堺風の頭部

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朝青龍で年を越す

abema.tv

 あけましておめでとうございます。

 2018年の年越しは、この番組が年内に終わらないとは思っておらず、ボブ・サップのコントを見ながら迎えてしまいました。
 これはもう今年もぐだぐだなんではないか、と思わせる年越しでした。

 しかしまさかこの番組、最後に見事にぐだぐだ感をうっちゃって、実にいい形に締めてくれた。結果的には、これ見ててよかったと思わせる内容。

 

 

 まあ、番組タイトル見たって、相撲協会はいい顔をしないような感じのものに見える。

 番組開始直前に、出場選手の調印式を再放送(数日前にやってたやつ)し、さらに番組が始まってから1時間20分にも渡ってだらだらだらだらと前振り。年末に格闘技特番やりまくってた頃のあのノリ。

 まあ、見事に見てて面白い人やら、他の業界ですでにキャラ立ててる人(サップやらスーパーササダンゴマシンやら)を並べ、おもしろキャラを活かす時間もたっぷり取って、バラエティとしては上手いこと見せていた。

 とはいえ取り組みは、やっぱり相撲ルールで横綱がやって、勝負になんかなるわけがなくって。私も相撲ファンだから朝青龍に勝てるわけがないと思ってたとおりで。
 さすがに柔道の泉浩は内掛けで態勢を残したり、アメフトの清家拓也も体格とパワーを見せた瞬間はあったけれど、やっぱり相撲のルール内で朝青龍が驚くほどの奇策を打てるようなシーンもなかった。
 まあ、バラエティと思えば面白いけど、相撲になっているとはいえない取り組みばかり。

 

 で、7人目のボブ・サップが、全身にスポンサーか何からしいホテルの広告を描いたりステッカーを貼ったりと、実にふざけきった感じで取り組みに向かうところで年明け。
 番組始まってるの8時だから、ここまでひたすら相手のキャラの面白さに依存して引っ張った。

 まっとうな相撲ファンだと、相撲を馬鹿にしてると怒ってもおかしくない感じもあった。
 まっとうではない相撲ファン(だから8時から見ていた)の私でも、「このぐだぐだな番組で年を越すとは」と思ってたもんな。キャラは面白いけど相撲としてはぐだぐだだった。

 

 それが、最後に琴光喜

 やっぱり、現役を7年も離れたふたりで、現役の幕内が取るような相撲に比べれば、ちょっとスピード感とか落ちるのはわかる。
 けれど、確かに大一番だった。立会でぶつかりあって、回しを取り合い、四つに組んで、投げを打ちこらえて、そして朝青龍がしっかり寄り切った。
 力士が、それも横綱大関が取る相撲は別格だと見せつけてくれた。

 

 思えば7年前に、片や暴力事件で、片や賭博問題で、やむなく辞めていったふたりだった。

 引退して親方やってるような人なら絶対に出られない番組企画だろうし、協会と切れている人では最高の格を持つ朝青龍琴光喜なんてふたりをを引っ張り出してくれて。
 また朝青龍は「ダグワドルジに戻る」と、琴光喜も「これで本当に引退できた」なんて、泣かせることいってくれた。彼は角界復帰目指して何年も頑張ってた時期があったくらいだし。

 

 バラエティかと思わせた番組を、最後で一気に朝青龍琴光喜の最後の一花へと昇華させてくれたなあ。

 

 相撲協会が、絶対に眉をひそめてるであろうこんな企画。
 そんなところで、大相撲を追われた元横綱と元大関が、相撲というものを見せて観客を沸かせて、相撲愛を公言してみせたなんて、あんまりにも痛快だった。
 朝青龍琴光喜に勝ってバンザイするなんてのも、観客に万歳三唱させた白鵬と、それを処罰した相撲協会の両方に皮肉が効いてしまってたりもして。

 大相撲の本場所が相撲の正道なのは確かだけど、こんな邪道で、しかし確かに相撲が面白いと思わせてきたんだから、この番組の企画者はすごい相撲通か、相撲好きの気持ちに寄り添える人なのかもしれないな。

 

 日馬富士にも、何年後かにでもこんな、ファンにも本人にもすっきりできるような場が用意できるだろうか。それは本当は相撲協会が用意すべきかもしれないが。
 というか、未練を残したまま追い出す形の引退がない相撲界であるべきなんだろうな。追われた朝青龍琴光喜がいたからこそできたことだったけど、本当はこれをする必要がないのが一番いいんだ。

 本場所の方も、気持ちよく応援できるものになってほしいよ。