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堺風の頭部

徘徊、カメラ、PC、その他。

「うらら迷路帖」に期待するためのきららミラク秘話

与太話 マンガ・アニメ

私は2009年に、「GA 芸術科アートデザインクラス」のためにまんがタイムきららキャラットを読み始めて、MAX・本誌と創刊したミラクを合わせた四誌に手を広げ、2015年末に「GA」が終わるまで購読し続けた。

去年の今頃は生活も酷かったので、「GA」の終了が結構に大ダメージで、それを乗り越えてなおきらら系を読み続ける気力を持てず。

 

私が読み始めたのはちょうど、「けいおん!」のヒットから、きらら系萌え4コマを原作にしたアニメが、コンスタントに出るようになった頃だった。イキのいい時期は見てきたと思う。

 

2011年半ばに創刊したまんがタイムきららミラクは、創刊から見届けられた故に、いろいろな思いがある。

「もっと自由に、四コマを」というキャッチフレーズでもって、かなり冒険的な作品を集めて出発したら、それが無茶だったようで、数々の事故を起こしていた。

やっぱり売れ行きも悪かったんだろうと思う。本屋に置いてないことが多くて毎月面倒だった。

2014年後半から、半年おきにミラクからアニメ化作品を出していたのは、テコ入れだろうとは思わざるを得なかった。

 

それで2017年1月から、「うらら迷路帖」が放送されると聞いて、この作品がここまで来るまで色々あったなあ、と思う。

最近一年は読んでないのだけど、これがアニメ化されることはまあ、なるべくして、というか、多分そのつもりで仕掛けた作品だったろう、と思う。

そしてその歴史には、「うらら迷路帖」に期待せざるをえない秘話があるのだ。

きららミラク略史

ミラク創刊は2011年。

この頃、「男のいないところで、女の子何人かでわいわいしてる日常モノ」がひとつの定番化しつつあった。

以前からの「ひだまりスケッチ」「GA」だってまあそうだし、やっぱり「けいおん!」のパワーが強い。「Aチャンネル」もアニメ化。

ゆゆ式」もすでに連載していた。現在の大人気作である「きんいろモザイク」「ご注文はうさぎですか?」も連載開始し、誌上で人気を博していた。

やはり、「男のいない日常モノ」の強さは見えてきていた。

 

この風潮は、出せば売れるものが見えてきた、ということだけど、しかしやっぱりモノカルチャー経済に陥ると危ない。

ブコメ系も十分支持があった。少し前から「チェリーブロッサム!」、続いて「ぱわーおぶすまいる。」「箱入りドロップス」といった長期連載になっていく秀作ラブコメも、この頃のスタートだった。

長期人気作である「あっちこっち」も、アニメ化するべく動いていた(12年4月開始)。

その他のギャグ漫画なども、以前から人気の「キルミーベイベー」のアニメ化準備中(12年1月開始)。「平成生まれ」もこの頃掲載されはじめ、あまりのハイブロウさで読者を困惑させつつ、結局長く愛された。

 

そういう状況で、「もっと自由に、四コマを」のキャッチコピーとともに、マンガ連載の経験がない描き手を集めるという、冒険的なやり方で立ち上げられたのが、まんがタイムきららミラクだった。

後知恵の想像ではあるけれど、何か「萌え四コマ」の固定化を食い止めるための意志が見えるように思う。

 

初期ミラクの「難しさ」

挑戦は、上手くいった後には「意欲的」、失敗した後には「無謀」という評価が付く。

ミラク創刊とその狙いは、正直に行って、私の目には後者に思われた。

 

どうもこうも、読みづらい。

自由に四コマといって出てきたのは、単にコマ割りが固定化したストーリー漫画、みたいなのが多かった。

ページ8コマ・読む順番も固定の、狭苦しく自由のないコマ割りで、読みやすい漫画を描くのにどれだけの関門があるか。

絵のことだけ、描けない私が考えてさえ、難しいのがわかる。きゆづきさとこの作品を見ていると、読みやすい四コマのためにどれだけの技術が振るわれているか見えてくる。しかし、あんなレベルの画力ある人そうそういない。

その上で、魅力的なキャラクターを活躍させて、読ませるストーリーを載せろ、とは、要求が高すぎる。

しかも隔月刊だから、前回の話やキャラを覚えていてもらうハードルまで上がった。

ここまでのことを、マンガ連載をやったことがない人に求めるのは、厳しすぎたんじゃないかなあ。

 

初期作品の連載状況

ミラクは隔月で5号まで刊行して、6号目の12年3月号から月刊化することになった。

初期の掲載状況については、以前調べたことがあった。

 

創刊当時の18作品のうち、5作品が月刊化時に打ち切られた。

3号で2作品加わって全20作となっていたものの、このうち一作は、月刊化を待たずに掲載がなくなった。

実に20作中6作と、当初の作品の1/3が早々と落とされたことになる。

 

残った14作品のうち、5作は月刊ペースでの連載は無理なのか、隔月連載ということになった。

その隔月連載になった作品の中に、創刊号~3号と、月刊化最初の号で表紙を飾った、おそらく編集部側が力を入れていたであろう作品が含まれる。

また、月刊連載となったものの、休載を頻発するようになって事実上の隔月掲載状態になったのも1作あるので、正味6作が隔月化。

月刊誌の中で隔月連載だとやはり存在感が弱くなって、一年ほどで早々と終了したものが3作。

 

月刊連載で続けられたのは8作品。

うち2作は、月刊化から一年ほどで休載、そのまま立ち消えた。その2作のうち一方は、月刊化してから2度表紙を飾った人気作。

創刊時からきっちり毎号読み続けられた作品は、6作しかなかったことになる。

 

創刊時に始めた連載を打ち切られたものの、月刊化と同時に新連載を始められた作者がふたり。

その新たな連載2作品のうち、ひとつは「幸腹グラフィティ」だった。

 

掲載状況の評価

これが異常かどうか、まあ、数字で言えばそれほど酷いわけではない、ともいえる。

きらら系には、「ゲスト」として新しい作品が1~3回程度掲載され、人気が取れそうなら正式な連載とする慣例がある。

ゲストが連載になれる確率は、当時の集計で20%前後しかなかった。5作に1作しか連載の地位は得られない。

なので、20作の創刊期作品のうち、40%の8作が月刊連載を続けられたのは、歩留まりは良い。

すでに複数の人気作があるところに割り込む挑戦になる他誌のゲストと、横一線でスタートできたミラク創刊時の作品とでは、条件が違うけれども。

 

月刊連載8作中2作が休載から立ち消えとなったのは、いい数字とは思えない。

他誌の場合、ゲストでの厳しい選別がある分、連載になれたなら、少なくとも単行本2巻まで2年前後はきっちりやりきるのが大抵だった。立ち消えさせてしまうことはかなり少ない。

(最近は出版不況で、1巻の売れ行き不振で2巻が出ない例が増加していると思うが、2011年ならまだ2巻までは出た)

1作品なら偶然の事故もあるけれど、2作となると。

 

また、隔月連載になった6作品も、単行本2巻以上を出して終了したのは2作だけ。

単行本1巻を出せずに終了が3作、1巻が出て立ち消えが1作。隔月では苦しいのが見える。

 

それから、表紙。

他の3誌では、表紙になれるのはその時点で一番強い作品、というのがかなりはっきりしている。

ミラク創刊と近い時期のキャラットだと、アニメを放送する少し前から放送中にかけての「Aチャンネル」と「キルミーベイベー」、あるいは「GA」「ひだまりスケッチ」、それしか表紙を取れない。どれもよほどの人気作だ。

ところがミラクはというと、創刊から表紙を張った作品が月刊連載になれずその後立ち消え、月刊化後に表紙を取りながらまた立ち消えという、人気作が破綻してしまう事故が複数回あった。

まあ、ミラクは新規創刊だから、一発で当たる作品を見抜け、というのは無理ではある。けれど、売れると思ってプッシュした作品を、しっかり育て損ねたようにも見える。

 

ミラク創刊以後のきららアニメ

ミラク創刊前後に、「萌え4コマ」の幅を広げる試みがされていたのではないか、というのがこの話の想定。

では、アニメ化を通して試みられたのはどうなったか。

 

2012年1月、「キルミーベイベー」。

原作の良さを再現して、また赤﨑千夏の起用も見事としか言いようがない、あまりお金かけてるように見えないにも関わらず非常に秀逸なアニメ化だった。にも関わらず、円盤が売れなかった。

もしこれが儲かる作品になれていたら、「はるみねーしょん」をアニメ化するようなことも考えられたかなあと思う。

 

で、「ラブコメ」だと分類したのは自分でも違うとは思うんだけど、少なくとも「男のいない日常モノ」ではなかった「あっちこっち」が、2012年4月に続く。

まあ、大ヒット、とはいかなかった。

ブコメ萌え4コマをアニメ化する芽を、「あっちこっち」の失敗が潰した……なんて話は無理筋ではあるけれど。ラブコメについては後述する。

 

「男のいない日常モノ」については、13年4月に「ゆゆ式」、さらに7月に「きんいろモザイク」をぶち当て、強さが盤石になってしまったところに、少し空いた14年4月に「ご注文はうさぎですか?」がダメ押し。

15年以降はもう、趨勢が決した感がある。

 

桜Trick」と「うらら迷路帖

きらら系アニメは、原作の掲載が始まってからどれくらいの期間でアニメ化されたか、集計してみた。

きららアニメが継続的に作られるようになったのを、2009年4月の「けいおん!」からとして、2017年1月の「うらら迷路帖」までを対象に、初アニメ化までの期間を確認すると、こうなった。

初掲載は「n年n月号」なので、実際の発売日は1ヶ月以上早いが、まあ正確な日数が目的ではないので。

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三者三葉」が極端に遅いアニメ化なので、これを外すと3年4ヶ月が平均となる。

あまり短い連載でアニメ化して人気になったって、売る単行本が出ていない。少なくとも2巻は出る2年以上の連載期間は必要と見られる。最低2年・できれば3年というところかな。

ミラクの場合、一回のページ数が多いので、やや早めのアニメ化が許されると思われる。

桜Trick」については、ミラク創刊当初の隔月刊期間があるのを踏まえると、2年9ヶ月でのアニメ化は、できるだけ急いだタイミングだろう。

 

しかしながら、「桜Trick」アニメ化の報せを聞いたときは、「え、それ?」と思ったのは正直なところだった。

元々挑戦的なミラクに最初から掲載されていただけに、万人受けする作品とは言いにくい、キツめの百合漫画だ。当のきららアニメが切り開いた「なんとなく百合っぽい女の子だけの世界」より、かなり踏み込んでいる。

データとしても、13年8月号でアニメ化発表とともに表紙に採用されるまでは、一度も表紙になったことがない。ミラクの中で一番人気、という作品でもないように見える。

だからまあ、なぜ選ばれたかと考えると、「ミラクから一番先にアニメ化できる作品だから」という理由が働いたようには思える。

創刊時からの連載作品は、これと「夜森の国のソラニ」「スイートマジックシンドローム」「Good night! Angel」だけ。

 

ともあれ、アニメ「桜Trick」は2014年1月から放送された。

これが大ヒットして「これくらいキツい百合も通る」という前例を拓けていれば、また違う世界線があったかもしれない。そこまではいかなかった。

 

一方、「桜Trick」アニメ開始と同じ時期に、「夜森の国のソラニ」が連載を終了する。

創刊当時からの掲載作で、早くから繰り返し表紙を取れる人気があり、休載もなく、内容を理解しやすく、絵柄も時代にズレていない、異色作の多いミラクの中で実にしっかりした作品だった。

だから、ただ順当にアニメ化するなら、これが最初でよかったとも思える。でもそうならずに終わってしまった。

そして作者が次に始める連載が、「うらら迷路帖」だ。

ミラクで一番手堅くヒット作を描ける作者というカードを、最初には切らず、3年後、つまり2017年のために温存したのではないか。

「夜森の国のソラニ」は男もいるが、「うらら迷路帖」は女の子だけになる。より話の造りも明確になり、雰囲気も明るく、人気を取れそうな方向性になった。また、きららでは通常のゲスト掲載をおかずに、いきなり新連載として始まっている。

あざといと言うなかれで、「3年後にちゃんとヒットしているものを描け」といわれて、ほんとに実行できる人なんて早々いない。

そしてその3年後が、今来ている。

 

3年前に「桜Trick」を選んだ決断は、もう一週間でやってくる来年に、「うらら迷路帖」をもって、どういう結果を見せてくれるだろうか。

もはや購読はやめた私だけれど、創刊から4年も読んだ雑誌がそこまでやることなんだから、見届けねばならんな、と思うのだ。

 

ミラクテコ入れの2015年

しかし、「うらら迷路帖」で3年越しの布石を打って、ミラクが3年後に廃刊していたら話にならない。

芳文社の台所まで知らないからなんとも言えないけれど、2015年からの怒涛のアニメプッシュを見ると、やはりそれが必要な状況だったのだろうとは思う。

 

桜Trick」の次は「ご注文はうさぎですか?」「ハナヤマタ」、1クール空いて、2015年1月に「幸腹グラフィティ」。

桜Trick」から一年過ぎて、月刊化時からの連載作品でもアニメ化できるだけの期間が過ぎていた。それで、「幸腹」と「城下町のダンデライオン」が候補に加わる。

一方、「Good night! Angel」は1年前に、また「幸腹」アニメの頃に「スイートマジックシンドローム」も終了した。

 

「幸腹」原作は、優しくも地味な話ながら、「孤独のグルメ」再発見以来の食事マンガブームの追い風を受け、そして「モノ食って美味しいといってる女の子の顔がエロくて笑える」という変な角度でウケていた。

最初から狙って変顔マンガを描いたわけではなく、天然でこうなった作品かと私は思ってるけれど、そうであれば、自由な中から意外な発掘を、というミラクの狙いが結実したような作品といえる。

だから、「2014年時点のミラク掲載作から一番おもしろいのを選べ」といわれれば、私はこれを挙げた。丁寧で善良な、好ましい作品なのは間違いない。

 

ただ、「2014年のきらら各誌から、アニメ化すればヒットしそうな作品を選べ」だったら、ミラク創刊と近い時期にスタートし、すでに2巻の壁を超えていた良い作品がいくつもあった。

すでに挙げている「チェリーブロッサム!」「箱入りドロップス」「ぱわーおぶすまいる。」、ギャグ漫画ながら絵柄やキャラも萌えマンガらしい「彼氏ってどこに行ったら買えますの!?」もあった。他にもあろうと思う。

そもそも、「幸腹」はアニメの原作としては使いやすくは思えなかったし、結局シャフトにシャフトアニメにされた感もあり、そしてこうでもするしかなかったようにも思る。

それでも「幸腹」だったのは、やはりミラクのテコ入れだったんじゃないか、とは、どうしても思えた。

そしてそれによって良作ラブコメがアニメまで行けず、「きんモザ」「ごちうさ」時代に楔を打ち込む機会すら与えられなかった、とまでいいだすと過言かとは思うけれど。

 

次は「ハロー!!きんいろモザイク」で、その次の15年7月はまたミラクから「城下町のダンデライオン」が始まる。

えー、この作品は、「マンガを読む能力」というのが年齢とともに衰えて、キャラと設定が多いと識別能力がついていかずまともに読めなくなる、ということを突きつけられた形で、内容の善し悪しは判断できなかった。

月刊化の翌月からという早い時期から、アニメ化できるほど長く続いていたからには、人気はあったはず。そしてもうそんな作品は、ミラクではこれしか残っていなかった。

ミラク月刊化以後に始まった連載は、どれもなかなか長く続かなかった。14年12月号スタートの「ビビッドモンスターズ・クロニクル」になってようやく、長く続く連載作が出た。

城下町のダンデライオン」以後のミラクは、もう完全にアニメ用の弾は切れていた。「うらら迷路帖」と「ビビモン」を黙って装填するしかなかった。

 

そして、「うらら迷路帖

とりあえず、「うらら迷路帖」まで、ミラクは潰れずに持った。いや、ほんとに潰れるほどヤバかったかどうか知らないけれども、ヤバかったことにしよう。

四コマじゃないけど、ミラクの後に生まれて先に夭折したカリノの例も忘れてはなるまい。きらら系も斃れるときは斃れるのだ。

ミラクからのアニメ化と、確実に人気を取れる「きんモザ」「ごちうさ」の2期でもって埋め合わせた2015年、そのミラク押しの施策のおかげで、割りを食った作品が他誌にあったはずだ。あったことにしよう。

これは単純に私が好きだったからいうだけだけど、「ぱわーおぶすまいる。」も「彼氏ってどこに行ったら買えますの!?」もアニメにできんかったのは、一番いいタイミングをミラクに奪われたせいだと思っている。単にそこまで人気が上がりきらなかっただけかもしれないが、ミラクを助けるための犠牲だったことにしよう。

桜Trick」「幸腹グラフィティ」「城下町のダンデライオン」を消費しながら延命したミラクは、もう「うらら迷路帖」が今後の生存を支える柱になれなければ、倒れる。後はない。別に倒れないかもしれないが、倒れると思っておこう。

それだけ、きららの魂を背負わされ、多くの屍の上に立っているのが「うらら迷路帖」なのだ。私が載せた気がするが。

これは傑作でならねばならず、そうでなければミラクが、ひいてはまんがタイムきらら系列が倒れるところまでありえる。いや、ごちうさの3期でどうとでもカバーできるんかもしれんけど。あ、「ブレンド・S」が来たら私はわりと喜ぶ。

 

そんなわけで、私はここまで肩に力を入れて「うらら迷路帖」を観る。どんな作品になるか楽しみだなー。