに間に合わず、夏から連勝してサファイヤステークスを勝ち、エリザベス女王杯で2着に入った。
 翌年はまた夏から走って函館記念を勝ち、そしてエリザベス女王杯で負けて引退した。

 名前が良ければG1勝てる理論でいくと、ブライトサンデーだったらいけたはずだよ。マーベラスサンデーでいけたんだから。ィの一文字がG1を勝てなかった理由に違いない。

 

 ローゼンカバリーと同い年、96年牝馬クラシック戦線は、ロゼカラーマックスロゼもいた。
 この二頭、どっちもフランス語のロゼに英語を組み合わせる適度なダサさではあるものの、そもそも競走馬にバラのイメージをつけようというのが、肩に力が入りすぎてるような感じもある。

 ロゼカラーの母はローザネイという馬で、その子孫はどれもよく走って、後に薔薇一族なんて呼ばれるようになっていった。
 薔薇一族には多くの活躍馬が出たけど、今のところ、G1勝ったのはローズキングダムという微妙にカッコよすぎない名前の馬だけ。
 ロサードヴィータローザローゼンクロイツも、重賞は勝ってもG1まで勝てない。やはり名前がかっこよすぎ、頑張りすぎなせいだろう。
 やっぱローズカラーが正解だったのでは……?

 マックスロゼの方は、1926年に宮内庁が英国から輸入したクレイグダーロッチという牝馬を祖先とする、日本の伝統的名族。同族にはサクラスターオーサクラユタカオーウイニングチケットロイヤルタッチミホノブルボンもいる。マチカネタンホイザもいる。
 フェアリーステークス(G3)を勝って、クラシックはオークス5着が最高。
 マックスローズだったらよかったのかもしれない。

 バラにちなんだ名前の馬が3頭も重賞を勝つほど活躍した、でもG1には手が届かなかった、そんな年が96年であった。

 

ダサけりゃダサいでダメ 

 ここまでカッコよい方を挙げてきたけど、なんかG1勝てそうにないダサさ……といったら、ナイスネイチャロイスアンドロイスマチカネタンホイザも、まあそんな感じ。
 絶望的にダサい名前ってわけじゃないけど、なにかどこか間が抜けてしまう、そういうのもG1勝つまでいかない。

 マチカネタンホイザ、味わい深いね。ドイツ語を持ち出してさえ、冠号と字足らずで絶妙にダサい。
 ちなみにタンホイザの同期(1989年生まれ)のマチカネは声楽シリーズで、マチカネアイーダマチカネアルルマチカネカルメンマチカネトラビアタマチカネハバネラマチカネポッペアといった教養あふれる名前が並ぶ。

 

 私が好きなダサい名前、なんといっても極めつけのがある。

 父はあのヨーロッパの至宝ダンシングブレーヴ。不治の病を押して日本に買われ、英国にもコマンダーインチーフホワイトマズルを残し、日本でもキングヘイローエリモシックを出した。
 そして母はマックスビューティ。87年クラシック戦線で8連勝して桜花賞オークスを制し、牡馬に混じって神戸新聞杯まで圧勝してエリザベス女王杯2着、3冠寸前まで行った当時の日本最高レベルの名牝だった。しかもすでに母として、桜花賞オークス3着のマックスジョリーを出している。

 そんな良血中の良血という馬の4番目の子、セリ市でいきなり開始価格1億という強気、それでも落札された。

 それで付けられた名前がチョウカイテイオー
 奇しくもこれは、ウマ娘2nd Seasonの神回・第10話放送直後に書いてるのだけど、「テイオーさんが引退するなら私が次のテイオーに!」と現れるネタキャラみたいだ。
 もちろん、紛らわしいから却下された。

 付け直された名前がチョウカイライジンという、なんというか面白みなくただ単にダサい名前になってしまった。
 そこまで走らなかったわけじゃなく、1億7000万稼いで購入価格は超えてるんだけど、当時地味だったダート路線で、重賞は勝てずにオープン特別をふたつ勝つにとどまった。

 これはよしだみほ馬なり1ハロン劇場でネタにしてたな。
 ちなみにチョウカイライジンは超良血を買われて種牡馬入り、ごくわずかながら産駒を出した。そして地方だけど勝ち上がった馬が出た。その名前がドリカムビューティ。親子揃って名前に恵まれないな……。

 

 よしだみほがネタにしてたといえば、ダイタクテイオーもあったな。
 95年のクラシックで、毎日杯を勝って皐月賞に1番人気で臨んだ馬。でも凡走してジェニュインに敗退、その後はさっぱり活躍できずに引退。

 冠号+テイオーはよくある名前とはいえ、やっぱりトウカイテイオーの印象が強すぎる。次点はニッポーテイオー。まあダイタクテイオーニッポーテイオーの子だけれど。
 冠号のダイタクも、やっぱりダイタクヘリオス知名度が飛び抜けている。95年だとダイタクリーヴァダイタクバートラムも生まれてない。

 「テイオー」と呼んだらトウカイテイオーが振り向き、「ダイタク」と呼んだらダイタクヘリオスが振り向くので、ダイタクテイオーはいちいちフルネームで呼ばないと個体識別できない。
 ダイタクテイオーという名前自体がそこまでダメそうではないけれど、「テイオーといったらトウカイでもニッポーでもなくダイタク!」と、あるいは「ダイタクといったらヘリオスじゃなくテイオー!」と呼ばせる壁は高すぎた。