選挙のときには選挙広報読むことにしてるのだ。
先に私のバイアスを示しておくと、支持政党を聞かれたら立憲民主党と答える。
維新は嫌っている。トップダウン的でみな同じことをいう傾向が強くて、議員個々人に「この人だからこれをやる」といったことが見えにくい上に、トップが攻撃的・強権的過ぎて気味が悪い。たまに個人として目立つ議員は悪目立ちか不祥事。
共産党もトップダウン政党で、一部を除くと候補者の魅力が見えないのは維新と同じ。しかし、たまに個人として浮上する人の質は高いと思う。
自民党は人によるんだけど、本来はその人による幅が広い政党だったはずなのに、今は中枢のいうこと聞かないとあからさまに不遇な扱いを受ける状態になってるように思う。その中枢が真っ当で魅力的であればまだしも……
国民民主党は、なんというか、本当によくわからない。社民党も私の視界内に現れることがなくなってしまった。
大阪選挙区(定数4)
維新の東とおるが抜け出していて、次点グループに自民・太田房江、立憲・亀石倫子、維新・梅村みずほ、公明・杉ひさたけ、共産・たつみコータローが競り合ってる情勢のようだ。
野党支持者の私からすると、立憲・共産が1議席ずつ取れればいいけど、最悪どっちも落ちるという目もあって悩ましいところ。
まあでも、選挙で悩めるのは幸せなことかもしれない。前の衆院選では私は大阪19区だった。丸山穂高か谷川とむか、勝ち目のない共産党候補のどれかだよ。そしてああなった。
野党側の候補を一本化してたら1議席は確実だろ、というようなことを言い張ってる人もあるとか。
そりゃ1議席取りたいだけならそうだけど、4人区で1人しか戦わせられませんなんてのも敗北主義みたいな……。それに、選挙区に候補立てないと比例も弱くなってしまうから、大阪で候補を統一しちゃうなんて無茶だよ。
で、広報は以下から。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/36046/00326281/kouhou_senkyoku.pdf
東とおる(日本維新の会)
維新の会がやってることは書いてあっても、東徹がやったこと・やりたいことを書いてない。本当にない。
なんというかその、16年も国会議員やってて、「私は議員としてこれをやってきました!」といえることないんかいな。
「国家公務員定数増反対」といつもいうてることをまだ書いてるけど、維新はいつまで公務員叩いて減らせばいいといい続けてるんかな。市政の方になるけれど、維新市政下ではどうも、目立たない小さな公園が酷い状態に荒れてたりとか、行政能力落ちてる気がしてる。
議員定数減・報酬カットともいうけれど、議員の数が減ると国民の声がより議会に通りにくくなる、定数減っても勝ち残れる与党議員の権力が強くなる、というリスクに対して、数人分の議員報酬が減らせる程度のメリットって釣り合うかな。
「身を切る改革、実行中!」というものの、「議員報酬の2割(月18万円)を震災被災地などに自主的に寄付」「文書通信交通滞在費(月100万)の使途公開」「企業献金受け取り一切禁止」とか。
その、「月18万円寄付してます(議員報酬=公費から)」っていうの、選挙公報に書くならもっと他にないのかと。18万円で議員として仕事するべきでないの。
賛同できることは「予防医療・予防介護の推進」かな。
これは大阪市もすでにやってるみたいで、どんどんやってくれれば。
総じて、維新の支持者ならこれでいいんだろうけども、維新支持者でない私が、東徹なら支持しようと思わせる要素はなかった。
比例代表の選挙公報ならこれでよかろうが、選挙区でこれじゃいい点はつけられない。
数森けいご(幸福実現党)
幸福実現党がいうであろうこと書いてるだけで、つまり平然と広報で生活保護バッシングをやったりもしている。
文章量が多いことはいいんだけど、「もうけましょ、おおさか!」とでかでかと書いておいて、その5か条に大阪を活性化させるようなことが「中小企業支援」くらいしかない。個別の意見はあるのかもしれんけど、全体的に構成をよく考えてない感じが。
かめいし倫子(立憲民主党)
LINE@、Facebook、Twitter、InstagramとSNSをずらっと並べ、よく発信しているハッシュタグ「#自由に生きちゃダメですか?」も書いてある。もちろんウェブサイトもある。
SNSを活用してる層が選挙公報を読むかというと、まあ、あまり読まない気はするんだけど、でも限られた広報のスペースで書ききれないことを発信してるという表明でもあるし、「どうせ読まれないからいらない」といういろんな方向を軽視する態度よりもよほど良いように思う。
日頃、弁護士としてもかなり面白い活躍をしている人だけど、そのプロフィールは小さめに書いてる程度。
大きく書いてる政策については、まあ、立憲の候補ならいいそうなことが中心か。
経済政策について、英国を引き合いに出してのナイトカルチャー支援という風変わりなことを打ち出している。あんまり他で聞き覚えがない着眼点。過去に弁護士としてそういうカルチャーに近いところと仕事してたからな。
まあ支持政党の候補だから贔屓目で見てるのも否定しないけれど、この人ならではの部分も見られて、平均よりは良い部類と思う。
あだちみきよ(オリーブの木)
オリーブの木、というのは知らない団体なのだけど、ウェブサイトのアドレスがあったので見てきた。今は黒川敦彦氏が代表で、市民団体の連合体みたいなもののようだ。
ちゃんと比例にも出ている。
しかし、「与党も野党も期待できないから立ち上がったのがオリーブの木だ」というくらいしか情報がない広報。候補のあだちみきよさんが何者かも全くわからない。
日本母親連盟の代表に推薦されてる、というのも、私にはマイナスに見える……
まあ、新しい団体でノウハウがないのもあろうけれど、広報としてはダメ。情報量がなさすぎる。
尾﨑全紀(NHKから国民を守る党)
ほんとにNHKに難癖つけるだけのことをもって、地方議会に議席とって国政にまで立候補してきてるからなあ。最初に泡沫だと笑ってた頃にはこんなことになるとは思わんかった……。
NHKバッシングと、「投票用紙にこのように書け」というだけしか書いてない。尾﨑氏が何者かもわからない。
梅村みずほ(日本維新の会)
維新の候補ながらも、「私が実現したいのは」と最初に主語を自分にしたメッセージから書き始める。維新候補の広報としては珍しく、まず「私」が出る。選挙広報はそうあってほしいと思う。
「維新の実行力」と銘打ったところがどうも怪しい。
「大阪・関西万博開催決定、経済効果は約1.9兆円」って、以前5000億っていってたのが4倍に増えてるのもようわからんし、ほんとにそんなにあんのかなあ。
「うめきた再開発で、1120億円の経済効果」というのも、よく見るとグランフロント大阪開業の2013年の数字と小さく書いてる。そりゃ開業年はでかいだろう。こういう細かい詐術を使うのが維新のいつもの手だ。
「G20サミット開催」ってのも、それで「OSAKAが世界のブランド都市として認知」って、唯一挙げるメリットがそんなことなの?
「所得制限を撤廃して教育完全無償化」とか「教育予算の対GDP比を他の先進国並みに引き上げ」とか、本当にそうすべきと思えることも書いてあるので、良し悪しが混在してる感じ。
維新の広報らしい部分が減点部分で、維新の広報らしくない部分が加点部分。
同じ維新でも、東徹よりは数段良い広報ではあると思う。
太田房江(自由民主党)
キャッチフレーズしか書いてない。何の具体性もない。市議選とかだとこういう広報が結構見られるけど、国政選挙でこれか。
勝てるのわかってるからこれでいい、という態度と見るしかないな。こういうのは有権者を舐めてる。
まあ自民党の候補はひとりだから、自民党支持者は入れてくれるんでしょう。
東徹と違って、党として訴えてるようなことすら書いてない。
ワン・イシュー泡沫政党の候補でも、ワン・イシューについては書いてるんだから、それ以下だ。
今回の広報の中では飛び抜けて最低。
浜田たけし(安楽死制度を考える会)
N国同様の、ワン・イシュー団体。
安楽死制度を導入して、自分で選べるようにしたいと。
選択肢として選べるようになっても、いい面はあるかもしれんとは思うのだが、しかし、これだけを政策として訴える候補を見るというのも、なんだか荒涼たる気分になるな。
広報が良いとか悪いとかいっても仕方ない気がする。
たつみコータロー(日本共産党)
思ったより広報自体には情報を増やしすぎない感じ。
現職として努めた6年で、質問200回以上、森友問題でびしばしやってたし、ブラック企業の実名を公表するように政治を動かしてきた、と実績にもさらっと触れている。
やってたことを思えば、あっさりし過ぎなくらいの書きぶりに思う。
「アベ政治を許さない!」式のアピールは本当に控えめで、「大阪の議席独占許さない」と書いてある程度。私ももう「許さんのはいいからどうやって戦うつもりかを訴えてくれ」と思えてるから、塩梅がいいと思う。
大阪で生活相談を9年で7000件もやってきた人で、共産党のアピールの中でも、年金・長時間労働・最低時給・福祉分野の給与改善・教育費用低減や無償化・保険料引き下げなどの、直接的に生活に関わる部分の訴えが中心。
自衛隊とか9条とか、原発やカジノ・都構想ですら、さらっと触れる程度に済ませていて、共産党の中でもたつみコータローが何をしたい人かははっきり表しているように思えた。
私は、比例でいつも共産党に入れるような有権者じゃないけれども、この選挙の大阪選挙区で、たつみコータローを選択肢にする材料にはなる選挙公報だと思う。
強いて言えば、意外にあっさりした書き方で、元々ある程度たつみコータローに注目してた私だからかなり補完できたけど、そうでない人には少しアピールが弱いかもしれない。まあ、共産党感丸出しの強硬なアピールは逆効果になりかねないから、難しいけれど。
あと、SNSはアイコンだけ記載した上で、「たつみコータロー」で検索するように水を向けているだけ。これは、全部アカウントをきっちり書いて直接アクセスできるようにすべきと思う。
にしゃんた(国民民主党)
スリランカ生まれ、もちろん今は日本人。
まあタレント候補ではあるけれど、すごい頭のいいインテリでもある。現在は大学教授。
イラストを多用して、キャッチフレーズ的な短い文章でのアピールだけど、全体的に若者や中小企業、LGBTやひきこもりなど弱い人に目を向ける姿勢は見える。
私はもっと文章でしっかり詰めるスタイルが好きではあるけど、これはこれでクオリティ高い広報にも思えるな。パっと見て目を引き、目を引いてから読むのが面倒と思わせない程度の文字数、そういうデザイン技術がある感じ。
ウェブサイトやSNS、Youtubeも、QRコードやIDを示してアクセスできるようにしている。
佐々木一郎(労働の解放をめざす労働者党)
労働者党というのもよく知らないが、第一次ブントから分離して紆余曲折しながら今に至る新左翼党派であるようだ。
「文章でしっかり詰めるスタイルが好き」といったばかりだけど、それでも圧倒されるほどにぎっちりと文字が書かれた広報。
「モリカケは安倍の権力私物化」「国民主権と矛盾する天皇制」などの激しい言葉も踊る。
まあ、いきなり暴力革命に走らずに議会に議席を持とうとする党派なら、穏健なんじゃないでしょうか。
杉ひさたけ(公明党)
当選できそうな与党議員ながら、なかなか自分の言葉が出ている。
大阪万博までの6年(=今回の議員としての任期)は、東京から大阪が主役の時代に変える重要な時期、という。
公認会計士・税理士で、米国の公認会計士試験にも合格したということで、3年連続で1000億円の無駄を削減したとのアピール。
軽減税率の導入や、携帯料金値下げも、自分が公認会計士議員としてやったことだといっている。その件にどこまで深く関与して動かしたのかなあ、という気もするが。
あとはまあ、景気、教育、高齢化問題と、公明党でなくても誰でもいいそうなところを改革するという程度。
国会議員歳費20%返上に挑戦する、というけど、しかしお金に強い議員なんだったら、「仕事してないから返上できるような遊び金ができるんだ、私は一円のムダもなく使い切って実績に残す」といってほしかった。
SNSなどは、アイコンを示して検索に任せるスタイル。無いよりは良いが、きっちりIDを書いてるよりは落ちる。
総じて悪くはないと思うけど、よいとまで思わせるほどでもないかなあ。
まとめ
「どうせ通るからこの程度でいいよ」と言わんばかりの候補がいるけれど、公的な発信チャンネルを真面目に使っていない候補は軽蔑されるべきと思う。
政党のいうことだけ書いてるような候補も、だったら比例で出ろよっていう。
当落が争われる候補に関しては、いずれもしっかりやってる感じ。政党よりも自分の意見を前に出して、限られた紙面でよく訴えていたように思う。政策への賛否はともかくとして、ちゃんとした候補も多いと思えた。
ワン・イシュー政党の、正直通る目がないと言わざるを得ない候補では、安楽死制度を考える会が印象的だった。まあ今回の選挙では投票してる場合じゃないけど。