堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

ああ、大航海時代II

 待ち望んでいたゲームが来たのだ。 

大航海時代II|オンラインコード版

大航海時代II|オンラインコード版

 

 大航海時代II。

 光栄(私の頃はコーエーじゃなく光栄)の「リコエイションゲーム」と銘打った、ちょっとひねったシステムの歴史RPGみたいな作品群があって、わりと秀作が多かったんだけれども、その中でも面白かった「大航海時代」シリーズの、白眉といえるII。

 93年に発売して、私がまだ中学の頃だ。
 周りにパソコン持ってる奴なんていない田舎の中学生だった私だから、情報源はおそらく雑誌のログイン。なんだか見てるだけで面白そうで、おそらく翌年の正月あたりにお年玉握って日本橋に買いに行ったんだろう。

 期待して買ってもそれが面白いとは限らないものだけれど、このゲームは本物だったな。一年以上ずっと遊んでいたように思う。

 

www.gamecity.ne.jp

 

 基本的にはRPGなんだけれども、大航海時代がテーマというだけあって、移動、つまり航海自体が最大の冒険でありトラブルの源であり、楽しみであるという内容で。
 シナリオはあるけど移動は好きなようにできる、今で言うオープンワールドゲームの走りみたいな内容でもある。

 主人公が6人、その中からひとりを選んで物語を進めていく。
 6人はそれぞれ国籍も違えば目的も違い、やることも物語も違う、のは当然なんだけれど、なんせ大航海時代だ。
 世界のお宝を追い求める冒険家もいれば、英国海軍を樹立して海を制覇しようという者もあり、貿易で巨万の富を築こうという商人、といった面子。

 

 まあ、ゲームの基本の基本は、シナリオ冒頭で教えてくれる。
 まず船を調達(なんかの理由をつけてもらえる)、乗組員を集める。乗組員を食わせる水と食料を積んで航海に出る。
 そして大目標と、最初まず何するか程度を教えられて、海へ放り出される。

 船は貧相なキャラベル船、わずかな資金も乗組員の食費で消える。当然、目標を達成するにはとても足りない。
 まあ、資金難で詰むのも、最初は何度かやると思う。まず金を稼ぐ手口を身につける、それがこのゲームの第一歩だ。

 

 金を稼ぐ手段はいくつかあるけど、借金とか博打を除いた持続的な方法は4つくらい。

 地図工房と契約して地理情報を売る。1キャラだけ最初からやれるが、ヨーロッパの地理はほとんど売れない。遠洋航海できるようになるまで全然金をもらえないから、当て込んだら逆に罠になるが。

 他の船団を襲撃する海賊行為で稼ぐこともできる。最初の貧相なキャラベル船一隻ではやりようがないが。

 やりやすいのは、コレクターと契約して、各地の珍しい動物や原住民、財宝などを発見した情報を売る。これは、どの主人公でもやる。

 それから最後にして最大の、交易。

 

 交易はやっぱり、このゲームの一番おもしろいところのひとつだ。

 マラッカで胡椒仕入れてヨーロッパに持ち帰れば一生遊んで暮らせるやろとか、ジパングの銀も安く仕入れられるんだろとか、インドの茶なんかもいいネタか、とか思う。
 そして意気揚々とインドを目指すと、アフリカで嵐にあって沈む。
 ならば思い切って新大陸に向かうと、食料切れで大西洋で遭難するか、届いたと思ったらカリブ海で嵐にあって沈む。

 最初は近場で、小銭をちまちま稼ぐしかない。
 どこで何が売れるかわからないから、地中海や北海の港を歴訪しては交易所を訪ねて回る。特産品があったら買い込んで、売れるところで売る。

 こんな地味な商売も楽しい。
 どこに行ったら何が買えて、どこらへんで高く売れるか、ぼちぼちメモったり覚えたりしながら、自分なりの儲かるルートを構築していくのだ。

 

 それで金が溜まったら、貧相なキャラベル船を捨てて、もっといい船に乗り換える。
 船もよりどりみどり。最初のキャラベルよりさらに古臭い船もあれば、小型快速船に大きなガレオン船、帆船だけじゃなくてガレー船(何十本も舷側から出た櫂でこぐやつ)もある。

 造船所で船を選べば、どんな船なのか親父が簡単に説明してくれる。
 時々「外洋もいける」とか「耐波性がないから外洋は無理」とかいう船がある。耐波性があるやつは、暴風雨が来てもある程度耐えられる。ないやつはみるみる壊れてすぐ沈む。重要なポイントだけど、隠しパラメーター。
 ガレー船なら、風がなくても進むし向かい風でも速度が落ちにくい。ただ、側面から櫂が出てる形でわかるとおり、耐波性があるかないかはお察し。(なぜか耐波性があるガレーもあるんだけど)

 何に乗り換えるか、悩むのが楽しい。
 えいや、と買ってみた船があからさまにイマイチで交易の種銭も使い果たして詰むとか、この高い船ならいけるぞと思ったら耐波性なくて嵐で死んだりとか、失敗もする。

 ちなみに、港の酒場や宿屋で航海士をヘッドハントして、彼らを船長にすれば、最大10隻までの船団を組むこともできる。

 

 いい船買った、資金もできた。
 さあ、インドを目指すか、新大陸を目指すか。何が待ち受けてるかとドキドキしながら、アフリカを南に、あるいは大西洋を西に行く。

 まあ、嵐に遭う。ちなみに沿岸部で嵐が来たら、すぐ近くの陸地に上陸して待機すれば、船を壊さずやり過ごせる。
 大航海時代初期の航海は陸地沿いに行くのが当たり前で、コロンブスがはじめてアメリカに渡ったときは、海岸線を離れて航海することに船乗りたちがビビりまくるのをなだめるのが大変だったそうだ。
 ゲーム的にも、基本は陸地沿いに進むのがベター。

 海賊も襲ってくる。
 因縁つけられたら、戦うか逃げるか、逃げ切れずに戦いになるか、降伏するか。
 どうしても命が惜しければ降伏すれば命は助かるが、小銭と水・食料を残して財産を奪われる。インドでカツアゲされたら帰る資金もなくなったりする。
 戦ったり、逃げ損なって負けたら、死んでゲームオーバー。

 インドやアフリカなら適当に港があるけど、アメリカとか極地とか変なところを航海していると、補給できる場所がなく食料切れもありえる。もちろん死ぬ。
 食料もタダではないから、遠方で資金が尽きても詰む。

 ネズミが出て食料を食い荒らされて人が食う分がなくなって死ぬとか、長期航海で壊血病が蔓延してバタバタ死にはじめ、船を動かす人手がなくなって身動き取れず全滅とか、いろんな死にパターンがある。

 

 ある程度余裕があったら、大河を遡ってみるのもひとつ。
 ナイル川とか黄河とかミシシッピ川とか、各地の大河が船で遡れるようにできている。

 そこには現地人の集落があったりして、そこに上陸し、現地人の協力を得てお宝を探しに行ける。
 うまくいくと、珍しい動植物や財宝などが見つかる。見つからなかったら、船の食料を供出して原住民とパーリーを開いて仲良くなり、それでさらに探すと見つかる。

 で、冒険には危険がつきもの。
 猛獣とか毒のある動物と遭遇して大勢の乗組員が食われたり、原住民部族の襲撃を受けて大勢の乗組員が食わ……いや殺されたりする。
 それで船を動かす人員が足りなくなり、川から出ようにも船がまともに動かず、やがて壊血病が蔓延して全滅したりする。

 

 まあ、私も何回死んだかわからない。
 コロンブスは偉大だ。マゼランが途中で死んだのもわかる。

 しかし、アフリカ行ったら何があるのか、インドまでいけたらどうなるのか、アメリカはどうなってるのか。
 どんな港があって、どんな商品を売ってるか。どんな発見物があるか。
 でもって、ちゃんとヨーロッパまで帰ってこれるか。

 東南アジアまでキャラック船団を組んで出かけて、胡椒を満載にして無事ヨーロッパで売りさばけた時は、感動したものだった。
 アメリカへと思い切って漕ぎ出すときの不安さやら、暴風雨多発地帯を通り過ぎるときの緊張感やら。

 

 大航海時代IIはかなり評価の高いゲームではあるので、スーパーファミコンからセガサターンプレイステーションなどの世代のゲーム機にも移植された。

 おかげで、93年当時に手探りでプレイしていた頃よりは、効率よく商売して、船の選択も間違えず、遠洋航海も無事に帰ってくるコツを掴めて、なんなら海賊も撃退できるくらいになった。
 最後にやったときは、それこそ世界中を金の力で支配して他国をすべて破産状態に追い込むとか、あえてしょぼい船で世界をめぐるとか、そんなことになっていた。

 それはそれで楽しい、懐の深いゲームではある。
 しかし、やはり、何も知らずに遊んでいた24年ほど前、あれは確かに世界を冒険するように楽しかった。
 あの楽しみだけは、未プレイの人しか味わえないと思うと羨ましい。

 

 とはいえ、今回久々にプレイできている。

 いくら名作と言っても24年前のゲーム。
 ゲーム機への移植は、サターン・プレステ時代までだからやっぱり20年は前。
 Windows 95版が出たんだけど、あれはゲームエンジン自体の出来が悪くて、Windows XPあたりだとまともに遊べなかった。

 ほぼ同じシステムで主人公を入れ替えた「大航海時代外伝」というのが出て、これはXPでも遊べたんだけど、なぜこれに本編をリメイクしないんだと思ったりもした。

 そして今回リリースされたSteam版は、PC-9801版をエミュレーターで動作させているモノっぽい。仮想フロッピーを入れ替えながら遊ぶような操作が必要になっている。
 まあ、私は昔これでやったからわかるけど、今の人だとちょっとわからないかもしれない。→ファンの方による解説
 後の移植版のほうが、細かい操作性の改善やバグっぽい部分の修正などが行われているんだけど、しかし、私が24年前に遊びまくった大航海時代IIといえば、まさにこれだった。

 特に大きいのが、菅野よう子PC-98FM音源で作ったBGMが、余すことなく再現されているところだ。
 ゲーム機版はすべてゲーム機の音源に合わせてリメイクされたし、Windows版はアレンジサントラをそのままCD-DAで再利用している。
 アレンジサントラ自体はそれはそれで素晴らしい出来なんだけれども、一部の曲がカットされている。ジョアンとカタリーナ以外の主人公での洋上BGM、つまりキャラのテーマ曲がカットされてるんだから、本当に寂しくって。

 今回、久々にピエトロでプレイして、もう何年ぶりだろうっていうくらいにこの曲を聞いた。クリアしちゃって、次はオットーでやってる。また何年ぶりだろうって。

 

 せっかくだから、大航海時代IIIもまたやりたいなあ。

 IIでもかなり冒険を楽しめたんだけど、IIIはもう、ゲームだから、と手加減してくれるような部分がとにかく少ない。

 主人公がポルトガル人なら、スペイン語圏ならカタコトになる。ロマンス語・スラブ語・ゲルマン語・アラビア語とヨーロッパ圏だけであり、学ばないとわからない。
 会話がカタコトあるいは全く通じなくなる上に、このゲームは図書館で情報収集して、スポンサーにプレゼンしないと冒険に乗り出せない。本が読めなきゃ話にならない。
 科学や神学がわからないとまともに読めない本もある。

 冒険に出るなら、航海術も身に着けないと危ないし、剣技や砲術も必要。
 しかも今回は海沿いの港や集落だけじゃなく、内陸まで冒険の範囲。船で港につけて探検隊を編成、内陸へと足を伸ばす。
 なんなら船員たちを武装させて軍隊化し、街を攻撃して陥落させるようなプレイングすら可能だ。新大陸でコンキスタドールになって悪の限りをつくすようなプレイもやれてしまう。

 また、港町が開かれるのもある程度史実に応じた時期に設定されているようで、例えばゲーム開始直後の1480年からいきなり西に向かって新大陸に到達しても、港町が存在しなくてどうしようもない。
 国際関係も史実通りくるから、トルデシリャス条約が結ばれると、ポルトガル人はスペインの港に入れなくなったりもする。

 貿易をするにも、ナマモノ系の積み荷は寿命があり、腐って売れなくなる。
 初期バージョンには「奴隷」なんて商品があった(改定されて削除された)んだけど、7日で腐るという恐ろしい積荷だった。

 海賊も普通にくるし、嵐も当然起こる。
 IIでは北極海や南極を平然と航海できちゃったけど、IIIはそれをやると氷に閉じ込められて死ぬイベントが起こる。

 これだけ難しいゲームだから、効率プレイを突き詰めたって限度がある。
 だから、奥さんつくって子作りして、跡取りにバトンタッチして数世代に渡る冒険を繰り広げることにもなる。

 

 あまりにも難しすぎる、ウィザードリィでいえば#4: Return of Werdnaみたいなシリーズ最難のマニア向け作品だけあって、家庭用ゲーム機などへの移植もない。いやWiz #4ほどまでは理不尽じゃないけど。
 Windows版は私まだ持ってるんだけど、9x系用でXP以降じゃ動作が苦しい。

 しかしながら、ちょっとやそっとやり慣れた程度では、「冒険」が失われないようなゲームだった。
 またやりたいなあ。