堺風の頭部

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伝説の名玉smc PENTAX-F ZOOM 70-210mm F4-5.6を手に入れた(600円)

 PENTAXには、名作だという伝説がずっと残る古いレンズがいくつかある。
 まあ、古の傑作はどこのメーカーにもあろうけど、新品で売ってた時はさして評価もされなかったのに、ディスコンしてから評価上がって中古価格爆上がりとかするのがPENTAXの特徴ではあるけど。
 smc PENTAX-M40mmF2.8とか、A☆85mmF1.4・A☆135mmF1.8とかな。

 で、PENTAXの伝説レンズには「隠れED」というのがある。
 EDレンズ(異常低分散ガラスを使ったレンズ)を使っているコストの掛かった製品のはずなのに、PENTAXが謎の奥ゆかしさを発揮し、「EDレンズは小型化のために使ったもので、性能のためじゃなかったから」と、製品名にEDとつけてない製品がある。

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 そのひとつが、今回手に入れてきたsmc PENTAX-F ZOOM 70-210mm F4-5.6だ。
 隠れEDだと知られているレンズだから、そんなにすぐ見つからなかったし、あってもそれなりの値段はついていた。
 が、今回見つけたのは600円。6000円でもおかしくないと思うけど600円。
 曇りがあるといわれたけど、パっと見て完全に駄目というレベルには見えなかったし、値段が値段だから即買い。

 

 ちなみに隠れEDには、他にM☆/A☆300mmF4がある。

 

 

F70-210mm F4-5.6について

 1985年にいわゆるαショックが起こってから遅れること2年、PENTAXも実用AF一眼レフ・SFXを発売したのが87年。
 F70-210mmF4-5.6も87年発売。PENTAXのAFレンズとしては最初期になる。

 70-210mm F4-5.6というズームレンジも明るさも、当時としてもわりと平凡なものだっただろうと思われる。ニコンにいかにも廉価版っぽい同スペックのニッコールがあるね。
 そんな地味な感じのレンズが、隠れEDの高性能レンズだというのだ。

 ただまあ、スペックは地味だけど、格付けは松竹梅でいえば竹レンズっぽい。
 梅レンズとしては、F70-200mmF4-5.6がある。外見までそっくりで紛らわしいが、ズーム時の繰り出し量がかなり違って、70-200mmの方が長く伸びる。隠れEDでもないし、smcですらない。

 

 この個体はクモリがあるとのことだけど、レンズを前から覗いてもわからない。
 後ろから覗いて光源に向けると、なにか湿気の水滴みたいなのが無数についたところがあるのが見える。

 これは持病らしくて、多分鏡筒に使われているグリスが僅かに飛散して付着しているのだと思う。
 同様の持病を持つレンズは他にもあって、最近のだとDA18-55mmF3.5-5.6なんか、これで曇って写りも駄目になる。

 

天王寺動物園で実写

 うっかりほとんど全カットをテレ端で撮ってしまったが、まあ望遠ズームって主にテレ端使うから。

 

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 クモリがあるからどうかと思ったけど、全然OKじゃないかと。
 最悪ソフトレンズみたいになると思ったら、十分なレベルで写っている。いわれにゃわからんレベルだ。

 

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 たまに、光の加減でコントラストが落ちた感じに写る場合があるようで、これがクモリの影響かな。上のカットと同じ立ち位置で撮ったのだが、比べるとコントラスト低い。
 別に、比べなければ気になるほどでもない気もするし、ちょっと画像処理すればOKにも見える。

 

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 中央あたりを等倍。ただこれ、多分ちょっとピントがずれている。
 AFが前ピンになっちゃうみたいで、その場で気付いてある程度カメラの方で微調整したけど、そんなに丁寧に追い込んでない。

 少しピンぼけしてる可能性を踏まえても、30年前のズームレンズのテレ端開放の撮影を、2400万画素センサーの等倍で見るなんて無茶に対して、これだけ答えてるのはかなりだ。

 また、周辺減光や隅の流れなども少なくて、画面全体に均質性も高い。
 デジタル用のDA50-200mmはかなり隅が甘いレンズだから、中央だけならともかく全体的にはF70-210mmが上回る画質に思える。(DA50-200mmは軽くて小さいのが魅力だから、画質だけ比べても仕方ないが)

 

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 F8に絞って撮ったカット。テレ端。

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 まあ、F8でも等倍がカリカリにシャープだとはいわない。
 が、87年のレンズが、2400万画素センサーに対して、しかも画面隅でも中央でも大差なくこれくらいの画質で写るのだ。

 これは確かに、評判になるレベルの性能があるように思う。

 

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 テレ端でF6.3のカットもあった。よく写ってるなあ。

 

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 このカットもテレ端開放だけど、ピントがいい位置に来てる。

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 開放の解像力は、こっちが実力かな。ピント調整頑張って、これくらいが安定して撮れればいよいよ素晴らしいぞ。

 

 さて、この先はレンズ云々を離れて撮ってきた写真。

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 意外とかわいいコウモリ。
 なおコウモリのカットはすごく暗い夜行性動物展示館での撮影で、ISO32000とかまで感度を上げている。レンズの性能を云々できるものではないので。

 

イルミネーションを撮る

 天王寺の街の方で、街路樹など飾っていたので撮ってみる。

 

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 ズームレンズにしてはボケもきれいな感じがあるので、こういうのも変なことにならないな。
 動物園のカットも、ボケてるところがうるさいような感じはまったくない。

 

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 イルミネーション写真としてはヘタな写真だけどそれはおいといて、やっぱりボケがきれいそうな感じがわかる。
 ある程度は口径食でレモン型になってはいるけど、縁取りの少ないいいボケ方をしている。

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 ただ、ボケに渦巻状のムラがあるな。
 これはレンズ金型の切削加工のムラからくるものらしい。これはこういう点光源をボカシた時以外には特に影響ないと思うけど。

 

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 こちらはワイド端。
 テレ端より、ボケがあまりレモン型になってない。周辺減光は少なそうだ。

 ただ、テレ端に比べるとボケに強めの縁取りが出てる。こうなるやつは、ガチャガチャした二線ボケ(1本の線が2本になる感じのボケ方)になりがち。
 まあ、望遠ズームでワイド端ではボケは出しづらいから、あまり大きな問題じゃないはず。

 

まとめ

 うちはこれでKマウントの望遠レンズが3本目になるけれど、画質だけならこのF70-210mmが一番よさそうだ。なかなかの解像力があり、周辺まで安定していて、ボケまできれい。600円のクモリ玉なのに。
 今回は動物ばかり撮ってたので、歪曲収差がよくわからなかった。まさかそんな異様な歪み方してることもないとは思うが。

 まあ他の2本も、DA50-200mmは極端に小型軽量で気安く持ち出せる魅力があるし、FAJ75-300mmはテレが長いほうがいいときに使う。棲み分けはできそうだ。

 古いといっても、重量は555gだから法外に重いわけでもなく、フィルター系Φ49だしさほど長くもなく、持ち運びや取り回しにも困らない。
 最短撮影距離も1.1mだから、望遠ズームとしては平均的。APS-Cだとマクロ的にも使えるくらい。
 今使ったってなにも困るところはないなあ。ボディ内モーター駆動だからぎゅわーぎゅわーいうてAFするけど。

 

 フードがあっても良さそうに思うが、バヨネットフードをつけるところはない。
 ねじ込みフードなら適当なものでよさそうだが、手元にタクマー100mmF4 / 105mmF2.8 /120mmF2.8用のメタルフードがあるから、これ付けてみるかな。

 

 まあ大阪のおっちゃんらしく、何より600円という超安値で買えたことが嬉しいのだ。カメラ触り始めてから最もコスパの高い掘り出し物だったかも。