堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

御城プロジェクト:REから見る現代の二次元眼鏡に就いて

 10月10日、目の愛護デーである。
 10月1日はメガネの日(1001と書いて眼鏡に見立てる)でもあり、10月はメガネに縁が深いといえるだろう。

 

 で、メガネの話である。
 メガネと御城プロジェクト:REだけで、相当な長文記事になったが、まあ秋の夜長の暇つぶしにでも。

 

oshiropro.blog.jp

 眼鏡というのは、二次元業界において不人気属性といわれている。
 20年くらい前、天誅が「ハイエンドオタク」を歌った頃には、「奴らの理想は眼鏡っ子」などと茶化されるくらいだったものだったけれど、時代も変わったものである。

 いやまあ、ときメモToHeartの時代でも、別に眼鏡キャラが覇権を握っていた覚えはない。「ファンの中でもさらにディープな一部に固い支持を受ける」という感じの属性だったと思う。
 20年前の黎明期インターネットは、モノを言うオタクというのがディープな奴らばかりだったから、今よりも濃い声が目立ったというのはあるかもしれない。

 25年くらい前の90年代前半まで遡ってしまうと、「顔がわからないような瓶底眼鏡をかけていて、外すと美少女になる」という、今やったら暴動が起こるようなキャラもいたものだった。バイネームでいうと同級生2の加藤みのりとか。
 それを思えば、今時の眼鏡キャラは進化し、NGを削ぎ落とし、成功例はさらに洗練されているように思う。

 

実際と二次元のメガネ率

 実際の人々は、どれくらい眼鏡を使うだろうか。

 こちらの集計を見てみた。男女別・年代別で、度なしを含めて眼鏡・コンタクトレンズの着用率が集計されている。
 二次元キャラは年齢層が若いので、20代女性のデータを参照すると。

 眼鏡のみの人が16.3%、コンタクトのみの人が14.3%とほぼ拮抗。他の年代ではコンタクトレンズのみという人が大きく減るので、ファッション上の理由で眼鏡を避ける、またカラーコンタクトを用いるといった影響が、20代女性には強く出ていると見られる。
 眼鏡・コンタクト併用派が30.6%あるが、どちらがメインになるかも、ざっくりと半々に分けてよいかと思う。
 そうすると、眼鏡常用16%、併用のうち眼鏡メイン15%をあわせて、20代女性を見れば3割くらいは眼鏡をしている……くらいのところだろうか。

 

 二次元はどうかというと……どう考えても3割はおらんよな。

 艦隊これくしょんの場合、艦娘は2020年7月26日時点で249人
 うち、眼鏡をかけているのは、最新の海防艦平戸までで12人。望月・巻雲・沖波・天霧・大淀・香取・鳥海・霧島・武蔵・Roma・伊8・平戸。
 わずか4.8%。

 

 御城プロジェクト:REの実装済みキャラクター508人。
 目視なので取りこぼしがあるかもだけど、眼鏡をかけているのは12名。篠山城・ネスヴィジ城・鶴島城・高天神城・魚津城・白石城駿河田中城・城塞都市ルクセンブルク・黒川城・脇本城・本庄城・隈本城。
 城プロは戦闘時と非戦闘時でグラフィックが変わるが、非戦闘時にだけ眼鏡をかけるのが3名。マルクスブルク城・三崎城・リンディスファーン城。
 非戦闘時に眼鏡を手に持っているのが会津若松城。まあ、メガネを手に持つというファッションは聞いたことがないので、かけるために持っていると見做そう。

 会津若松城を含めて16人なので、508人中の3.1%しかない。

 

 やはり、二次元の眼鏡は実際以上にマイナー属性といえそうだ。

 

マンガとゲームとアンダーリム

 「眼鏡を外したら美少女」という眼鏡キャラは、今では淘汰されてしまった。

 では逆に、淘汰を経て洗練された結果、萌えに適応して数が増えた眼鏡とはなんだろうか。

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アンダーリム眼鏡 (左上から、城塞都市ルクセンブルク、隈本城、鶴島城、高天神城。下段左から三崎城・脇本城・黒川城・会津若松城

 アンダーリムなんていう変わり種の眼鏡が、二次元では非常に多い。城プロでは16人中8人がアンダーリム
 二次元でも、昔はアンダーリム眼鏡は多くなかったはずだ。それが年々増えて、現在の城プロでは5割というシェアになった。

 おそらく最初期には、キャラの顔の主要な印象を作る瞳に、眼鏡のフレームがかかることを嫌って、上部のフレームを省略した。
 それが、アンダーリム眼鏡をかけているという表現に変化していったものだと思う。

 白黒かつ線画で描かれるマンガでは、上フレームの省略という技法が発達しそうに思う。瞳や上まぶたの線とフレームが重なると描きづらい、でも実際にあるようなリムレス眼鏡だと描きにくいし、描いても眼鏡をかけているとわかりにくい。
 しかし、ゲームのイラストでは、そこまで作画上の要請は強くないようにも思う。実際にゲームなどフルカラーイラストでのアンダーリム眼鏡を見ても、「上フレームを略す」ということが目的とは考えづらいものが多い。

  

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左から会津若松城、黒川城、三崎城

 城プロのアンダーリム眼鏡の描き方を見ると、必ずしも「瞳を遮るものは描かない」という表現ではない。

 左の会津若松城は顕著にレンズの透明度が低い。
 中央の黒川城は、レンズの反射がはっきり描かれて、瞳に重なっている。
 右の三崎城は、レンズの透過率が表現されて瞳の彩度が低くなっている上、フレームも瞳にかかっている。

 これだと、「フレームが瞳を遮る」という問題を避けるためにアンダーリムにしているとは思えない。結局瞳を遮るレンズを描いているのだから。
 ここに挙げていないのも、隈本城・脇本城はレンズの反射や透過が、鶴島城はレンズのふちが描かれて、瞳に重なっていた。

 「瞳を遮るものを描かない」という描き方になっているのは、高天神城・城塞都市ルクセンブルクのふたりだけだった。 

 アンダーリムの眼鏡でもって、瞳を遮るものを描かないという目的に沿った描写になっているのは、8キャラ中2キャラのみ。少数派だ。
 となると、今やアンダーリム眼鏡は二次元的にファッショナブルなものとして、積極的に選ばれるものになっているのだろう。 

 

リムレス眼鏡とマニアなこだわり

 「瞳をフレームが遮らないように」という作画上の要請を乗り越えるために、普通に考えられるのはリムレス眼鏡だろう。現実にも存在するのだし。

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左からネスヴィジ城・リンディスファーン城・駿河田中城・本庄城・篠山城

 該当するのは5名。
 ネスヴィジ城についてはアンダーリムにも見えるが、フレームにしては線が細い。下側なら影として黒線を引くのも十分考えられるので、リムレスと判断した。
 篠山城は、はっきり黒線が全周を囲っているのだけど、眼鏡の構造が実際のリムレス眼鏡のものだった。

 しかしリムレス眼鏡、二次元にはあんまり適していない。
 記号として目の周りを囲む太い線がなくなってしまうから、パっと見て眼鏡だと気づきにくい。上図ではリンディスファーン城が顕著で、縮小画像では眼鏡を見落とす。
 実際のリムレス眼鏡も、眼鏡をしているという印象を弱めるためのものだから、リアルに描けば当然そうなる。

 だがしかし、だからこそ、リムレス眼鏡は描く方の技巧やこだわりが見える。

 

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リンディスファーン城(拡大)

 こだわりの眼鏡ファンにいわせると、レンズの屈折が表現されていない眼鏡は「伊達メガネ?」と思ってしまう。
 城プロの眼鏡で、ちゃんと凹レンズの屈折が見られるのは、私が見た限りではリンディスファーン城だけだ。

 城プロはプレイ中に顔アップがほとんどないので、この屈折描写はわざわざ拡大しないと気づかない。私もあいにく、今気づいた。
 眼鏡マニアにしか気づかれない、ほんの1~2ピクセルのズラし。眼鏡は細部に宿るというべき仕事だといえるだろう。

 

 そんな眼鏡マニア絵師(決めつけ)に描かれたリンディスファーン城、これが意外にも、戦闘時には眼鏡を外すキャラだ。
 が、「戦うのにメガネしてたら傷つくし、割れたら危ない」というリアリズム、これは眼鏡マニアだからこそ盛り込む要素ではないか。

 

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H型フレーム(ネスヴィジ城・駿河田中城)

 また、リムレス眼鏡といっても、一般にメガネ店で買えるようなのは、こういう形状はしていない。普通のリムレス眼鏡は、レンズ面に穴を開けて、つるや中央のブリッジをネジ止めするようになっている。

 こういう、中央がH字型の部品で繋げられている、いわばサイドリムとでもいうような形の眼鏡は、私は買えるところを知らないし、どうやってレンズを止めているのかわからない。かなり特異な眼鏡といえそうだ。

 特に駿河田中城の方は、はっきり太く描いたH型フレームで「地味な太めの黒縁メガネ」の印象を与えつつ、「瞳の前を太い黒フレームが横切る」というのは回避するデザイン。
 だったらアンダーリムでもいいんだけど、それも除き、「透明なレンズといえども斜め上からの光なら影ができて頬に落ちる」という細かいリアリズムを挿し込む。
 フレームが光を反射する描写も、樹脂じゃなく金属製の質感で、地味なものの印象を深める。

 現実には見かけない眼鏡だけど、フィクションだからこそ眼鏡ひとつに情報量をたっぷり持たせている。これはかなりレベルの高い眼鏡描写といえるだろう。

 

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鼻当てがある眼鏡(左からネスヴィジ城・駿河田中城・高天神城白石城・脇本城)

 ネスヴィジ城はわりとさらっとした眼鏡の描写だけど、二次元の眼鏡には珍しく、鼻当てを描いてある。
 特に鼻当てがわかりやすい画像を出してみたが、ネスヴィジ城はどのアングルのイラストでもちゃんと鼻当てがあった。
 二次元キャラの顔の立体形状からして、鼻当てをどのように描くかはかなり悩ましいので、省略される場合が多くなる。でもネスヴィジ城は鼻当てから逃げない。

 駿河田中城も、横からのアングルでは鼻当てを描いてある。
 他のキャラの眼鏡もチェックしたところ、確認できたのは高天神城白石城、脇本城だった。わかりやすいカットを選んで上に示した。

 

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篠山城イベント

 篠山城も、城プロでメガネと言えば篠山城といわれるような代表格。
 デレマスにおける上条春菜みたいなメガネストだ。

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篠山城各種

 リムレス眼鏡の構造をちゃんと描きつつ、でも実際にはなかなかリムレスにはしないであろう大きな丸レンズ。リアルとドリームが交錯する。(こんなん本当にかけてるのって闇金ウシジマくん……とはいわんように)
 印象を弱めるはずのリムレス眼鏡で、あえてふちにはっきり黒線を引いてしまうことで眼鏡の存在感を出す。一旦外してから引っ張り戻すというような、計算された印象のコントロールがある。
 普通なようで、かなりトリッキーな眼鏡だ。

 

 リムレス眼鏡のキャラには、なんだかマニアックなのが多い。
 眼鏡を記号にするなら不利になるリムレスであるがゆえに、それをあえて選ぶ描き手の工夫が強いと見られる。

 

フルリム眼鏡と直球

 残る3名は、全周フレームのある、いわば普通の眼鏡だ。

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左からマルクスブルク城・魚津城・白石城

 マルクスブルク城の眼鏡は、右目だけ少しフレームが切れているようにも見えるが、これはアンダーリムだからじゃなくて、描写上の省略と判断した。

 二次元の眼の大きさに対して、眼鏡を相応に巨大化させると異様に見える。
 かといって、小さな眼鏡で眼の下半分しか覆っていない状態では、眼鏡ユーザーとして正しくない表現に思えてしまう。老眼鏡っぽくもなるし。
 でかすぎず、ちゃんと視界全体をレンズに通せる眼鏡となると、眼と眼鏡の大きさが近接してしまい、重なる。
 そういう諸々の落とし所を探した結果、描写としてまぶたとフレームの重なるところを一部省略した、と。生真面目な描き方といえるんじゃなかろうか。

 

 フルリム眼鏡は、当然ながら最もポピュラーな普通の眼鏡だ。

 この3人の眼鏡は、あんまり小洒落たフレームでもない。二次元的におしゃれなのはアンダーリム、技巧を凝らすならリムレス、という状況で、あえてちょっとイモい雰囲気を狙ってるっぽい。
 マルクスブルク城の男でも使えそうな四角くて大きめのフレーム、魚津城の色こそ赤いけど太すぎて印象が重苦しいフレーム、白石城の丸顔に丸いフレーム合わせて丸い印象が強化されたチョイス、なんとも「目が悪いからかけてる」感がある。

 だからこそ強い。小細工なく顔にドンと眼鏡が乗ってる力強さよ。
 眼鏡キャラ好きな人って、お洒落な眼鏡なんて求めてないでしょ、むしろ地味だったりするほうがいいでしょ、という意図が感じられる。

 

眼鏡城娘界の覇権は誰に?

 城プロでは、正直眼鏡キャラは人気になっていない。
 半年に一度くらい人気投票がゲーム中にあるのだが、眼鏡城娘は関東・関西の部門別でようやく40位くらいに入るのが精一杯。
 無差別に全員の人気投票にすると、508キャラのうちで100位に入れるかも微妙だ。

 ガチャのあるゲームだけあって、高レアで性能が高いユニットは人気になりやすい傾向はある。
 しかし眼鏡キャラに限ると、会津若松城(レアリティ★1~7の★4)や三崎城(★1)、脇本城(★2)といったところが部門40位前後で健闘する。
 他の高レアキャラは、★6の篠山城高天神城・鶴島城がランクインしていた。いずれも40位前後。なお★7の眼鏡城娘は存在しない。

 

 ランクインできていないのは、★6のネスヴィジ城、城塞都市ルクセンブルク、★5のマルクスブルク城、リンディスファーン城、魚津城、隈本城、駿河田中城、★4の白石城、★2の黒川城、★1の本庄城。

 ただ、これから伸びる余地がありそうな城娘もある。

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これから期待の眼鏡城娘

 眼鏡に非常にマニアックなこだわりが感じ取れる駿河田中城は、ゲーム中での入手手段が特殊で、ガチャから出ない。
 持ってないならまず手に入らず、また持っていても性能的にゲームで使いづらい(改築が未実装)、という不遇ポジションのまま、まもなく実装1年が経つ。

 もうちょっと入手手段や性能の向上があって、実戦投入するプレイヤーが増えれば、非常にレベルの高い眼鏡キャラであることに気付く殿が増えるかもしれない。
 この眼鏡の良さに気付く人はかなりレベルが高いので、ブレイクしなかったらわかる人だけで愛でるべし。

 

 また、同じくこだわりの眼鏡キャラであるリンディスファーン城。
 実装が五月末と、まだ新しいキャラだから、これから手に入れる人も多くて伸びしろがありそうだ。
 戦闘中は裸眼で、このゲームはほとんど戦闘中の姿しか見ない、という難があるのだが、上級眼鏡キャラであることは広めねばならないところ。

 こちらはガチャで出る★5なので、まだしも入手・実戦投入がしやすい。
 これも改築未実装で、現在はやや性能に難があるものの、ゲーム的に有用度が高い計略を持つユニットでもあるから、性能面で見直される可能性も高い。
 性能だけで使ってるプレイヤーが増えても、ちゃんと眼鏡に気づいて差をつけよう。

 まあ見直されるときは、眼鏡よりも、イロモノキャラとしてブレイクする気がするのだけど……。

 

 そして魚津城。
 今年の1月に、非常にプレイヤーが忙しくなるイベントの最中にするっと実装されちゃったもので、全く注目されずスタートダッシュがつかなかった。
 ただ、ガチャからは出る★5で、入手はできる。ぼちぼち行き渡っていっているところだろう。改築も実装されている。

 そして前述の通り、「おまえらこういうの好きやろ」と直球を投げてくるような眼鏡キャラだ。
 現在、城プロで人気のある眼鏡キャラは、「お○ぱいメガネ」という身も蓋もない愛称で呼ばれており、該当者が篠山城・ネスヴィジ城・高天神城と3人いる。
 で、魚津城は第四のお○ぱいメガネだ。
 「城プロのプレイヤーはこういうのが好き」という球がまともに来たんだから、該当者に気づかれ次第、どんどん存在感を増していく可能性は高い。

 

 これから期待の眼鏡城娘、いなければガチャを引き、いるのなら倉庫から出し、羅紗とツバサ[特]・★5コマネを食わせてレベルをあげて、実戦投入しよう。ブレイク前に推しておくべし。