堺風の頭部

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QV-10と企業戦士YAMAZAKI

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 少し前から噂が、というか日経の記事が早めに出ていて、でもちょくちょく飛ばす日経だから飛ばしであってほしいと思っていたけど、あいにく正式発表されてしまった。

 20年以上前に生まれたカシオQV-10は、撮った写真をすぐ確認できる液晶モニターを搭載する、という、現在のデジタルカメラのあり方を決定づけた歴史的な一台だった。

 というような話はおそらく、これからデジカメ関係のニュースサイトの記事なりで詳しく解説されると思うから、ちょっとその裏手の話でも書いてみようかと思う。

  

企業戦士YAMAZAKI 4

企業戦士YAMAZAKI 4

 

 富沢順スーパージャンプに連載していた、「企業戦士YAMAZAKI」というマンガがある。

 かつて過労死した超優秀サラリーマン・山崎宅郎が、サイボーグとして蘇り、派遣社員としてバブル崩壊後の苦境にある企業に現れては、画期的新商品を提案して大ヒットさせ、会社を救って去っていく、という一話完結のビジネス漫画。

 で、その単行本4巻収録の、第22話「BIG TOMORROW」で山崎が提案した新製品が、液晶モニターのついたデジタルカメラだった。

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富沢順 企業戦士YAMAZAKI 第4巻P107より

 さて、QV-10をカシオが発表したのは、Wikipediaによると94年11月14日。発売は95年3月10日になる。
 この企業戦士YAMAZAKIの22話、このコマに94年9月5日の日付がある。掲載された時期なのか、執筆された時期なのかまではわからないが、いずれにしても少し早い。

 

 で、富沢順って、企業戦士YAMAZAKIを描くにあたってはかなり下調べをして書いている。

 作中で、これ以前から液晶モニターのない、フロッピーに記録する電子カメラが存在したことにも触れている。
 その失敗を、「テレビに繋がないと写真を見られないから面倒」というところだと分析している。
 そして、カメラに液晶モニターを内蔵し、撮影したその場で確認できるようにする、というアイディアを導き出した上で漫画に描いている。

 だから、富沢順が山崎に提案させる新商品は、後に実現する商品も多数あり、今我々が当たり前に使っているような大ヒット作もしばしば。
 「画期的新商品で次々と傾いた会社を救っていくスーパーサラリーマン」なんてものに、説得力を持たせることに成功しちゃっている。

 

 実在したカシオQV-10の偉大さを、タッチの差ながら予言してみせた「企業戦士YAMAZAKI」、これもまた偉大な漫画だったのだ。

 

 私が一番好きな漫画家は富沢順だ。
 その中でも最高傑作はやはり「企業戦士YAMAZAKI」だろう。

 私がそんな、一番好きな漫画家の最高傑作に出会ったきっかけは、「私と山崎宅郎の顔が似てる」と言われたことだった。
 当時10代だったのにどれだけ老け顔なんだといわれそうだけれども、それが実際似ているから仕方ない。

 

企業戦士YAMAZAKI [DVD]

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  ちなみにVシネになって、イッセー尾形が山崎宅郎を演じたのだけど、正直私のほうが似てると思う。