どうも2020年はびっくりするほど本を読めなくなってしまった一年で、漫画すら読めてない有様になってしまっていた。
元々私は電車で読書してたんだけれど、大阪市内に住んでしまって電車移動時間が激減、しかもコロナで長距離の乗車も遠慮するようになってしまった。
さらにいえば、長風呂に入りながら読むのも好きだったんだけれど、今の住処に風呂がない。
せめてウェブ漫画くらいは読もうと思い、それから読んだら何かアウトプットもするほうが習慣づけに良いかなとも思うので、ここに今年読んでたやつを記していく。
私が今年読んだもので、2020年中に新しい話が公開されたことがあるもの、と限定しとこうかな。
町田メロメ「三拍子の娘」
今年読んでた中でも特に好きなやつ。
第一話だけだと重い話みたいなんだけれど、そこから始まっておいてどんどん軽くなっていく。軽薄なわけじゃないんだけど、軽妙といってもなんか違うし、重がつくような語とは対極にあるし。「素晴らしい」だとなにか適切じゃない感じがしちゃうくらい、絶妙に良い。
なにも説明できてないんだけど、せいぜい「日常ものに分類できる」くらいしか説明のしようがないのよね。そして私は簡単に説明できないようなやつが大好き。
ただ本当に惜しいのが、ebook japan掲載で。紙で出たら絶対に買うんだけど出そうにない。
ebook japanって、大昔に「そこしかない」って感じだった頃に使ったけど、正直仕様が酷くて買った本が失効したりして印象悪すぎて、電子でも使おうと思えない。つらい。
もうひとつ、地球にひとり生き残った男子中学生(学校ないのに)と、万物に偏在するようになった母親の話という、なんかSFというか、そんな設定だけど日常ものみたいなのやってる。
空えぐみ「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」
私はなんか、昔から九州とか沖縄の方言を聞くと心が和むのだけれど、ずっと解読不能なセリフが並ぶのもまた快いものがあり。
私なんかもううちなーぐち聞ける機会があったら積極的に聞きに行くから、大体この漫画のセリフも儀武ゆう子の声で再生できるよ。
これは単行本買うね。
出内テツオ「野球場でいただきます」
球場グルメマンガというと、渡辺保裕「球場三食」を思い出すんだけど、もちろん同工異曲でどっちも劣らず面白い。
絵もすごい好きだなあ。これだけ表情のバリエーションが豊かなのは実にいい。
線が太くて、決して情報量の多い絵ではないけど、描くものと略すものの選択が適切に行われてる。
そもそも人物をむやみに増やさないこととか、メインのふたりもキャラデザに差を大きくつけてあるとか、そういう根っこのとこから取捨選択がきっちりしてる。
それからベタを塗ってる面積が随分多いのも特徴的に見える。背景の風景を、ベタから白抜きしたような描き方してるのとか、カメラ好きの私の目には、ハイコントラストのモノクロ写真っぽい表現に見えたりもする。トライXを4号か5号で焼くやつ。
ペス山ポピー「女の体をゆるすまで」
前に読んだ「泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。」も激烈なやつだったけれど、今度もまたすごい。
タイトルが、最終的には落ち着くべきところに落ち着くんだろうとわかるからまだしもなんだけれど、こうでなければちょっと怖くて読めんくらい。
男の私には理解はできないところはあるけれど、世の中にはわからないことがいくらでもあるとひとつ知れる。
カレー沢薫「ひとりでしにたい」
ネットで見かけるメツマ(カレー沢薫)の記事は、よく思いつくなと感心するような言い回しで、社会や悩みを身も蓋もなくばっさりいっちゃうおもしろコラムだったりするんだけど、その身も蓋もなさをこれでもかと直球で詰め込んでいるような今作。
まあ、すでに話題作といっていい類なので、ことさら言葉を足すのが難しい。
okamura「トカゲ爆発しろ」
一話完結の亜人学園コメディ。
例えば、1話だけ取り出して読み切り漫画のコンテストみたいなのに並んだら、「上手いけど普通」みたいな感じで1位は取れない感じというか、爆発的に面白いみたいなもんではない。
だけど、毎回確実に80点出してくる。センスに依存してなくて、技術として安定して面白く作られてる。
私も年取ったこともあり、この安定がいい。
Twitterで1話掲載されて「すげー面白い」と思って、その水準が続くと思ったらさすがに無理で、読んでるうちに気持ちがしぼむ……とか、感情が上下しちゃうのも少々しんどいの。年取って。
松本直也「怪獣8号」
これも水準高く面白い。
ただ私は怪獣モノに関心がなかったから、定石とかお約束さえ全然知らなくて、あんまり語る言葉がないんよね。興味ないジャンルでも面白く読ませるというのは流石。
ありま猛『あだち勉物語』~あだち充を漫画家にした男~
今年は「連ちゃんパパ」の地獄のような旋風が起こってしまったのだけれど、あの作者が、かつてアシスタントしていたあだち勉の伝記的な漫画を描くという。
連ちゃんパパのモデルといわれるあだち勉のだめな人っぷりはあるものの、赤塚不二夫などのまわりに集まる往年の漫画家たちの姿が描かれる、まあ普通の漫画家伝。
ただ、何か、どこか、連ちゃんパパの地獄が床板一枚下のすぐに口を開けてそうな雰囲気が漂ってしまうね。
いとまん「ドキュンサーガ」
アフタヌーンで「発症区」という作品を連載してたことがある方が、個人サイトで公開している。未完なんだけれど、2021年にはまた動きがあるとかで。
最初の方は、私が面白そうに思う作品とはかけ離れてるんだけれど、かなりダイナミックに話が変わっていく。ネタバレしないようにするけれど。
早坂啓吾「サバエとヤッたら終わる」
「ほらお前らこんなん好きやろ」と言いながら、オタクがあんまり認めたがらないだろうけど実は好きなやつをねじこんでくるやつ。
つまり「宇崎ちゃんは遊びたい!」と方向性は同じなのだけれども、宇崎はいろんな意味で「誰だって好きにきまってるだろこんなん」というものになっちゃっているから、サバエのほうが狙いが研ぎ澄まされている。