堺風の頭部

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Q-S1のRAW現像(初期パラメーターの謎)

 私のQ-S1ももう二年くらい使ってるというのに、今頃気付いたことなのだけども。

 なんか、カメラ内現像と、PCでRAW(DNGファイル)をデフォルト設定でそのまま現像したものとが、かなり異なってしまう。純正のPENTAX Digital Camera Utility 5でやってるんだけども。
 K-70のRAW(PEFファイル)なら特に問題なく、ただデフォルトで現像するだけで同じ絵が出る。

 

 Q-S1のDNGファイルには、適切な現像情報が記録されないみたい。
 それで、一部のパラメーターが決め打ちにされてしまうらしいのだが、その設定値があんまり良くないように感じる。

 ちょっと比べてみた。

 

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 まずこれが、DNGファイルに含まれるJPEGプレビューファイル。(IrfanViewなどでDNGファイルを開こうとするとこれが出る)

 これを「カメラ内現像」と呼ぶ。

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 で、こちらが、PENTAX Digital Camera UtilityにDNGファイルを読み込ませ、デフォルトパラメーターで現像・JPEGに書き出したもの。
 これは「デフォルト現像」と呼ぶ。

  • カメラ内現像がややマゼンタ寄りの色合い、デフォルト現像がややシアン寄りの色合い
  • カメラ内現像が高コントラスト、デフォルト現像は低コントラスト
  • デフォルト現像は、わずかに周囲がトリミングされている(カメラ内現像のほうが写っている範囲がわずかに広い)

 見比べてすぐわかるのはこの3点。
 このうち、トリミングに関しては設定の余地がなかった。

 それから、ノイズリダクション設定も怪しくなる。

 

ノイズリダクション

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 これはデフォルト現像したものを、等倍で切り出したもの。
 えらくディティール感が潰れてしまっているが、こんな画質になってしまうようなノイズリダクション設定が、決め打ちで設定されてしまう。
 このカットでは、ランダムノイズ除去が52、偽色信号抑制が102と、かなり強い。

 このカットはISO200・F3.2・1/1000秒で撮影されている。(ISO100ではないのは、おそらくオート設定していたシャドー補正が働いたものだと思う)
 十分光量があるカットであって、そんなに強いノイズリダクションを掛ける必要はない。

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 で、現像ソフトでノイズリダクションを切れば、こんなに解像感が上がる。
 灯籠の石肌も再現され、木の葉や桜もぼんやりしない。門の上部に金網がかかっているのも見える。

 コンパクトデジカメ用の裏面照射型CMOSセンサーだから、ある程度ノイズリダクションを積極的にかけるのはわかるんだけど、明らかにおかしいくらい強い。

 

コントラスト

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 改めて、デフォルト現像したもの。
 門の中の暗い部分が持ち上げられていて、よく言えばダイナミックレンジが広い、悪く言えば眠いように見える。

 

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 これは、コントラストを調整し直したもの。「コントラスト調整現像」と呼ぶ。
 こちらのほうが、カメラ内現像に近いように思う。

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 コントラストの調整は、コントラストのスライダーを調整するのではなくて。
 現像のカスタムイメージ設定のところ、上から2番めの、コントラストに上下矢印がついたボタンをクリックすると、下から2・3番目のスライダーが有効になる。
 このふたつを、一番左にまで動かしたのが、上のコントラスト調整現像。おそらくハイライト・シャドー補正と関わる設定だと思う。

 

 カメラ内現像とコントラスト調整現像を並べると、

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 コントラストの差はかなり小さくなったように思う。同じにはならないが。

 

色調整

 さらに、色がカメラ内現像のそれに近くなるように調節してみた。

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 こんな極端な設定になったが、カメラ内現像と並べてみよう。

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 上がカメラ内現像、下が色を調整した現像。
 まだまだ合致しないけど、まあある程度は近づいたか。
 しかしこれだけ似せるために、調整スライダーを端まで動かすような極端な設定にしているわけで。

 どうも緑の発色が顕著に違うのが、右上の木の葉に明らかなんだけど、これは調整では収まらない感じだ。

 

リバーサルフィルムモードが楽

 一枚一枚現像を追い込むのは、あまりにも面倒すぎる。
 気楽な現像手段、あるいは逆に、デフォルト値での現像が顕著に悪くなるようなカットを予想することはできるだろうか。

 とりあえず今回の撮影で、見るからにコントラストの低下が顕著だったカットを選んでみた。

 

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 まずカメラ撮って出し。

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 デフォルト現像。あからさまに眠い。とにかく白飛び黒つぶれを起こさないようにしてるかのようだ。
 多分シャドー・ハイライト補正が過剰に働いている。

 

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 で、手っ取り早く簡単に現像する手段を探ってみると、カラーモードをリバーサルフィルムにしちゃう手があった。
 このモードは露出がシビアになるので、-0.3evしてみると、こういう上がり。
 カメラ内現像にも近いし、画質としてもキリっとしてるし。

 リバーサルフィルムモードは、シャープネス設定以外の全項目が変更不能になるので、つまり何らかの値に固定されるんだろう。
 おかげで、奇妙なデフォルト値を設定されることがないようだ。

 私がわざわざRAWで撮ってるのは、少々露出外しても現像でごまかせる、というずぼらが目的。現像が面倒だと困る。
 なので、リバーサルフィルムモードで撮影しておけば、現像はノイズリダクションを外して露出だけ調整すれば済む。

 

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 また、この設定で現像すると、リバーサルフィルムモードでの現像にかなり似た。

 彩度や色相をいじると、緑はいまひとつ動いてくれないのに、紫の花はすごく顕著に反応する。

 

 先のお寺の山門のカットに比べると、ハイライト部のコントラスト設定(下から3番目)が逆になった。
 このあたりは、カメラ側での「ハイライト補正」「シャドー補正」の設定値によって引っ張られてるかもしれない。
 今回の撮影は、どちらもオート設定にしてしまった。今後はオフにして撮影して、現像時に必要なら設定するようにすべきか。

 

まとめ

 DNGファイルをPENTAX Digital Camera Utility 5に食わせてデフォルトで現像するだけでは、なんとも結果が悪い。

  • 勝手に僅かにトリミングされるのは対処法なし
  • リバーサルフィルムモードで現像すると簡単
  • ハイライト補正・シャドー補正は撮影時にオフにしておくといいかもしれない
  • ノイズリダクションは都度オフにするしかない(カメラ側ではオート・弱・強の設定しかないので無効にできない)

 なかなか難儀だ。

 

上記設定で撮影&現像してみた

 さて、上記の通り、「カラーモード:リバーサルフィルム」「ハイライト補正・シャドー補正オフ」での撮影を実際にやってみた。
 ついでに、記録モードはRAWのみではなくRAW+JPEGにした。

 

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 1枚めがカメラ内現像、2枚めが現像ソフトでそのまま現像。

 予想通り、最初からリバーサルフィルムモードで撮影していれば、結果の差がほとんどない。
 現像ソフトを使うほうがごく僅かにコントラストが高い仕上がりになるが、並べても見分けられないレベル。

 ただ、強すぎるノイズリダクションが勝手にかかることは変わらないので、それの解除は必要だった。

 また、レンズが01 STANDARD PRIMEで起きていた、現像ソフトを使うとごくわずかにトリミングされる現象。
 これは、06 TELEPHOTO ZOOMでは起こらないようだ。

 

 それからカメラの記録モード、RAW+JPEGと、RAWのみとで生成されるDNGファイルが違う。

 RAWのみだと、1920x1440 (330万画素)に縮小されたプレビューがDNGに埋め込まれ、ファイルサイズは18MB程度になる。
 RAW+JPEGだと、4000x3000 (1200万画素)のプレビューがDNGに埋め込まれ、ファイルサイズは21MB程度になり、別途4MB程度のJPEGも記録される。

 RAW+JPEGを使ったことがなくて気付かなかったけど、この仕様はおかしいな……
 JPEGの分だけファイルサイズも損するし、Q系はSDカードがUHSに対応しないから、記録も体感できるくらい遅くなる。困ったものだなあ。

 

 Qシステムって、もしかして他所のODMじゃないかなー、と思ってたけど、こうもソフトウェアが不整合だったり詰めが甘かったりする感じなんて、そうなのかなあと思わせる理由になっちゃうかな。