年末に変なもんを拾ってきているが、SHARP Mebius MURAMASA PC-MP50Gを手に入れてきた。
あっ写真に自分が写り込んでいる(ガンマあげようが顔がわからないのは確認済み)
SHARPはUltrabookなんて言葉ができる前から極薄モバイルPCに着手していて、そういう製品のペットネームがMURAMASAだった。
いいよね村正。多分SHARPの中の人はWizardryファンなんだろう。まさかMURASAMA BLADE!にするわけにもいかんだろうが。
当初のMURAMASAは本当に刃物みたいに薄いからその名前で、後にMacbookのどれかが「世界最薄」とか言い出した時に「本当にMURAMASAより薄いか?」と疑ったりしたくらいだった。
しかしこのPC-MP50Gは、ブランド末期によくあるコンセプトズレを起こしていて、特に薄くはない。
じゃあ私がわざわざ拾ってくるような特徴があるのかというと、CPUがEfficeonだという特異な点がある。
目次
Efficeonとは
Efficeonとは、と語るには、まずTransmetaというメーカーと、彼らが最初に送り出したCrusoeというCPUから入らねばならない。
が、まあ、詳しいことはうぃきぺに書いてある。
ざっくりいうと、IntelとAMDが消費電力も構わず高性能化で殴り合ってた頃、消費電力を下げ、今の言葉で言う「ワットパフォーマンスが良い」という方向性のCPUとしてTransmetaが送り出したのがCrusoeだった。
そして、カバンに入れて徒歩でノートPCを持ち歩くジャパニーズ・ビジネスマンに需要があり、Crusoe搭載モバイルノートが日本のPCメーカーの多くからリリースされ、ヒットした。
Libretto L1/060TNMM L1/060TNCM
10型ワイドモニターの小型ボディに、ラージバッテリーなら最大14時間持つというのは、なかなか強烈なものがある。
しかしCrusoeは、はっきりいって性能が悪かった。
ベンチマークでもいまいちだけど、かなり独特な構造のCPUなせいか、体感にくる変な癖のある遅さがあって、どうにも使っていて苦しかった。
いくらモバイルでも最低限必要な性能があるし、また要求も年々上がるから、足切りを食らうのも早かった。値段以外は、数年前のネットブックとか、最近のWindowsタブレットみたいな感じ。
IntelがPentium 4に走ってますますモバイルから遠くなっていったおかげで、Crusoeにもチャンスはあったんだけど、Transmetaもまたモタついて続く製品がなかなか出せなかった。
そして2004年、4年の歳月を経てようやく登場したのが、今回のEfficeonだ。
しかし、すでにIntelが2003年に大ヒット作Pentium Mを出して、早くもモバイル市場を席巻する勢い。2000年に唯一無二だったCrusoeとは状況が違う。
今回は、日本メーカーもほとんど見向きもしなかった。
それがなぜか、SHARPだけは、Mebius MURAMASAにEfficeonを選んだ。
今回のMURAMASA PC-MP50Gは、Efficeonが一度マイナーチェンジしたTM8800を搭載している。これがノートPCとしては最後のEfficeon搭載モデルだろう。
PC-MP50Gのスペック
仕様表によると、CPUは1.6GHzのEfficeon TM8800。
その他は特に増設などもなく、メモリーは標準の256MB、HDDも40GBのまま。
流石にメモリーは増設したいが、スロットが一本。256MBを入れ替えるしかない。DDRのSo-DIMMだから512MBくらい捨て値で買えるとは思うが。
Efficeonが24MBのメモリーを予約するので、使えるのは224MB。
HDDも12年モノだから、いつ壊れるかわかったもんじゃない。しかし現状は大丈夫そうだ。えらく当たりの個体だなあ。富士通製。
交換にほとんど完全分解が必要なくらいめんどくさいみたいで、触りたくないなー……。幸いなのは、1.8インチじゃなく2.5インチ。
ほか、BIOSを見ていてわかったが、古いのにUSBブートに対応していた。HDD扱いで認識されて起動してくる。
OSがない!
さて、手元に来た個体はOSがない。
元々Windows XPプリインストールだが、消去されていた。
まあ、安易に行くならUbuntu系のLinuxとか入れてやるところなんだけど。
しかし、手元のUbuntu 14.04 32bitなど、Ubuntu系インストールディスクを入れてみても、変なところでリブートがかかって進まない。メモリー足りないかな。
Linuxbean 12.04ならいけるかと思ったが、あいにくこれもインストーラーがクラッシュして最後まで行けなかった。
FreeDOSを入れてみた
そうなると、とりあえず何か動くようなやつということで、FreeDOSを試してみた。
オフィシャルなインストーラーは使わず、一旦Rufusというツールで起動ディスクを作った。
Rufus - Create bootable USB drives the easy way
これを使うと、シンプルなFreeDOSが立ち上がるだけのUSBメモリーが作れる。
DOS/Vにはならないから英語表示のままだけど、キーボードレイアウトは日本語キーボードにできるようにプリセットされている。
そのUSBメモリーに、FreeDOSのイメージから取り出した各種コマンド実行ファイルを適当にコピーしていく。
コマンド関係は\BINディレクトリにでも置いて、AUTOEXEC.BATにパス通すように書いておけばいい。
まったく正規のインストール手順ではないが、MS-DOSなんてそんな厳密なもんじゃないので、実行ファイルがディスクにありさえすれば実行できる。
(正規のインストール手順は、Rufusを使ってFreeDOSのディスクイメージをUSBメモリーに書き込めばできると思う)
FreeDOSにはテトリスクローンやNethackなども入っていて、それらを起動・プレイすることもできた。
もちろんFDISKやFORMATもある。
FDISKで内蔵ハードディスクにパーティションを作り、アクティブパーティションに設定。それからFORMAT /Sして起動ディスクにする。
それからXCOPY /SでUSBメモリーからHDDへとファイルをコピーしてやれば、内蔵HDDからFreeDOSが使える環境にできた。
まあMS-DOSなんて使い慣れたもんだから、このへんは平気。俺は中学の時分パソコン部だったんだぜ。
とはいえ、FreeDOSくらいなら40GBもあるHDD使わなくても、余り物のSDカードを安物のカードリーダーに入れて運用するくらいでいい気がするな。
Haikuを入れてみた
IntelではなくAMDでもない、TransmetaのCPUには、WindowsではなくLinuxでもない、第三勢力的なOSが似合うのではないか。
まあLinuxが全然動かんかったから他を試すしかないんだけど。
そういうわけで、Haikuいってみよう。
BeOSのオープンソース化されたやつ。
Haikuもまた、最新の開発版は起動しなかった。
一応Official VersionとなっているR1/Alpha 4.1ならUSBから起動でき、HDDへのインストールも出来た。
インストール後、日本語入力を入れて、WiFiを設定して、ブラウザを使うくらいのところへは持っていけた。一応ウィンドウシステムでネットにアクセスできる。(古すぎてセキュリティが怪しいが)
ただ、このバージョンだとパッケージ管理のHaikuDepotが入っていなくて、アプリの追加などが困難だ。今のところHaikuDepotのインストール手段がわからない。
nightly imagesの開発版で、hrev48421以降なら最初から入ってるということだ。
もうちょっと落ち着いたら、セットアップメモを別記事にまとめようと思う。
distributed.netベンチマーク
さて、うちにきたPCは、distributed.netクライアントのベンチマークでその性能を測られることになっている。
Efficeonの実力はいかに。
まずOGR-NGの結果。
FreeDOS上のクライアントで測定したためだろうか、CPUとしては使えるはずのSSE2がエラーで使えていない。
それでもなかなか健闘している。
直接競合するのはPentium M 1.4GHzだが、あちらのTDPは22W。Efficeonは多分10W台(こちらの記述から推定)だから、ノートPCとして大事なワットパフォーマンスでは遜色ない。
ましてMobile Celeron 2.2GHzなんて、TDP 57.1Wだ。比較にならん。
さらにRC5-72のベンチマークでは、単純性能でPentium Mを超えてきた。すごいな。
もちろんこのベンチマークで性能の全ては測れないが、これくらいのパワーを低消費電力で出せるなら、なかなかの健闘といえるだろう。
まあ、それでもEfficeonは、商売としてPentium Mにまったく敵わず敗退していったのだけど。
こちらの記事では、Crusoe / Efficeonが量産効果が出ずに価格負けしたことと、内部構造ゆえの扱いづらさが指摘されている。
その他にも、Efficeonだとグラフィックチップが別途必要だけど、Pentium Mならチップセットに内蔵されていたことも要因として思い浮かぶ。作りやすさにもコストにも響きそうだ。
このMURAMASAもmobility RADEON 7500なんて搭載していて、Pentium Mで使われる855GMEのグラフィックよりはかなりパワフル。当時比較的軽いとされた3Dゲームなんかも遊べたそうだ。
もっとも、モバイルという用途に対して必要なパワフルさなのか疑わしいし、電池食いそうな気もするけど。
使用感など
同じ時代のCPUに比べて明らかに遅かったCrusoeに比べれば、Efficeonだったら必ずしもPentium Mに劣るというレベルでもなさそうだ。特にグラフィックを使うなら、mobility RADEON 7500搭載なのが強い。
Haikuのような軽いOSだったら、さすがに十分軽快に動いた。
しかしながらブラウザを使うと、今時のウェブがどんどんリッチになって重くなっていて、かなり苦しい。それはPentium M搭載PCでも同じことではあるが。
後のNetbookは安物だったけど、CrusoeやEfficeonのモバイルPCはむしろ少し高級な部類のはず。
このMURAMASAも、キーボードなんて実にしっかりした感触のパンタグラフで、今時のものより心地よい。
これならポメラ代わりにテキスト打ち機にする手もあるかもしれない。まあHaikuだとインプットメソッドがCannaだから、そこが辛いが。