「けものフレンズ」3話で、アルパカのカフェに設置されていた太陽光発電システムについて、見てわかって思いついた範囲で検討してみる。
また、それで充電したバッテリーから、ジャパリバスの性能についても想像してみた。
ソーラーシステムについて
みつびし
dアニメストアで見返して確認したところ、5×5の25セルのソーラーパネルが、3×4の12枚配置されていた。
5×5セル? それって三菱電機製では。私の知る限り、5列にセルを配置するのは三菱くらいだ。
5列がなぜ珍しいかというと。
セルの表と裏にそれぞれ+/-の電極があって、表の電極が隣のセルの裏の電極に接続される。それでどんどん直列に繋いでいく。端まで来たら、隣の列のセルに折り返して繋ぎ、また逆向きに繋いでいく。
そうすると、奇数列にしちゃったら、端のセルがパネルの対角になっちゃう。
この両端のセルの電極は、さらに配線を回して一箇所に持ってきて、パネル裏面に取り出してターミナルボックスをつける。
このとき、偶数列なら単に両側から配線を寄せるだけで大した苦労はない。それが奇数列の対角から配線するとなると、明らかに作りづらい。
だから、5列は珍しい。三菱がそれでも5列にするのは、何か理由があるんだろうけど、そこまで知らないなあ。
ジャパリパークは名前からして日本っぽいので、やはり日本製が納入されているのだろう。なぜSHARP・京セラ・Panasonicじゃなくて三菱なのかは……ジャパリパークの運営会社が三菱系列なんじゃないかな。
そうすると、望遠鏡とかの光学機器が出てきたら、ニコン製かもしれないな。あ、もう出てるか。マーゲイの眼鏡。あのレンズはニコン・エシロールに違いない。
しゅつりょく
三菱電機製だろう、とわりとどうでもいい推論を立てたところで、じゃあこのソーラーシステムはどれくらいの出力があるだろうか。
3話の映像で、バッテリーを充電器にセットした直後、アルパカが太陽電池パネルのすぐそばに立っているカットがある。これを見る限り、おそらく寸法は現行の太陽電池パネルと大差ない。
ちょうどよく、三菱電機のソーラーパネルには、5×5=25セルの製品もある。
三菱電機 三菱住宅用太陽光発電システム:太陽電池モジュール 245Wマルチルーフシリーズ
PV-MA1200MHという製品だが、サイズは850mm四方くらいで、出力は120W。劇中のパネルのサイズもその程度に見える。
ただ、少し気になるのが、カフェ屋上の太陽電池は、セル表面に見えている電線が2本しかない。
電線・電極をあまり増やすと、それに隠れて受光面が減る。しかし、2本の少なさだと、電極まで遠い部分が増えて集電ロスが出る。現行品では、三菱や多くの他社でも、3本になっている。
また、わりとセルの色が青っぽいことも、やや古い、または廉価なものと思わせる。色がついて見えるということは、その色の光を反射してしまっているわけで、最近の高性能なセルはほぼ真っ黒。
すると性能はやや落ちて、出力は100Wくらいしかないのでは。
そんなソーラーパネルが12枚、合計1200Wのソーラーシステムだと考えられる。
家庭用のソーラーでも、1.2kWというのは小さい。かなり控えめなものだ。これだけでカフェは厳しいだろうから、本来は系統からの電力も併用してるんじゃないかな。
ジャパリバス(EV)について
ばってりーようりょう
さて、1.2kWのソーラーシステムに、1時間くらい接続して充電できてしまう、ジャパリバスのバッテリー。
発電も充電も100%効率ではいかないから、1kWhのバッテリーと見ておこう。
車載用バッテリーとしては、どれくらいのものだろうか。
日産リーフを参考にしてみると、30kWhのバッテリーで280km走れる、とのこと。
ジャパリバスのバッテリーだと、1/30の容量しかない。同等の燃費なら、航続距離はわずか9km。ちょっと使い物にならない。
ただ、リーフのバッテリーは300kgくらいあるそうで、到底人間が持ち運んだりはできない。
どちらもリチウムイオン電池であれば、電力容量と重量は大体比例すると考えていいと思うので、1kWhのバッテリーなら重量10kg。これなら重たいが取り扱えるだろう。
もっと小型の乗り物で、電動スクーターがどんなものかも見てみよう。
E-Vino - バイク・スクーター | ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ・E-Vinoの場合は、バッテリーは50V/10Ahということなので、0.5kWh。バッテリー重量は6kgとのこと。
ジャパリバスの半分しかない小さなバッテリーで、E-Vinoは29km走れる。
ならジャパリバスは60kmほど走れるだろうか……と想像するのは少々乱暴か。
リーフとE-Vinoでは、航続距離の測定基準がぜんぜん違う。
リーフは、乗用車などに適用するJC08モードで測っている。停止・再発進を繰り返すし、時速80km以上で高速走行する場面もある。
E-Vinoは、体重55kgの人が乗って、時速30kmで定地走行して測っている。
リーフとE-Vinoは、走行する速度域も車重も全然違うから、燃費の測定法も違う。ではジャパリバスは、リーフとE-Vino、どちらに近いか。
しゃじゅう
ジャパリバスは、バスと言うには小さめだが、ミニバン程度の大きさはあるように見える。
だが、明らかに安全装備が少ない。運転台はドアもない、窓も入っていないように見える。客車も特に安全装置や凝った内装も見えない。
元々人間用に作ったものである以上、これで時速60kmとか、そんなスピードで走るとは思えない。ラッキービーストは結構事故っているから、この腕で乗用車並に突っ走られたら即日死亡事故発生だ。
この簡素な作りから、日産リーフのようにトン単位の重量があるとは思いにくい。乗用車よりはずっと軽いはず。また、車重が軽くて速度が低いなら、小さなモーターでも動かせるかもしれない。
ジャパリパーク園内用の簡素な移動装置、最高速度もせいぜい時速15kmとか、それくらいのものではないだろうか。
ジャパリバスの運転台、横から見ると、ホンダの屋根付き三輪スクーター・ジャイロキャノピーの雰囲気に近いように思う。前から見るともっと幅があるし、四輪になるが。
ジャイロキャノピーの重量が139kg。E-Vinoが68kgのところ、2倍ある。ジャパリバスだと運転台だけでもう一回り重そうだし、さらに客車もついてくる。
かなり軽量化された車両ということにして、なんとか客車込み200kgくらいまで軽くならんだろうか。
最高速度15km/h、車重200kgまで抑えられていれば、1kWhのバッテリーで航続距離30kmを実現できる……というくらいなら、なんとかいけるんじゃなかろうか。
ジャパリパークの技術水準って、ジャパリまんの供給関係とかの謎もあるけれど、検討可能な部分だと、現代技術と同等か、大きくかけ離れていないように見える。太陽光発電も電気自動車も、それくらいの水準に見えた。
こういうところが、「人類が最近滅んだ」という雰囲気にリアリティを与えてるかもしれないなあ。