大相撲九月場所は、番付のてっぺんが不在ながら、栃ノ心や貴景勝らがどうなるかも注目され、また若手力士の活躍での大混戦模様もあって、今回も面白い土俵だった。
なのだけど、また貴ノ富士関が付人を殴ったとのことで、土俵外で問題になっていた。
貴ノ富士は、新十両になった2018年3月場所中に付人を殴って怪我をさせていて、今回で二度目。それもあって、最大限厳しい引退勧告もあるかなあ、という話もある。
私は子供の頃、酷い体罰が横行する中学に入れられたせいで、心理的にだいぶダメージを負った。指導と称する暴力なんてのは大嫌いだ。
角界では、時津風部屋力士暴行死事件があり、日馬富士の傷害事件があり、今年の頭には鳴戸部屋の件もあり、貴ノ富士も二度目となると、相撲協会として厳しく対応しないと、そもそも角界が不当な暴力を否定する姿勢があるのかということを疑われる。
しかし、貴ノ富士に同情的な声もある。前回は顔を殴られて口内裂傷だから言い訳しようがないけど、今回は本当にこつんと小突いただけじゃないかという話もある。
本当に「こつん」だったら、さすがにそれで引退しろとは私でも思いにくいところはある。事実関係のことだから、はっきりしないとなんともいえないけれど。
また、貴ノ富士本人の主張だけれど、付人の方にも問題があったという話もある。本当に仕事ができなくて態度も悪かったと。
仮に付人に問題があるとすると、新十両に上がった(十両に上がると初めて付人がつく)その場所中に付人を殴って怪我させた貴ノ富士に、そんな出来てない付人をつけた親方の判断もどうなのかなあ、と思わなくもない。
貴ノ富士のいうことを信用していいのかも、現時点ではなんとも。
以前、いわゆるモラ夫と関わったことがあった。
彼は、私という外の人と会ってる間でさえ、ちょっと引くぐらい家族に対して罵声を浴びせていた。外の人の目がなければどうなるのか不安だった。
それを指摘したら、「これくらいやられるだけの理由がある」と、なんというか、自分は正しいことをしていると露ほども疑っていない感じの態度で言い張っていた。
貴ノ富士の言い分も、この類かもしれない。
ちゃんと事実通りに語っている可能性を全否定するわけじゃないけれど。
……と、ここまで書きかけていたけれど、相撲協会の調査結果が発表された。
やっぱり、「こつん」なんて話ではなさそうな殴り方だったらしい。
名前の代わりに「ニワトリ」などと呼ばせているあたりの陰湿さも、たまらないものがある。
確か、殴られた後に付人が部屋を逃げ出してしまって、それで騒ぎになって発覚したという流れだと聞いたけど、脱走なんて一発だけ殴られたことだけでは起きにくいと思う。恒常的にパワハラを続けてたんじゃないかなあ。(そこまでは書いてないから、私の想像ではあるけど)
上申書を出したときに出ていた「相手が悪いから俺が殴らざるを得なかった」というような言い分も、私が見たモラ夫と同じ類の態度だったんだろうと思う。
貴源治も巻き添えみたいに処分受けてたけど、彼は彼で新弟子いじめをやっていたとのことで。これも陰険で嫌な話だなあ……。
ところで半月ほど前に、大学野球の監督やってた人が、体罰に依る指導を改めたという体験談を読んだ。
ちょっと読むと明らかなんだけれど、暴力を我慢することによって、不眠になり、壁を殴って穴をあけ、トイレでひとりで大暴れするなどという常軌を逸した行動をしている。
私には、依存症と禁断症状のように見えた。
暴力をふるうということで快感を感じるように脳の回路ができあがってしまい、我慢するのが困難になる。
そもそも、鉄拳や怒鳴ることを「我慢する」というのが、暴力が快楽となってしまっていたことが表れているように思う。
で、公共の場とか人前で暴力をふるった、っていう話なら、何かその時限りの事情があって激怒して手が出ちゃった、なんていうこともあるとは思う。人間誰でも怒るときは怒る。
しかし、家庭内とか、野球でいえば練習中とか、相撲でいえば部屋の中とか、そういう内々の暴力が、1回で即座に発覚して問題になるなんてのは珍しかろうと思う。
内々で済ませられるシーンだったら、目撃した人がいてさえ、なあなあで流されてしまったりもする。
私が、モラ夫が奥さんにひどい罵声を浴びせてるところを見た時でも、その場はびっくりして何もいえなくて、後になって別の機会で指摘するくらいが精一杯だった。
内々の暴力が表沙汰になるまでには、暴力中毒に陥った者が、何度も繰り返した末に他人に見える形でやってしまうとか、被害者が表にだして発覚する、それがほとんどだろうと思う。