堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

昔のアイマス楽曲では「shiny smile」が好き 

 2019年9月17日でもって、アイドルマスター ディアリースターズ発売から10年であったそうだ。私の中では「比較的新しい作品」と思ってたのにな。

 

 私の中では、アイマスの楽曲を一番気に入って聞いてたのも、大体DSの前後の頃(Live for You!とかSP、アイマス2くらい)のものだ。
 「プリコグ」「Kosmos, Cosmos」「フタリの記憶」「Alice or Guilty」あたりが好きな曲。

 一番好きな曲をひとつ選べといわれると、「Kosmos, Cosmos」かどっちか迷った末に選ぶのが「shiny smile」にすると思う。

 

  「shiny smile」の良さに関して、うまくまとめてあるblog記事があった。

catfist.hatenablog.com

 メロディの疾走感と、「走る」ような歌詞が噛み合っててね。

 

 けれども、私はこの曲、もう一枚含みがあるようにも思うのだ。
 なんかこの曲、「輝く未来を夢見て走り続けるような」とストレートに受け取るには、どこか、妙な暗さがなかろうか。
 この歌詞にしては短調のメロディだし、アレンジもそれほど華やかではない。醸し出されている疾走感に添えられているのが、よくいっても涼やかな爽やかさ、私が感じるままにいえば、うそ寒い。


petitlyrics.com

 歌詞を全部見るとこうなんだけれど。

 

 この歌詞、ほとんど全編に渡って、未来のこととか、こうしたいという願望しか語っていない。
 明るい未来だけ語るなら、当然明るい雰囲気の歌になる。

 なのだけど、「決して明るくない現状がある」ということが同時に読み取れてしまうと、一転して、明るく語られる未来が、未だ叶わない夢でしかなくなる。

 

 「shiny smile」の歌詞の中で、現在起きていることが語られているところが2箇所だけある。
 「お気に入りのリボン うまく結べなくて 何度も解いてやりなおし」という冒頭がまずひとつ。
 これは見ての通り、現在の行動の話をしている。

 それから「泣きそうな思いを乗り越えたら」という、終盤のフレーズ。
 「坂道続いても諦めたりしない」のところなら、「たとえこれから坂道が続いたとしても」という未来を仮定するフレーズと解釈もできる。
 でも「泣きそうな思いを」ではそうならない。未来を仮定するなら「泣きそうになっても」のはずだ。だからこれも、現在、泣きそうな思いをしていると読み取るしかない。

 

 そうすると、この歌で語られる現状は「リボンがうまく結べない」といううまくいかない事態にあって、「泣きそうな思いをしている」ということになる。
 「リボンが結べない」ってのは、もちろん隠喩だろう。リボンの似合うかわいい姿、つまり愛されるアイドルになれないとか、そういう意味のはず。でなければ泣きそうな思いまではしない。

 となれば、前向きに語られていることは、そうあってほしいと望む未来のことでしかない。
 泣きそうな思いをしながら、そういう夢をみている歌、ということになる。

 

 疾走感があるのに、なぜか短調のメロディで静かなアレンジ、というこの曲のちぐはぐさは、私も聴いていてなんか違和感があった。
 それで歌詞を見ると、輝く未来を夢見る前向きな歌詞っぽい。しかし、聴いていてなぜかそこまで輝かしい歌ではないように思える。なんだか引っ掛かりがあった。

 私が「shiny smile」が好きだというのは、その違和感のせいだった。
 何か仕込まれてる曲だろう、ただの歌とは違うだろう、と思えていた。

 それを、「ままならない現状で、輝く未来を夢見てそれに必死ですがる歌だ」と解いてみれば、実にヤバい。一層好きになるね。
 中島みゆきがやる、明るいメロディに乗せて、えげつないほどの歌詞を、やけくそみたいに歌う技法と通じるものがある。