堺風の頭部

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自分と同い年のカメラ PENTAX MV1(1979)

 正月早々長大な記事やけど、まだ正月休みで暇やろ。

 

 少し前だが、Photodnで「自分の誕生年に発売されたカメラはなんぞ」という話題が出た。


 私は1979年生。
 カメラでいうと、まだオートフォーカス一眼レフは実現しておらず、でも自動露出はそれなりにこなれてきて、カメラに電子回路が組み込まれることが増えてきた頃。
 同時に小型化トレンドが来て、小型軽量・自動露出で軽快に撮影できるカメラが各社から出て大ヒットしていた。

 1979年発売のカメラは、キヤノンAV-1、ニコンF2チタン、ミノルタXG-S、オリンパスOM-1N、OM-2N、OM10。
 そしてASAHI PENTAX MV1。12月にはME superも発売されてるんだけど、私は9月生まれ、MV1も9月発売。

 

 で、買ってきた。

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 軍艦部のPENTAXロゴの上に、モールドだけで小さくASAHIとも書いてある。
 この機種が最後のASAHI PENTAXロゴ機で、次のME superからPENTAXだけになる。

 

1979年のカメラ事情とMV1

 MV1が発売する前後の一眼レフ業界は、小型軽量・自動露出の一眼レフが流行っていた。
 オリンパスが70年代頭に、一眼レフの三悪「重い・大きい・うるさい」を追放すると謳って送り出したOM-1を嚆矢に、他社も対抗して小型で軽快な一眼レフを作る流れができていた。
 同じ頃に、電子回路の組み込みも始まって、自動露出も実現するようになってきた。

 70年代後半くらいになると、小さくかつ自動露出なカメラができてきた。

 

 PENTAXでいうと、小型軽量自動露出機といえばMEだった。これは76年9月に発売している。

 私の生まれた79年には、3年を経ておそらく減価償却が進んだであろうMEをベースに、デチューンした低価格モデルとしてMV1が発売された。
 MEとMV1はよく似ていて、おそらく中身も90%くらい同じものと思う。それで定価が3割引くらい。なかなか戦略的価格に見える。

 ペンタックスは大衆向けのメーカーで、MEも高価なカメラではない。だからこそ大ヒットしたはずなんだけど、更にそれを安くした。

 そこまで値段勝負せにゃいかんのか? というと、メジャーメーカーより下の価格帯で戦ってる大衆カメラ群が当時まだまだ多数あったのだ。
 PENTAXは、Kマウントをユニバーサルスタンダードとするべく規格を公開していたので、廉価カメラメーカーが多数参入した。今や親会社のリコーや、他にチノンやらコシナ、あのトプコンまでKマウント機を作っていた。
 まあそういうカメラは、PENTAX本家よりも遅れたスペックなものだったけど、カメラが今よりずっと高価なものだった時代、安いのも強力な武器だ。

 そういう廉売カメラにぶつけるMV1は、大ヒットモデルのMEと同じ小型軽量ボディ、廉価カメラにはまだ真似できてなかった自動露出もそのまま。
 値段も、リコーがレンズ付き39800円のモデルを出してたところに、レンズ付き49500円。正直、私の性格だと真っ先に手を伸ばしそうなモデルではある。

 

 もっとも、MEは名機と名高く、PENTAX史を語る上で絶対に外されないくらいの製品だったんだけど、MV1は大抵外されるくらいの地味な製品だ。
 まあ、同格の相手と戦ったカメラじゃなくて、格下の市場を荒らしに行ったカメラだから、後世にはあんまり高くは買われないだろうなあ。

 

触ってみた

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 さて、上から見ての操作部はあっさりしたものだ。自動露出専用だからね。
 格上のMEも機能的にはほぼ同等なので、上から見ると良く似ている。

 MEでは真鍮だったトップカバーが、MV1はプラになっている。あんまり質感に配慮した感じでもなくて、古い廉価カメラによくあるつやつやしたアレの感じが丸出し。これが安さか……
 左のダイヤルは、MV1は感度設定のみ、MEは露出補正機能もあった。まあ、MV1でも感度設定を変えることで擬似的に露出補正できるけどね。
 他には、フィルム送り確認とかシャッターボタンのロックとか、MV1には省略されている細かい機構がある。

 

 シャッタースピードは、オートか1/100秒(ストロボ用)かバルブ。潔い。

 電池がなくても、1/100秒固定でよければ撮影できる。露出計効かないからカンで絞り変えて露出決めて撮影になるけど。

 電池はLR44を2個。100円ショップで簡単に買える電池だ。(ホントはSR44を使うので、LR44だと微妙に露出にズレが出るかもしれない。ネガなら問題なかったけど)
 電源スイッチはない。シャッター半押しで露出計が作動し、押し切ると自動露出でシャッターが切れる。触ってなければ通電していない。

 

 MV1の廉価版らしいところがよく現れるのは、ファインダー内だ。

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 のっぺらぼーん、と、全然表示がない。
 左にちょろっとLEDが光っているが、これの色によって露出状態がわかる。

  • 赤:測光範囲外に露出オーバー(もっと絞れサイン)
  • 緑:適正
  • 橙:手ブレ警告(または露出アンダー)

 それだけ。
 MEだったらシャッタースピードがわかる表示があるのだけど、MV1は実にバッサリ切られている。
 まあ、実用上これで足りるというのはわかる。AE機なんだし、シャッタースピードが表示されたって、わかるだけでそれ以上のことはない。 寂しいだけで。

 表示が極端にシンプルであること以外は、倍率0.85倍・視野率92%の当時としては普通のファインダー。多分MEと一緒だろう。

 

 ファインダーのスクリーンは、ごく普通のスプリットマイクロプリズム。
 レンズが暗いとスプリットが陰るので、ピント合わせができるのはF5.6くらいが精一杯に見えた。

 

 自動露出で設定されるシャッタースピードは、1秒~1/1000秒までの範囲。
 しかし手元の個体は、光が足りないところでシャッターを切ってみると、2秒くらいのロングシャッターになったり、いつシャッターが閉じるかわからないくらい長くなったり。なんだろう? MEだと8秒くらいまでいけるみたいだけど、実は同じものそのままなのかな?
 長過ぎる露光を途中で止めたい場合は、シャッターモードを100Xに変えてやれば止まる。

 

レンズ smc PENTAX-M ZOOM 28-50mm F3.5-4.5

 一緒に、MV1と近い時期のレンズも購入した。

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 MV1は、発売当時に「ズームシステムカメラ」というよくわからないコピーを付けられていたそうだ。なので、ズームレンズを調達した。
 「撮影者がズームレンズの操作と画作りに専念出来る様に」オート露出で表示もシンプルにしたと。モノは言い様だ。別にズームでなくても、無駄な表示がないファインダーで絵作りに専念できるという主張はできると思うが。

 ペンタックスが24-50mmとか35-70mm、40-80mmなどの標準域のズームレンズを売り出すのも、大体70年代半ばくらいから。これをアピールするためのコピーを、MV1にむりやりねじ込んだのかもしれない。

 でも当時の標準ズームって値段も結構高かったし、安いMV1には安い単焦点が似合う気もするけれどね。
 MV1とレンズキットで売られた50mmF2は、小さいレンズで軽快そうだ。いい組み合わせだし、安く見つかったら欲しいな。

 

 PENTAXのMシリーズレンズは、デジタルで使うと不便で人気がない。もっと古いTAKUMARレンズのほうが、デジタルで使いやすくて人気がある。

 おかげで、今回のM ZOOM 28-50mm F3.5-4.5も安かった。1900円。

 2倍足らずのズーム倍率だけど、コンパクトボディのMシリーズに合わせるレンズだけあって、かなりコンパクトにまとめてある。
 最短撮影距離0.6m。古いズームって、最短が長すぎて恐ろしく使いづらいことがあるけど、これは十分実用レベル。

 コンパクトな鏡筒にズームリング・ピントリング・絞り輪と操作箇所が3つあるので、それぞれの幅がかなり狭い。ズームするとピントリングが移動するから、たまに指が見失ったりして。

 

撮影してみた

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 MV1は凝った撮影をするカメラではないので、気軽にぱちぱち撮るのが向いていると思う。とりあえずフジの業務用ISO100のネガフィルムを突っ込んでぶらぶら。
 自動露出も40年前のだからさほど正確でもなかろうけど、フィルムは現代のネガだから、雑な露出でも救ってくれる。

 

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 ただまあ、ISO100で変えられない、というのはデジタル慣れした体にはちと辛い。この程度で手ブレ警告出るのか、と困惑しまくり。お兄様、あなたは堕落しました。
 フィルムには明るいレンズって大事だなあ……

 五階百貨店のこの工具屋さんは、近畿圏で機械いじりをする人なら知らない人はいないというくらいの名店で、あらゆる工具を知り尽くしたおっちゃんが何を質問してもたちどころに適切な商品を教えてくれるすごい店だとのこと。
 18年末をもって閉店してしまって、周囲の機械系の友人らが残念がっていた。

 

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 曇った日にISO100、開放F3.5のレンズだと、薄暗い路地だと昼でも手ブレ警告。
 ただまあ、MV1はついてるレンズの焦点距離を構わず、多分1/30秒より長いなら一律で警告する、とかだと思う。これは28mmで、警告を構わずシャッター切ったと思う。
 逆に、望遠つけてると手ブレ警告出てないのにブレてるカットもあった。

 さすがに古いズームの広角端、ちょっと曲がるね。

 

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 そういえば、私はずっとPENTAXだから、自動露出といったら絞り優先オートを使うのがほとんど。シャッター優先を使う機会なんていつあるのかわからない感じ。
 しかしキヤノンを使ってきた人にいわせれば、普通はシャッター速度合わせてからファインダー覗き込むだろ、となるらしい。

 40年前は、このネタでマジでケンカしたとかしないとか。

 

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 M ZOOM 28-50mmの広角端、近接撮影だと歪曲がけっこう目立つけど、距離があるとあんまり曲がらないな。

 古いレンズだけど、ある程度絞ればかなりシャープに写る。K-70で撮ってみても、2400万画素になんとかついていけるくらい解像度があった。
 逆光にも、ゴーストは出たけどフレアはさほどでもなく、なかなか強い。
 しかも小型軽量なんだから、かなりいいレンズじゃないかな。いい評判とかは聞いたことない地味なレンズだったけどね。

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 40年前のカメラで撮るとなんだか懐かしい感じがする大阪城

 

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 大阪城の片隅には、案内板もなにもなく、淀君に殉死した三十二名が祀られている。

 

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 ボケの酷いレンズでもない感じ。

 

フィルム2本め

 ここまででフィルムを撮りきったので、次にロモグラフィーのISO400ネガに切り替え。
 レンズもここからは、M ZOOM 28-50mm以外も混じる。

 

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 これはコシナ20mmF3.8と思う。
 めちゃくちゃ逆光に弱いレンズなんだけど、最近ぴったりくるフードを見つけた。

 

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 コシナ20mmF3.8は、結構寄れるのがウリ。
 K-70だと30mmくらいの普通の広角になっちゃうから、超広角らしく使うにはK-1かフィルムがいるのよね。

 

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ベイルとは (ベイルとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

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 フードがあっても逆光だと白っぽいかな。でもフードなかったらもっとやばい。

 

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 これは確かスーパータクマー135mmF3.5だったかな。

 135mmくらいの中望遠って、APS-Cだとあんまり使う機会ない焦点距離で。90mmをAPS-Cで使う長さだけど、85mm前後ってポートレート用のF1.8とかが多くて結構値段が高いの。
 コンパクトで値段が安いのだとDA70mm Limitedがあるけど、これじゃ換算105mmだからまた違う。難しい。

 

 

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 ほらみんな大好きなネコの、それもこんなにエモい写真だぞ。

 

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 135mmって、ネコの写真にちょうどいい長さな気がした。
 私のでかい体格だとネコにはすぐ逃げられるんだけど、135mmだといい感じの距離感に思えた。200mmとか300mmとかだと逃げられないけど遠すぎる。

 

 というわけで、同い年の1979年生まれのカメラと撮ってきた、平成最後の年末でした。