堺風の頭部

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大阪の「っぽい」100円ドリンク飲み比べレポート

 大阪の自販機は安いといわれていて、一本30円とか50円とかの破壊的に安い自販機がネットニュースなどでたまにネタにされている。Rocketnewsとか。

 ただまあ、そこまでの最安値クラスの自販機は、いくら大阪でもあまり見かけない。
 日常的に利用できるのは、缶が100円・ペットボトル130円程度の価格帯の、他所より少し安いくらいの自販機だ。
 こういう価格帯の自販機を扱う業者が複数あり、様々な自販機を見かける。

 

 また大阪には昔から、サンガリアとかチェリオといった、少々チープなドリンクを作る飲料メーカーがある。
 サンガリアの永遠の定番「ひやしあめ」、大阪風ミックスジュースを見事に仕上げた「みっくちゅじゅーちゅ」、チェリオのロングセラー「ライフガード」など、看板商品もあるんだけれども、まあ、独特の安っぽさと変なセンスが炸裂したB級商品も多い。
 チェリオの「BYG」シリーズなんて昔よく飲んだよ。他所が250ccで標準だった80年代から、500ccのでかい缶で、同じ値段で売ってたの。ファンタに似せてるけどあからさまにチープな味と色、でも子供の100円は500ccのでかさに引かれていくのだ。

 100円自販機には、サンガリアとかチェリオがよく入ってるのだ。
 それ以外にも、例えば缶コーヒーならジョージアやBOSSにはちょっと勝てない、UCCとかポッカとかが入ってる。
 そういうラインナップからくる、哀愁というと大層だけど、大阪の郊外に育った私には何かココロ安らぐ雰囲気が、100円自販機にはあるのだ。

 

 しかしだな。

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 いやー、なんだこの昭和臭いパチモンは。いつからあるか知らないけど、私が2016~17年に東京に住んでる間に発生したのかなあ。
 21世紀になって19年、こういうセンスはとっくに絶滅したものかと思っていたよ。

 ちゃんと購入してる写真なのがわかると思うけど、買ったよ。
 今回のこの記事では、このパチモン……いや、パロディ商品を、元ネタと並べて飲み比べてみるのだ。

 なお、この4本はいずれもスターベンディング社の100円自販機で購入した。うち3本は販売者表示が株式会社スターベンディングになっているので、PB品のようだ。

 

目次

 

キレキレレモン vs キレートレモン

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 さて、先鋒はこの組み合わせ。
 スターベンディング「キレキレレモン」 vs ポッカサッポロ「キレートレモン」だ。キレキレの対決だといえよう。

 まあ、名前だけ見比べるとパチモンにしか思えないが、商品としてはかなり違う。
 美容健康ドリンク路線っぽい155mLの小瓶で、クエン酸・ビタミンC含有量をアピールするキレートレモンに対し、ただのレモン味飲料っぽいキレキレレモン。

 キレートレモンのホームページには、「さあ、ここからだ。ココロと、カラダに、キレートレモン。」というフレーズが見られる。キレキレレモンには「ココロもカラダもリフレッシュ」というコピーが書かれていて、インスパイアの芸が細かい。

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 また、キレートレモンの瓶にある「名称」は、「20%レモン果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」となっている。キレキレレモンで同様に記載されている「品名」は、「10%レモン果汁入り飲料」だ。インスパイアの芸が細かい。

 では、飲み比べにいこう。

 

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 キレートレモンはかなり強烈なビタミンCとクエン酸の酸味。
 炭酸で緩和される感じはあるものの、かなりねっとりと酸味も甘みも濃厚。

 実は私はビタミンC過敏症を自称していて、例えばいちごを食べると口が激烈な酸味に支配され、味もへったくれもなくなっちゃう体質だ。
 キレートレモンでも、やはり体が過敏に反応しているようで、飲むと顔から汗がだらだら出てきた。ビタミンCの効能はばっちりだ。

 

 一方キレキレレモンは、飲みやすいレモネードだ。
 レモン果汁10%ならそこそこ多めに入ってると思うが、あまり酸味はこない。キレートレモンほどねっとり甘いわけでもなく、単に水分補給的に自販機で買って飲むには無難なところ。
 アセスルファムカリウムスクラロースを使ってはいるけど、しつこいほど甘ったるくもなく、後味もそうひどくない。特に苦手でなければ大丈夫だろう。

 まあ、見るからにパチモンだから中身もダメなんだろ、という先入観を持って飲むとまずく思えるかもしれないが、そこまでではないと思う。
 果汁10%のレモネードと思えば、世にあふれる果汁1%や2%のレモン風味飲料よりよほど真面目な作りではなかろうか。(商品名とラベル以外は)

 

ホワイトウォーター vs カルピスウォーター

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 さて、この「ホワイトウォーター」は、果たして何のパチモンなのだろうか。

 ラベルのデザインから見ると、カルピスウォーターのインスパイアに思える。
 「ホワイトウォーター」という名前からは、コカコーラの「アンバサ ホワイトウォーター」も思い出す。しかしこれはもう大阪では買えない。
 また、名前でいうとサントリーの「POP ホワイトソーダ」も似ているように思える。ただ、POPにソーダでないバージョンがない。

 まあ、カルピスウォーターは、大昔から定番商品だったものが缶ジュースとして再ブレイクしたという、一種のおばけ商品だ。カルピス誕生が1919年で今年は100周年。カルピスウォーター誕生は1991年。
 アンバサもPOPも、カルピスウォーターソーダの対抗商品として生み出されたものだと思う。すべての乳性飲料はカルピスに通ず。

 そういうわけで、スターベンディング「ホワイトウォーター」 vs アサヒ「カルピスウォーター」を次鋒戦としよう。

 

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 味はかなり似通った感じに思えるが、カルピスウォーターの方が口に入れた瞬間にコクがある感じ。
 ホワイトウォーターは、最初からわずかにさっぱりしてるかな。

 色もわずかにカルピスウォーターが濃くてわずかに黄色みがかっている。ホワイトウォーターはやや青白い。

 ラベルを剥がして出されたら、私の舌だと区別はできないと思う。

 

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 原材料もよく似たものに見える。

 ただ、カルピス誕生からカルピスウォーター誕生まで、実に72年のラグがある。
 「水で割って缶詰するだけだろ」と思いきや、うぃきぺによると、昔のカルピスは先に割って保存すると沈殿したりしてダメだったらしい。
 見えないところ、わからないところに商品開発の妙があるのだろう。

 カルピスウォーターは偉大だ。しかし偉大なもののようなものを作るにも、見えない苦労があるんだろう。苦労の結果、このラベルをつけられるんだけども。

 

乳製グルト vs ぐんぐんグルト

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 副将戦は、「乳製グルト」。「乳製」という単語は一見普通にありそうだけど、Google日本語入力でさえ一単語では変換しない語だ。

 乳製グルトを友人に見せてみたところ「サントリービックルのパチモン」と認識されることが多かったのだが、私は商品名から判断してぐんぐんグルトの方だと思えたのでこっちで。

 というわけで副将戦は、スターベンディング「乳製グルト」 vs アサヒ(カルピス)「ぐんぐんグルト」の対決。
 アサヒ飲料、しかもカルピス系列の製品が連続出場となった。

 

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 グラスに注いでみると、意外なほど色が違うのがわかる。
 ぐんぐんグルトの方がやや色が薄く、乳製グルトはやや赤みがかって濃い。

 しかし、見た目の濃淡と、味の印象とは逆になるのが面白い。

 ぐんぐんグルトの方が味が濃い感じで、砂糖の甘味も乳酸菌飲料らしいヨーグルト的酸味もしっかりくる。こっちは100年も乳酸菌飲料で商売しとるんや、というカルピスの意地を感じる。
 乳製グルトは比較するとかなり薄め。もし、このタイプの乳酸菌飲料の甘酸っぱさが苦手という人なら、乳製グルトが飲みやすいかもしれない。

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 原材料を見比べると、かなり内容が違う。(左が乳製グルト)
 一方にあって一方にないものが複数見られる。

 なにより、乳製グルトの売りであるフラクオリゴ糖が、ぐんぐんグルトにはない。
 オリゴ糖にはビフィズス菌を増やす作用があるので、乳酸菌飲料には好相性だ。むしろぐんぐんグルトに入っていないのが意外かも。

 なお、味は濃く感じるぐんぐんグルトは、カロリーが100mLあたり22kcal。味が薄く感じる乳製グルトの方は、28kcal。印象と逆だった。
 甘味料の使い方や砂糖の量など、いろいろ要因があるんだろう。

 

 余談だが、ビックルはミルクオリゴ糖を使っていることがラベルでもアピールされている。乳製グルトはその点で、中身はどちらかといえばビックルの方に似ているかもしれない。

 

スーパースタミロンC vs デカビタC

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 さあ、最後の対決。

 1965年発売のオロナミンC以来、多数のメーカーから無数のエナジードリンクは生み出され続けている。
 オロナミンCは小さな110ccのボトルだったのを、92年、サイズを一気に倍に大きくしたデカビタCがヒット。この大瓶サイズというフォーマットを模倣した製品も無数に生まれた。
 その後は180cc缶でリアルゴールドがヒットしたり、ロング缶でレッドブルがヒットしていわゆる魔剤に主流が移っていった。

 つまり、このジャンルはボトルが重要だ。
 スーパースタミロンCが大型ガラス瓶であるなら、そのフォーマットを打ち立てたデカビタCこそ相手にふさわしい。

 大将戦、プリオ・ブレンデックスHS「スーパースタミロンC」vsサントリーデカビタC」。

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 スーパースタミロンCは明らかに透明度が低く、デカビタCは透き通っている。
 また、どちらも炭酸飲料なのだけど、スーパースタミロンは泡が細かい。デカビタCは大きな泡が見える。ちなみに、じっくり味を比べたりしていたら、デカビタCの方が炭酸が抜けるのが早かった。

 味を比べてみると、デカビタCの方はやや酸味がはっきりしている感じ。しかし合成甘味料を使っていないだけに、変に残る後味はないようだ。
 スーパースタミロンCは、泡の細かな炭酸が抜けにくくて、時間が経ってもピリっとした刺激が続く。また、やや薄味めな感じもあるが、合成甘味料のあのしつこく残る後味はあるようだ。

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 原材料は、かなりの差異だ。ちょっと違いすぎて比較しづらい。

 デカビタCは名前通り、主に多種多様なビタミンで押してくる。けっこうストレートだ。
 一方スーパースタミロンCは、カロリーオフを実現するために味の調整に苦心しているのが見受けられる。また、バリン・ロイシン・イソロイシンなど必須アミノ酸や、それ以外にもアミノ酸をよく入れている。
 エナジーを生み出すにも、方向性が違っているようだ。

 スーパースタミロンCの濁りはどこからくるんだろうか。デキストリンのせいか、あるいはローヤルゼリーがエキスじゃなくそのものだからか。
 この濁りのおかげで炭酸の泡が細かく、抜けにくくなっているような気がするな。そういう意図でやってるなら、なかなか面白いかも。

 なお、カロリーはスーパースタミロンCが33kcal/100mL、デカビタCが54kcal/100mLとかなりの差異。

 

 まあ、デカビタCに類似した商品だと、例えばUCCビンビタCなどもっとパチモンくさい名前のものもある。
 スーパースタミロンCは、同ジャンルなだけでパチモンというわけではないのかもしれないな。そして実際、中身も狙いも異なっている。

 

まとめ

 スーパースタミロンCは、そもそもパチモン扱いが冤罪であるといえそうだった。

 スターベンディングPB品の3品は、商品名とラベルにおいてパチモンだとは言わざるを得ないと思う。
 しかし、中身はそれなりにしっかり作っているようにも感じられた。
 昭和のパチモンであれば、中身もぐっだぐだのチープで不味い代物だった。

 多数の中小メーカーが各地に存在した昭和の昔と違い、全国規模の大メーカー数社が市場を制圧している現代。
 そんな中に、なんとか隙間を作って食い込むためには、中身を真面目に作りつつも包装でふざけてウケを狙う。それも中小メーカーの意地なのかもしれない。