ディープインパクトも死んでしまった。まだ17歳だったというから、なんとも惜しいものだ。
ディープインパクトは、産駒がデビューした初年度からリーディングサイアーランキング4位、以後ずっと1位を取り続けた。レースでも種牡馬としても、日本史上最高という馬だった。
そのおかげで、2007~2018年の12年間、最小で年間171回(2009年)、最大で262回(2013年)、通算2771回の種付けを行った。
年平均231回。牝馬の繁殖期を半年180日として、毎日一回を軽く超える。
これが寿命に響いたんじゃないか、というのが上の記事だ。
いわれてみればありそうな気もするし、どうなんだろう、と思って、データをあたってみた。
調査方法
データは、JBISサーチを参照した。
1974年から2011年までのリーディングサイアーランキング上位10位にランクインしたことがある種牡馬を洗い出し、その馬の毎年の種付け回数(74年以降)を表にまとめた。
対象の種牡馬の没年齢もそれぞれ調べた。(イエローゴッドなど古い馬の一部で没年齢がわからず、種牡馬引退年で代用したものがある)
このデータから、散布図を作った。
縦軸に没年齢(存命の馬は2019年現在の年齢)、横軸には種付け頭数が多かった年の上位3年をピックアップして、その平均値をとった。
このExcelファイルは私のサーバーにアップしてある。
できたグラフ
データから想像できること
種付け数の増加傾向
まず、80年代くらいまでは、相当な人気種牡馬であっても年間100頭を超えるほど種付けを行うことは稀だった。
80年代のトップ種牡馬といえるであろうノーザンテーストでさえ、82年の98頭が最大。
リーディング10位に入るような強い種牡馬でも、多くは70~80頭程度の種付け数だった。
シンザンやミルジョージなど、100頭を超える年もある馬がいるが、これは単にそういう体質だったのかと思う。逆にロイヤルスキーやマルゼンスキー、アンバーシャダイなどは少なめ。
90年代から、100頭以上を何年も続けて種付けする種牡馬が増えてくる。リアルシャダイやトニービンを皮切りに、ヘクタープロテクターやジェイドロバリー、そしてサンデーサイレンスが出てくる。
96年には、150頭超えの種牡馬が出る。サンデーサイレンス183頭、フジキセキ171頭、ジェイドロバリー166頭、トニービン159頭。
200頭を初めて超えるのが2000年のフジキセキとダンスインザダークの206頭。
21世紀には大人気種牡馬は200頭が当たり前といった様相になってくる。マンハッタンカフェなどは供用初年度から200頭を超えている。
多頭種付けは寿命を縮めるか?
150頭以上の種付けが当たり前になった90年代なかば以降、活躍した種牡馬には20歳より若く死んでいる馬が目立つように思う。
サンデーサイレンスは16歳、トニービン17歳、ジェイドロバリー17歳、バブルガムフェローも17歳、エルコンドルパサー7歳、アドマイヤベガ8歳、アグネスタキオン11歳、マンハッタンカフェ17歳。
特に、ディープインパクトのように生涯大人気種牡馬のままで、死ぬ前年まで200頭近く付けているような馬は厳しく見える。
そんな馬は稀なのでサンプル数が少ないが、フジキセキの23歳が精一杯で、アグネスタキオンやマンハッタンカフェの早逝が目に留まる。
2011年までのリーディングサイアー10位以内で、現在も存命という馬は、いずれも生涯を通して大人気種牡馬だったわけではない。後年に種付け数を減らして、すでに引退している馬もある。
26歳のダンスインザダーク、24歳のグラスワンダーなどは、今後のんびり余生を送れるのでもう少し長生きできそう。
一時は150頭以上付けていても、人気が落ち着いていった馬なら、長生きの可能性は残るようにも見える。
100頭以下が普通だった頃には、25歳くらいまで生きる馬も多かった。
その頃なら、10代で死ぬのは早かった。タフな馬なら30歳以上生きる。
比較的新しい馬でも、フォーティナイナーは34歳でなんと存命らしい。ダート馬で日本では産駒が活躍しきれなかったこともあり、100頭弱くらいの種付け数で、種牡馬としては20歳過ぎで引退している。
ノーザンテーストやミルジョージ、フォーティナイナーといった長生きした名馬と、10代で死んでいく最近の名馬を見比べると、やっぱり種付けしすぎが寿命に影響してるようには思える。
多い年で150頭を超えるレベルだと、寿命に影響してるようだった。
もちろん、種付け数を抑えれば必ずその種牡馬が長生きする、ともいえない。
未来のことはわからないから、抑えていても事故や病気で死ぬかもしれない。
なら、人気があるうちは150頭でも200頭でも付けられるだけ付けるというのが、経済的には合理的ではある。
まあ、外野が勝手なことをいってるだけではあるんだけど、でも、どうせなら名馬の訃報を聞くときは、「大往生だなあ」と思わせてほしくはある。(というかそもそも、競走馬を引退してから余生があるのは、ごく一部の名馬が繁殖に上がるか、誘導馬や乗馬などの行き場が見つかる幸運があった馬だけなんだから)
種付けのしすぎで消耗した果てに早死した、と思わせられるのは、なんだか嫌だね。