堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

私史・アイドルマスターの最初らへん

 正月休みも残り少ないな。
 最後の一日を家でぐったり過ごす人のために、年寄り特有の長い昔話を用意したぞ。

 

togetter.com

 話題の「平成ネット史」で、ニコマスに触れられなかったとの話。私はテレビ持ってないから番組見てないけど。
 ニコマスは私から見ても大きいムーブメントだと思ってたから、あれをスルーしたらニコニコ動画史にもアイマス史にも穴が空くだろうな、とは思う。

 ただまあ、私ニコニコ動画に触れてなかったから、ニコマスも全く知らない。
 私はあれより前の世代のアイマスファンだ。もはやニコマスさえ歴史の向こうに消えゆくというのなら、我々はもうすでに消えているのだろう。

 ニコマスニコマスで詳しい人が語ると思うので、その前の、アイマス最初期に私が見てたことを少し書き残そうと思う。
 私はこれでも、アイマス創世期のVIP (Very Important Producer)だからな。

 

目次

 

アイマス発売前のこと

 私が初めてアイマスを知ったのは、発売かなり前のことだった。
 多分、雑誌とかで初報が出た時じゃないかな。

 実は私自身はアンテナが高い人間ではない。友人にすごく鋭いのがいて、彼が見つけてきた。いつも底知れぬエネルギーを秘めたゲームや漫画をすぐ見抜いて教えてくれる。

 それはアーケードゲームで、アイドルをプロデュースするという。
 確かあの時点でもう、いかにもギャルゲー的な、メッセージウィンドウの出るコミュニケーションシーンの写真が出てたんだったかな。
 キャラクターがポリゴンで描かれてる、というのもわかってた。

 

 私はその時思ったのだ。「またナムコが暴走した」と。

 だって、人前でギャルゲーをやれというのだよ。
 脱衣麻雀とかはあったけど、家庭用ゲーム機やPCのギャルゲーと同じ画面構成をそのままアーケードでやるなんて、前例もほとんどなかった。

 あんまり印象ないかもしれんのだが、ナムコって、ごく稀に頭がおかしいようなゲームだすのよ。
 実は「ポリゴン美少女」というのにも、すごく早い段階で(暴走して)チャレンジしているメーカーでもあるの。ダンシングアイっていうんだけど。

 ああ、これはチェックせなあかんやつや、と思ったのだった。
 他の人は知らないけど、私の周りでの最初の反応は「ナムコが暴走して全力を注ぎ込んだイロモノ」くらいだったよ。まっとうな力作だと思ってたら、私の周囲の奇人たちはあんまり手出ししてないと思う。

 

 まあ私や友人らは少々斜に構えてる傾向はあるけど、イロモノを見る目でアイマスを見ていた人は、少数ってことはなかったと記憶している。
 未知数過ぎて、ゲームとして期待するにもどう期待するかわからんかったもん。アイドルをプロデュースするったって、まさかチャイルズエストみたいなんじゃなかろうし。
 キャラも、誰かを推そうと思わせるほど情報がなかった。後に声優さんと半ば一体化しながらライブをやる2.5次元アイドルになるとか、想像もできんかった。今みたいにアイマスの新キャラである時点で注目されるような下地は一切なしだよ。

 肯定的に見ているとしたら「なんかわからんけどスゴそう」で、そうでなければ「なんかわからん」か、他に反応しようがなかった。

 

ロケテスト

f:id:mubouan:20190105111548j:plain

 あれは2005年はじめかな、ロケテストが行われた。
 当時、千日前のビックカメラの向かい、アムザ1000の建物に、プラボ千日前があってな。ギャラクシアン3が入ってたりとか、ナムコが大阪ででかいことをやるときの旗艦店であった。

 上のカードケースは、ロケテ来場者に配られた記念品ね。こういうものを実用に供して傷つけてしまうのが私らしいが。

 

 ロケテで体験できたのは、正式版の最初のプレイ1回分とほぼ変わらないくらいの内容だったと思う。ほぼチュートリアルみたいに、レッスン、コミュニケーションやらオーディション、ライブまで一通り体験できるやつ。

 初回プレイでそう大層な出来事が起こるゲームではない。「なるほどこういうのか」というくらいだったな。
 体験として新しくて印象的だったのは、タッチパネルでアイドルに触れてどうこうしろ、ってやつ。スマホ時代の今では、これが真新しい経験だという感覚も伝わらないかもだけど。

 

 私は後に伊織好きと言うようになるんだけど、ロケテのときは真を選んでいた。
 写真の通り、プロデューサーカード・ユニットカードともにロケテ専用のもので、本リリース版には持ち越せなかった。

 確か、ロケテで選ばれてるのは雪歩が多かったんだったかな。
 アイマスの最初期に一番人気があったのは雪歩で、最初に行われた公式人気投票のトップも雪歩だったはず。伊織は下から2番めか3番目かだっけな……

 

アイマス本稼働

 2005年夏に、アイドルマスターは本稼働を迎えた。

 このとき、「よーしプレイしにいかなあかん」と500円玉握ってゲーセンに駆け出した……のは意外と少数であった。まあ、プレイするのに並ばなきゃいけない程度には混んではいたけど、ある程度で落ち着いたはず。
 艦これアーケードの行列のほうがひどかったし、長く続いた気がするな。当時はゲーセン人口自体が今より多かったから、それも加味して、やっぱりアイマスは思ったほど混まなかったと思う。

 プレイ料金が実質1プレイ500円っていうのも、今は当たり前になったけど、当時は珍しい。すごく高額に見えた。
 アイドルひとりを最後までプロデュースするのに52週間。初回の1週はカード排出を含めて500円、あとは500円で3週進む。つまり一周すると9000円。ちょっと間違ってそうだけど、大きくは違わないはず。
 ランダム排出のカードを集めるゲームが当たり前になった現代から見れば普通だけど、当時はそんな価格設定のゲームは稀だった。

 

 それから、今35歳過ぎてる人々に問う。アーケード版当時「人前でギャルゲーやるとかないわー」とかいってプレイヤーを指さして笑ったことがある人は、おじさんもう怒ってないから素直に手を上げて名乗り出なさい。

 もちろんこれは冗談半分で、本気でバッシングされてたわけではないと思うんだけど、私らはそのように指さされていたのをしっかり覚えております。怒ってないといったな。あれは嘘だ。これは嘘だけど。
 まあ、「興味はあるけど恥ずかしくてプレイできない」という人も実際多かった。その感情が自分に向くか、プレイヤーに向いたか、というだけでしょう。

 

f:id:mubouan:20190105115941j:plain

 私は郊外の住民なもので、そうゲーセンに通いつめることはできなかった。最寄りのアイマスまで40km。

 難易度の高いゲームで、一回オーディションに負けてしまうとそのまま挽回できずに出世街道から転落するシビアさ。とにかくミスできない。
 オーディションに負けたり、コミュニケーションに失敗すると、アイドルのテンションが下がる。テンションが下がると、レッスンも何もかも効果が下がる。だから挽回が難しくなってまた失敗する。
 テンションが下がりにくいやよいとか、下がってもすぐ上がる伊織あたりは扱いやすかったけど、千早はもう、テンションが下がりまくるのでめちゃくちゃ難しかった。
 千早がやる気なくしてボロボロに失敗を繰り返す様を、「千早スパイラル」と呼んだものでした。あの頃の千早はプロデューサーにも噛みつきまくる、抜き身の刀みたいに尖った生格してたんだよ……アニメの落ち着いた千早はかなり別人だぞ……。

  

設置店情報Wikiのこと

 アイマスのような大型筐体ゲームって、テーブル筐体のゲームと違ってどこにでも入荷されるものではないから、公式サイトに設置店情報が出る。

 しかしなー、アイドルマスター公式サイトの設置店情報って、全然使えなかったの。
 どういう事情だか、サービスイン直後から使えない。ある店を書いてないどころか、ない店が書かれてたりもして、ほとんど更新もされなかった。
 今みたいにTwitterとかがあれば、発見した人がつぶやけばそれが広まっていったけど、当時日本で広く使われてたSNSってmixiだけだよ。

 

 それで、私が作ったの。アイマス設置店情報Wiki

 自画自賛するんだけども、これで全国の情報が集約され、おおよそリアルタイムに近いペースで更新されていくようになった。
 アイマスプレイヤーでこのWikiを使ってない方が少なかろう。

 見た目は地味なWikiだけど、「アイマスをプレイする」という根本的なことに必要な情報を担っていた、アイマス初期における重要ファンサイトといえただろう。
 ゆえにそれを作って維持していた私も、アイマス初期のVIP (Very Important Producer)を自称するくらいは許されると思う。

 

 ただ、2005年にWikiを立ち上げるのは大変だった。

 今はレンタルWikiがあるから手軽だけど、当時はなかったか、あってもマイナーなものだったと思う。
 それで、自分で借りてるレンタルサーバーにPukiwikiスクリプトを置いた。まあこれは別に難しいことではないけれど。

 それよりも、開いたと公表した途端に、ものすごい勢いで情報が流れ込んでしまった。
 当時大きなアクセス力を持っていた個人ニュースサイト、かーずSPとかカトゆー家断絶がとりあげてくれたもので。

 で、2005年当時、Wikiを編集したことがある人なんてほとんどいない。
 それがわかってるから、誰でもすぐ情報提供できるようにコメント欄を設けた。
 すると、誰もWikiを編集できないのに、コメント欄に日本全国の膨大な情報が積み上がってしまった。

 そうなると、私がやらなしゃあないでしょう。
 仕事から帰ったらずーっとコメント欄の情報を整形してWikiに追記する、という作業を寝るまでやる、という生活が二週間ほど続きましたね。アイマスのために頑張ったんやで。VIPやからな。

 

 一通り全国の情報が出揃ったらようやく情報提供も落ち着き、Wikiを編集してくれる人も出てくれたので、私の手を離れて回るようになった。
 あれから10年以上、アーケード版のオンラインサービスが終了し、置いてる店も減り、カードがなくなって新規プレイができなくなっても、なお置き続けられている店の情報が未だに記されている。

 あんなに広く使われたサイトなんだから、広告くらい付けておけば儲かったかなー、なんて思わなくもない。
 でもまあ、設置店Wikiに寄せられた情報は、私のものじゃないからな。

 

Xbox360

 アーケード版から1年半、Xbox360アイドルマスターが2007年1月に発売された。

 いやー、私もこれがきっかけでXbox360を買ったよね。
 でもアイマスはあんまりやらずに、FPSにハマって日夜外人と撃ち合いを繰り広げるようになったんだけど。

 Xbox360アイマス、ちょっとまあ、ゲームとしては遊びづらいところはあった。
 システムがアーケードのままだからシビアすぎるし、タッチパネルからコントローラー向けに変更したミニゲームが異常に難しい。
 シーン切り替えのフェードイン・アウトが飛ばせないとか、細かい所のテンポの悪さとか、どうも粗さがあった。
 もちろん、熱心にプレイしていた人も多いので、私みたいに買ってあんまり遊ばなかった人が多数派ってわけではない、と思うんだけど、少なくもなかったと思うな……。

  いいところはといえば、やっぱりグラフィック。
 PS2相当だったらしいアーケード版に対して、Xbox360の性能でリファインされたキャラクターモデルは、デザインといい動きといい、当時としては圧倒的なレベルだった。
 そこは問答無用の魅力があったな。

 

 あと、今だからいうけど、ミキ苦手だったなあ。
 私が好きなのは伊織だったけれど、しかしアイマスのメインヒロインというのは春香さんだという認識はあったの。
 それが、突然降ってわいたミキが、春香さん押しのけてど真ん中に立つようになってしまった……というように見えていた。

 まああれだ、古い人が新しいものに適応できないやつ。
 ミキ苦手派が他にそれほど多かった印象もない。みんな受け入れて、あっという間に人気キャラになっていった。

 

ニコマス

 ニコマス自体は、私はそもそもニコニコ動画を全く見てなかったので、外から見えてた大まかなことしかわからなかった。

 当時って、動画サイトへゲームの映像を投稿するの、どこまでセーフかはっきりしなかった。著作権者がダメっていうとアウトになるのは今も変わらんけど、なにしろ前例がない。
 WinMXとかファイル共有ソフト著作権侵害も大きな話題だったし、コナミときメモの同人誌に厳しくやってた前例とかもあって、冷静な人ほど躊躇する空気だったと思う。

 でもナムコは、アイマスの動画利用に対して、さすがに公認はしないにせよ、黙認する姿勢だとわかるようにしてる感じだったな。それがニコマス流行の一因だったのは、外から見ててもわかった。
 後に、Xbox360版に背景を単色にしてキャラの動画だけ表示する隠し機能があるとわかって、それで一気に膨大な素材が提供されることになっちゃって。これはそのつもりでやったと思うわ。

 

 今は、ゲームがヒットすればコミカライズくらいはすぐに出るし、アニメ化もそれほど遅くならないくらいに速やかに動くから、公式からの供給が厚い。
 でも2007年当時の大きなアイマス関係の公式コンテンツって、今のようには充実してない。CDもゲーム内楽曲のCD化だったし、リアルライブもゲーム関連イベントっぽく始まったばかり、コミカライズもひとつだけ。

 そういう時代に、ゲーム自体がすごく上質な素材になる、動画にしてニコニコに公開しても権利関係は大目に見てくれる、というのは、作る方も見る方もタイミングもよかったんだろうな。
 あれによって、アイマスがゲーム作品からコンテンツに切り替わった感じがあるし。

 

アイマス2

 そろそろ話が「最初」じゃなくなってるけど、これを最後に。

 アイマス2って、発売前にはずいぶん異論反論オブジェクションになったもんだった。
 いくつか争点はあったけど、ひとつは、伊織・律子・あずさ・亜美がプレイヤーキャラから外れたこと。

 ここへの不満って、今思えば、「アイドルマスターはゲームだ」と考えていた人の抵抗だったかもしれないな。ゲームプレイヤーだからこそ、プレイアブルかを問題にしていた気がする。
 すでに、ニコマスとかゲーム以外から入ったアイマスファンも多くなって、ライブやCDを中心にアイドルとして楽しむ人まで増えてきて、といったフェーズだったから、アイマス=ゲーム派って少数派になりつつあった。
 私もゲームとしてのアイマスから入ってるから、気持ちはある程度わかると思う。

 といいつつ、伊織派を名乗っていた私はどうかというと、竜宮小町はアリと思ったから別にいいやと……。
 ただまあ、実際にゲームをプレイしたときに、ちょっと気が抜けたのは確かだったかな。誰選んでプレイしたかも忘れちゃってら。

 それより私が気に食わんかったのはね、「2になって伊織がかわいくなった」って抜かしやがった連中ね。前からかわいいわ。地獄の火の中に投げ込むぞ。

 

 他の争点は、やっぱりジュピターであった。
 これは「アイドルマスターはアイドルコンテンツだ」と考えてる人からの声だったように思う。ジュピターの連中と765プロの誰かがくっつくような話するんじゃねえだろうな、と。
 アイドルファンのありようとしては正しい気がする。

 私にはそういうアイドルファン的観点がなかったもんで、ジュピターはジュピターで結構好きになってしまったな。
 たまにカラオケ行くと「Alice or Guilty」歌うよ。

 

 あとまあ、雪歩の声優さんが長谷優里奈から交代になっちゃったというの、私にとっては結構痛かった。ゆりしーアイマスより前から縁があって、馴染みのある声優さんでもあって。
 ここは別に議論になってなかったけどな。大体みんな受け入れてた。
 何しろずっとライブとかにも出てこなくて、雪歩だけ欠員みたいになっちゃって支障があったのも確かだし、仕方ない事情はわかるっちゃわかる。

 ただ、私は「Kosmos, Cosmos」がアイマス楽曲の中でも一番くらいに好きだったから、あれだけはゆりしーが歌っててこそだったと未だに思ってるのは、まあそっとしておいておくれ。

 

 覚えてる限り、発売前にこんなことでモメたんだけど、結局そのまま発売して、みんななんとなく納得してたような気がする。
 「竜宮小町はジュピターの噛ませ犬ではないか」という予言は的中したけれど、他は別に、ジュピターと誰かがくっつくなんて気配もなかったし、雪歩も受け入れられていた。