堺風の頭部

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OLYMPUS SZ-30MRを手に入れた

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 日本橋のジャンク屋で、2010年くらいのデジカメがごろごろっと入荷していたのを見てみたら、オリンパスSZ-30MRがあった。

オリンパス ニュースリリース: 写真もムービーも同時記録。光学24倍の薄型超高倍率ズーム「OLYMPUS SZ-30MR」を発売

 2011年のモデル。25-600mmの24倍ズーム、1600万画素裏面照射型CMOS

 多少グリップはついているとはいえ、電源OFFならさほど分厚くない、一応ポケットに入るくらいのサイズ。
 20倍を超えるような高倍率ズームレンズは使ったことがなかった。

 動作保証はなく、2000円。ちょっとギャンブルっぽいけど、外装は自然につく程度の小傷程度で落下痕などは見えず。充電器はないが電池はあり。
 で、買ってみたら動作した。よし。

 

オリンパスと高倍率ズーム

 オリンパスはデジカメへの参入自体が早かったが、高倍率ズームもずいぶん早くから仕掛けていた。

 ハイエンドモデルで、大型センサーと大型高倍率ズームレンズ、というのは複数のメーカーが出した。
 けれど、あえて小型センサーにして、小型化した高倍率ズームレンズを載せ、中級クラスの価格で、というのはオリンパスのC-700Ultra Zoomがはしりかと思う。2001年春モデル。
 1/2.7型センサーに、38-380mmF2.8-3.5のレンズで出してきた。

 C-700UZはよく売れたカメラだったなあ。
 それでオリンパスは、高級に振らない高倍率ズームレンズモデルをずっとラインナップし続けることになった。

 以後、他社の対抗モデルがみんな手ぶれ補正付きになったのに頑なにつけなかったりとか、逆行してネオ一眼っぽいのに戻っていったりしながら、長々と続いていった。

 で、2011年に至って出来上がったのがこのSZ-30MR。

 

 なんだか、原点のC-700UZに立ち返ったようなモデルにも見える。

 SZ-30MRもセンサーは小さい。1/2.3型1600万画素。とはいえ当時まだ新技術だった裏面照射型CMOSセンサー。ISO3200まで設定できる。
 C-700UZも1/2.7型200万画素CCDだったけど、ISO800まで設定できる仕様だった。当時としては珍しかった。

 で、結構に小さい筐体だ。
 2011年だと、もうポケットサイズのデジカメに10倍程度のズームレンズ乗せる機種は出てたんだけど、SZ-30MRは24倍だからかなり倍率が大きい。それでこのサイズは頑張ってる。
 C-700UZも、そりゃ今の目で見たらうすらでかいカメラだけど、当時10倍ズームなんて積んでいながらあのサイズは小さかった。

 大きくないボディに驚きの高倍率、2001年の成功を2011年にやり直してる感じがある。

 

 まあ、年末恒例のデジカメWATCHの人気投票では、27位といういまいち振るわない感じの結果。私もあんまり売れたという話は聞かなかった。
 似たようなクラスのサイバーショットDSC-HX9Vは名機だと持て囃されていたもんだけど、あっちは16倍ズーム。24倍のSZ-30MRは勝ってる。倍率は。

 その後、これをベースにマイナーチェンジしたっぽい機種がいくつか出て、レンズが流用されたらしい機種がその後も地味に出続け、2016年のStylus SH-3まで続いた。
 オリンパスコンパクト望遠デジカメの、最後の形を完成させたのがSZ-30MRというところだろうか。

 

実写しながら

 さて、さっそく持ち出してみた。 

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 いきなり高倍率ズームと特に関係ないのだけど、このカメラはかなりマクロで寄れる。

 通常マクロでは、広角で10cm、テレ端で40cmまで寄れる。なんせ換算600mmなんだから、これでも相当寄れる。
 さらに、ズームが固定されてしまうが、レンズ前3cmのスーパーマクロモードもある。

 上の写真はスーパーマクロでの撮影だが、焦点距離は11.9mmだとExifに出ている。
 1/2.3型センサーだと5.5倍でライカ判に換算できるが、すると65mm程度の標準マクロになるな。

 

 オリンパスは昔からテレマクロ機を出すことがちょくちょくあったけど、このカメラもテレマクロ。
 大昔のデジカメだと、センサー感度が低い・F値が暗くなる・焦点距離が長くなるテレマクロなんてブレまくってろくに使えなかったけど、SZ-30MRだと裏面照射型CMOSだから感度が上げられる。
 おかげで、ワーキングディスタンスが長い実用的なマクロ撮影ができる。

 

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 ホトケノザに寄ってみたが、これでもまだまだ最短撮影距離まで余裕がある。

 

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 等倍で切り出してみると、まあ、流石に一眼レフで撮ったような自然な写りじゃなくて、だいぶシャープネス効かせてごまかしたような感じではある。
 でもまあ、なかなか細かいところまで写せている。

 それから使っていて楽なのは、センサーが小さいから被写界深度も深くて、体が前後に動いてピントが外れるようなことが少ない。多少ずれても深度でカバーできる。
 これが一眼レフだと、かなり感度上げて絞ったりせにゃならんで大変だ。

 

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 こちらは、通常マクロモードでズーム中域(59.3mm=換算326mm)で撮ったもの。最短まで迫ったかどうかは覚えてないけれど。
 オランダミミナグサなんて小さな花で、花の集まり全体でせいぜい3cmくらいかな。

 ワイドでもかなり寄れるが、テレの方が最大撮影倍率は上がる。
 2011年頃だと、テレマクロが使えるという点でリコーCXシリーズがマニアに高く評価されてたものだけど、このカメラも相当強力なテレマクロコンデジといえそうだ。
 花撮りにはかなりいいカメラじゃないかな。

 

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 ちなみにマクロモードでも無限遠まで合焦する。
 ただ、かなりAFが遅くなってしまうし、ファインダーが大きくピンぼけしてどこ向けてるかわからなくなる等、弊害もある。

 通常撮影は、まあ普通に写っている感じ。
 24倍ズームなんて無茶はしているけど、そんなに悪い写りではなさそう。木の葉なんかはもやっとしちゃうが、まあ許容範囲。
(比べれば、STANDARD PRIMEとかTELEPHOTO ZOOMをつけたPENTAX Q系の写りには敵わんところがあるけれど、そりゃレンズが違うからな)

 ちょっと気になるのは、少々オーバー寄りに露出取る傾向があるっぽい。
 測光モードも、ESPとスポットしかない。私は中央重点平均測光が好きなのだが。

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 木の葉がもやっとする例。
 ワイド端の端っこに近いところを等倍切り出し。中央でも同じくらい。
 小さいセンサーに高画素で解像させきれないところに、ノイズリダクションも相まって、というところか。

 

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 海に向けて、広角端。

 わりと周辺減光が見えるかな。
 モードはプログラムオートだけど、F8.7・1/200秒・ISO80となっている。絞ってこれだけ周辺減光するとなると、多分絞り板じゃなくてNDフィルター使ってるタイプかなあ。

 まあ、25mmという広さ、ちゃんと寄ることもできるので、この程度の周辺減光だったら許容できる。(私は周辺減光に甘い方だけど)

 

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 で、ずどーんとテレ端600mmまでズームすると、もはや上のカットのどこを切り出したかよくわからんくらいに。
 いいなあこれ。

 

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 関空から飛び立ったピーチの旅客機を撮って、等倍切り出し。

 こんな小さい24倍ズームなんてもっとひどい写りかと思ってたけれど、これだけ遠くをテレ端600mmで撮ってこれなら意外とやるなあ。
 もっとぐっだぐだだと思ったんだけど、これは十分ありだろう。

 

使用感など

 起動はまずスムーズ。1秒くらいで撮影可能になる。
 ズーミングは、レバーを入れた瞬間の反応が遅いけど、端から端までは2秒くらい。

 ちょっと気になるのは、いきなり十字キー左右やダイヤルを回すといった操作に、機能を割り当てられない。
 ダイヤルは無視され、十字キーは撮影設定を変更するクイックメニュー的なものが開く。
 項目はマクロ・セルフタイマー・露出補正・WB・感度・連写モードとまあ合理的ではあるが、露出補正までのステップがちょっと多いかなあ。
 それから、露出補正とWBに関しては、その設定でどのようになるかを複数ならべてプレビューしてくれる。凝ってはいるんだけど、このために動作が鈍く、ワンテンポ引っかかる。
 そもそも即座にファインダーに反映されればいいことで、見比べるメリットより鈍くなるデメリットが大きい感じ。設定で無効化させてほしい。

 

 意外に嬉しいのは、ストロボが手動ポップアップ。閉じている限り絶対に光らない。
 コストかかるのはわかるけど、私はこれが好きだな。よくやった。この設計は後継モデルでも、最後のStylus SH-3まで続けたらしい。

 

 グリップがついたデザインで、小さいなりになかなかしっかり持てる形状。親指も、背面に指がかりが作ってある。
 私は平均より手がでかいから、時々手に合わないカメラができちゃうんだけど、これはOK。むしろ持ちやすい部類。
(正直現行のOM-DはE-M1以外ぜんぜん合わんので、オリンパスの設計感覚が私に合ってるわけではなさそうだけど)

 

 サイズも十分小さい、レンズは広角から超望遠までカバーするマクロレンズなんて超便利な代物、感度もそこそこ上げられる。
 まあ今新品で買えばこういうの出てくるんだろうけど。

 強いてケチをつけると、手ぶれ補正の効きはあんまりよくないかな。日陰のマクロとかを抑えきれるほどではない。ブレる。これは後の世代だと改善されてそうだけれど。
 手ぶれ補正が仕事しだすと、ザリザリザリと妙にでかい音立てる。PENTAXでこんなうるさいのないと思うけどな。

 あと、撮影写真の露出が半段か2/3段くらいオーバーな感じなんだけれども、液晶モニターが標準でも明るすぎてますますオーバーに見える。モニターの明るさは一段下げたほうがよいかな。
 露出だけなら好みや癖の範疇でいいけど、モニターまで合わさるとやりすぎ感があるな。

 それから、バッテリー・メモリーカードの蓋が気に入らん。
 ワンアクションで閉まる蓋にしてるカメラはオリンパスにもいくらでもあるだろうに、なぜかこれは、閉めてからロック、と2手順かかるような蓋になっている。防水でもないのに。

 

マルチレコーディングなど

 品番にMRとついているのは、Multi Recordingの頭文字。

 どうも画像処理エンジンを2系統入れてるなんて話で、動画を撮影しながら静止画も撮れるとか、風変わりな機能がある。
 私が動画を使わないので、果たしてどう活用すればいいか悩ましいけれど。

 しかし動画はフルHDでスチルは1600万画素、ほんとに同時に撮れるのは不思議な感じ。スポーツ見る時とかいいかもしれん。

 

 連射機能は、フル解像度で7枚/秒、といいつつバッファが5枚分。一秒持たない。記録画素数落として15枚/秒にしたりも。

 シャッターボタンを押す長さに応じて自動的に連写に切り替わるオートモードがあったのだが、私はシャッターボタン離すのが遅いみたいで、無駄連写が暴発しまくった。これは手に合わないな。

 

 3D撮影機能やら、フィルタ機能なんかも充実……してるんだけど私は別に使わんのでパス。

 

故障

 手元の個体は、十字キー兼ダイヤルがえらく効きが悪かった。よほど強く押さないと効かない。

 ボタン部までの分解は簡単で、右側面2個(1個はカバー下)、底面2個(裏面寄りの黒ネジ2個、片方短い)、左側面(これだけ銀ネジ)を外せば裏蓋がとれる。
 フレキを外せばボタン部の基板も取れる。

 しかしながら、十字キー&ダイヤルはユニット化されちゃっていた。引っ張ったら外れないかと思ったが、浮くだけで取れない。内部構造もわからないので無理できず、諦めて組み立て直した。

 するとなぜか効きが復活。
 本当になんもしてないし、再現性ありそうにもないんだけど。

 

使いみち

 これひとつでなんでもできちゃうようなカメラだから、ずいぶん実用性高そうだ。2000円のジャンク品だけど。

 いつも座ってるPCの前には、今までOptio A30をメモカメラとして転がしていた。
 これはCCD機なんだけど、手ぶれ補正もあるし画素数減らして感度上げるモードもあるしで、扱いやすかった。

 多分裏面照射型CMOSのSZ-30MRの方が室内撮影高感度撮影に向いてそうだから、リプレースすることになるかも。
 ただ、「ちょっと撮ってSDカード出してカードリーダーに」という使い方になるので、この開け閉めに2アクションかかる好ましくない蓋が気になるな。

 

 

 

 他にはもちろん、街歩きするときとか、荷物増やさずにカメラ持っておきたい時などには使えるだろう。
 今までQ-S1でやっていたけど、そのお株は結構奪ってしまいそう。
 Q-S1にSTANDARD PRIMEだったらサイズ感近いけど、単焦点
 望遠がほしけりゃレンズ交換だし、TELEPHOTO ZOOMでも換算200mmしかない。3倍の差がある。

 しかしまあ、Q-S1のほうが画質が大幅に上だし、暗所にも強いし、レンズの明るさも上だ。
 マクロ性能とズームレンジとコンパクトさでSZ-30MRが勝つが、まあ使い分けか。