日経サイエンス9月号の記事「脅威増す北朝鮮の弾道ミサイル」を(遅くなって)読んで寝て、起きたらミサイル撃たれていた。
せっかくなので、あちらの弾道ミサイルと、こちらの迎撃ミサイルについて、この記事を元にWikipediaあたりで少し情報を足してまとめてメモしておく。
だいぶメモっぽいので、変なこと書いてるところ多いと思うけれど。
北朝鮮のミサイル
火星12号 (KN17)
5月14日に撃ったやつ。(KN17はNATOコードネーム。東側の兵器に西側からつけた名前)
その時はロフテッド軌道、わざと高い角度で打ち上げてより高高度に届くような撃ち方をした。それで高度2000kmまで上がって、大気圏に再突入してマッハ15以上の速さで着弾した。
これは、大気圏突入の熱などを受けても弾頭の制御機構が壊れず、核弾頭を搭載してもちゃんと起爆できるという確認だったんじゃないか、との話。これは上手くいったとの話。
ロフテッド軌道ではない通常の撃ち方をすれば、500kgの弾頭で射程5000km、1トンの弾頭で3000kmくらいの射程がある、とのこと。核弾頭だと1トンくらいになるらしい。
平壌から東京までの距離は1300km。
今日撃ったやつもこれらしい。
火星14号 (KN20)
7月4日に撃ったやつ。
同じようにロフテッド軌道で、2800kmまで上昇した。
二段式でかなり出力があるようで、それだけ上げられるなら、通常軌道ならアメリカ大陸まで届く8000kmの射程があるだろう、とのこと。米軍認定のICBMになった。
7月28日にも撃って、高度3700mまで上げてきた。10000kmは射程があって、ロスやシカゴに届くと見られている。
北極星2号 (KN15)
パレードの映像に写っていて、軍事に明るい人らが「これはやばい」と騒いでた、固体燃料ロケット。
火星12/14のような液体燃料ロケットはパワーがあるけれど、ロケットを立ててからゆっくり燃料を注入しないといけない。
固体燃料ロケットは、燃料いれたまま運搬できるから速射性がある。また車両に搭載して移動できる。いつどこから撃ってくるかわからない。
射程は2000km以上。ロフテッド軌道で高度500kmくらいまで上がったとのこと。
その他
3月6日に、中距離弾道ミサイルを4発発射し、日本海にきれいに一直線上に並べて着弾させる、という実験をやっていた。
この時使ったのは、スカッドミサイルの改良型(スカッドERと呼ばれている)と見られている。
それから、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の北極星1号もあり、これは去年の8月24日に発射実験が行われ、ちゃんと飛ぶものだと確認されている。
ミサイル防衛
こっちがわにあるやつ。
PAC-3 (パトリオット)
ミサイルの迎撃は、「上昇中に落とす」「慣性飛行中に壊す」「落ちてきたところを迎え撃つ」と三段階あるが、パトリオットは最後の、落ちてきたところを迎え撃つタイプ。
なので、今回のように日本上空550kmを通過していった場合、パトリオットは出る幕がない。用途違いだし、まったく届きもしない。
迎撃できる範囲も、パトリオットを展開した場所から周囲数十キロ程度に限られる。そこに落ちてきた時のみ対応できる。
また日経サイエンスによれば、弾道ミサイルの落ちてくる速度がマッハ7くらいまでなら対応できるけど、先日の火星14号の実験ではマッハ15で落ちてきていて、これは対応できないのでは、とのこと。
SM-3 (スタンダード)
RIM-161スタンダード・ミサイル3 - Wikipedia
こちらは慣性飛行中に壊すタイプ。
地上ではなくイージス艦に配備されているもので、有事には日本海で迎撃にあたる。
しかしそんなに高いところまで打ち上げられるものではないようで、日経サイエンスによれば、最新型のブロックIIAでもせいぜい高度1000kmの迎撃が限界、とのこと。
最新型でないやつだと、今回の高度550kmもいけるかどうかギリギリくらいかな、というような話をテレビなどで聞いた。
中距離弾道ミサイルならいいけど、ICBMの火星14号となると難しそう。
THAAD
落ちてくるところを迎撃するタイプ。しかしパトリオットよりはかなり早めに、大気圏外で撃墜してしまう。
韓国に導入している。日本にはまだない。
韓国は中国に文句いわれている、日本もロシアに導入するなと警告されている。
THAADは大気圏外で使うものなので、普通の航空機などの迎撃には使えない、ミサイル防衛専用ミサイル。PAC-3は航空機の迎撃にも使える。
他にアメリカ本土にはGBIという、慣性飛行中に壊すタイプのやつで、イージス艦ではなく陸上から発射するものもある。
迎撃できるの?
日経サイエンスの記事は、「火星14号は、PAC-3でもSM-3でも迎撃できない」という論調になっていた。
しかしまあその、火星14号はアメリカを狙うためのものだと思う。日本なら北極星2号なりで届くわけだし。
「火星14号を、SM-3で迎撃できないようなロフテッド軌道で打ち上げれば、PAC-3で迎撃できない速度で落ちてくる」というのは確からしいんだけど、近くの日本を狙うために、わざわざアメリカまで届くICBMを使ってそんな撃ち方するかどうか。
まあ、核弾頭の数がすごく限られて、一発でなんとしても東京に落としたい、とか、そういうケースもあるかもしれんけど。
アメリカ向けの軌道で発射した火星14号だったら、飛翔高度は2000kmなんて高さにはならないはず。
もしかすると、日本海でこんごうやちょうかいがSM-3で迎撃できる高さになるのかもしれない。
ただ、宇宙空間だと領空ではない(どこまで領空かは諸説ある)から、領空外を飛びすぎていった北朝鮮のミサイルを宇宙空間で撃墜したりした場合、これは日本が先制攻撃を仕掛けたことになってしまう。
また、日本に打ち込むならICBMの火星14号でなくたって、中距離弾道ミサイルが新型から旧型まで色々ある。北極星2号、火星12号、ムスダン、ノドン、スカッドERなど。
これらも単発なら迎撃できるんだろうけど、本気で日本を攻撃する気でどんどん発射されたら、まあ追いつかなくなると思う。
あっちがやる気になったが最後、無傷で切り抜けるというのは無理。
身もふたもないけれど、北朝鮮がここまでになるまで止められなかったのが悪いなあ。
別に、日本のどの政権のせいだという話でもない。日本だけのせいでももちろんなくて、周辺国がみんなしてずっと、時に制裁したり時に手を差し伸べたりしながら北朝鮮を見守ってしまったから。
別に、さっさと戦争起こして北朝鮮を滅ぼしておけばよかった、なんて話でもない。
そんなんやったらもっと酷いことになるのは、ベトナムでも中東でもいくらでも例があるわけだし。
時間を巻き戻せれば、どこかでうまくいくターニングポイントでもあったんだろうかなあ。
そういえばあの、最近アメリカ海軍の軍艦が立て続けに事故起こして、全艦運用停止にまでなってた。一日二日で解除されているはずだけれど。
やらかしてたのがジョン・S・マケインとフィッツジェラルドなんだけど、どっちもSM-3を運用するミサイル防衛上重要な船のはず。
フィッツジェラルド (ミサイル駆逐艦) - Wikipedia
ジョン・S・マケイン (ミサイル駆逐艦) - Wikipedia
まあ日本から文句もいえないんだろうけど、あんまり誰も触れないなあ。米軍大丈夫なんだろうか。