先日訪問した美海&さくらフェアで、8月5日に「豆掛軸制作ワークショップ」があると聞いて二度目の訪問。
フェア参加キャラクターの「掛物継美」は、母体が片山表具店さんという表具屋さんで、そちらの主催で今回の豆掛軸ワークショップがある。
表具、というと、紙や布を張って仕立てたものを広く指すらしいのだけど、具体的な物だと掛軸や巻物、屏風とかも色々入る。
今回作るのは掛軸。
キャラクターグッズなどでも、タペストリーはちょくちょく作られている(例)ものだけれど、掛軸は一見すると似てる、でも作ってみるとぜんぜん違うモノだ。
今回作る掛軸も、サイズの小ささとか、作業時間が限られる、やるのも素人だとかの事情もあり、色々略式になっているけど、掛け軸たらしめる要素は外してないはず。
さて、まず使う道具が登場する。
刃物は、見た目は普通のカッターナイフ。でも一般の民生品とは違うらしく、ずいぶん切れ味が良かった。
表具だけに当然、糊が要る。見た感じは真っ白で、水を加えて薄く広げられるようにしたり、固めで強く止めたりといった調整ができる糊だった。最初木工用ボンドかなんかと思ったけどもちろん違う。
また、あまり一般家庭にはなさそうな、幅広で厚みの薄い刷毛。狭いところにのり付けしたり、あるいは薄い糊を広く塗ったりと活躍。
他には棕櫚の毛の硬い刷毛やら、細かいところを押さえる竹べら、定規やらいくつか。
でもって、実際の制作に。
本式の掛軸制作だと、まず表面の方に、費用も技術もかかるところかと思う。書とか画を金襴緞子の布に張ったりとかで。
しかしそこは到底私ら素人の手に負えるものではなく、今回はイラスト自体と一文字や風袋などが布地に印刷されたものを使う。
作業はほぼ裏側で、まず端っこに耳をつける。
細長い紙の端っこにだけ、薄くて広い刷毛でさっと糊をつけて、布地に貼る。
単なる糊付けだけど、道具が違えば普段と違うことしてる感が出る。多分熟練すると一瞬でぺっと糊付けが終わって速いんだろう。
次は、裏に貼る紙に薄く溶いた糊を塗る。刷毛で全体、均一に。
でもって表側の布を置いた上に、裏紙をべしゃっと載せる。シワがあるのは硬い刷毛で押し出すように均す。隙間のできる部分も竹べらで密着させる。
ここで貼った裏紙は宇陀紙というもので、本式の掛軸にも使われる和紙。
名前通りに奈良の宇陀で作られるコウゾ紙。強靱かつ伸びたり縮んだりしにくくて、表具に適した紙だとのこと。
裏紙も、本来は肌裏・増裏と違う種類の紙を貼って三層になるらしいけど、ここは略式。
宇陀紙だと強いから素人でもなんとか扱えそうな感じだったけど、もっと薄いとか弱い紙に糊を塗ってシワなく貼り付けるとか、ちょっと無理そうかな。
この状態で、しばし乾燥に。
乾いたら、板からひっぺがして、はみ出る部分の裏紙をカット。
上下のところは、先につけていた耳に裏紙が重ねられて補強されてる状態に。
でもって軸先、一番下の部分をとりつける。
ちょっと偏っちゃった。斜めに取り付けてしまうとまずそうだったので、傾きに集中してたら左右がずれた。
タペストリーだと袋状に縫ってるところに木の棒を通してるだけなんだけど、掛軸だと棒に糊で貼り付けてしまう形。
でもって一番上、半月も糊付け。
タペストリーだと上下ともに丸棒を通してあるけれども、掛軸では上は丸棒ではなく、半月という名前通りに、半円断面の棒になっている。
ここんところはアニメやマンガでも間違われてることがよくあり、掛軸警察の目が光っているという噂。
保管するときは巻いておけるのが掛軸。巻き止めるなら一方は半月形が合理的。
でもって、最後に緒をつける。
半月に直接取り付けてあるのが掛緒というもので、つるして掛けるときはこの緒を使う。
タペストリーだと、上に通してある棒の端からワイヤーが出てたりするけど、掛軸だとこのように半月上部に止めてある。ここも掛軸警察のチェックポイントだ。
それから、掛緒に取り付けてあるのが巻緒といって、名前通りに掛軸を巻いておくときに使う。
というわけで、掛物継美豆掛軸が完成。
やっぱり確かな手を動かす楽しみ。もちろん私の手では少々できの甘い部分もできるけど、そこも含めて。
完成してみれば、裏に和紙の貼られたしっかりした感じといい、一見似てるタペストリーとの違いもよくわかる。
触ると違いがよくわかるのも面白いな。ネット時代で、絵や文章だとデジタルで無数に複製できるようになっちゃったけれど、手触りは実体物ならでは。
ホームページの方では、同人グッズやノベルティなどでオリジナル豆掛軸の制作を請け負ってくれるとのこと。
ラミカと便箋だった私の若い頃と違って、最近はびっくりするような同人グッズが色々製作されてる時代だけど、掛軸だったらなかなか他所にはないのでは。
(今回のワークショップで私が作ったものと同一ではないと思うので、詳しくは問い合わせを)
ちゃんと巻き止めておくこともできる。
もちろん巻き癖はつくし、サイズが小さいので軸先が軽く、吊っておいてもなかなかまっすぐに戻らない、とかはあったけれど、まあ巻いたら癖は当然つくものだということで。
まあ完全に美品状態を維持してコレクションしたい人は巻かない方がいいかもしれないが、私は正常の扱いの範囲で起きた変化は瑕疵とはみなさない派。
ということで、実に楽しいワークショップでした。
次回開催の予定などは今のところないみたいだけど、掛物継美のTwitterなどチェックしておけば、やるときにはアナウンスされるんじゃないかな。
その後の美海&さくらフェアでは、紀州式マンカラという古代ボードゲームが持ち出され、シンプルルールゆえにムキになる熱い対戦が繰り広げられた。
「マンカラ」というと、こういう石と区切りを使うゲーム全般を指すらしいんだけれど、紀州式はウィキペで挙げられているのよりもうちょっとシンプルな形かな。
- 穴はそれぞれ5つずつ、種はすべてに3つずつが初期配置
- プレイヤーのできる行動はSowingのみ(Sowingの意味はウィキペ参照)
- Sowingは、ストアの穴にも撒き、さらに敵陣にも撒いていく
- ストアに撒かれた種は、単に取り除かれ点数にはならない
- Sowingの最後がストアで終わった場合、再びSowingできる(マルチラップルール)
- 自陣の種がすべてなくなると勝利
と、言葉で説明すると長くなるけど、やれば一度で覚えるような簡単なもので、しかしやり始めると熱中してしまう。楽しい。